異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

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見掛けと裏腹に力持ち

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空いている作業台をお借りして布を見させてもらうことになった。
色んな柄や色味があってついつい目移りしてしまう。

「あらぁ?そんな端切れでいいの?」

20㎝四方の端切れを手にとったクラレンスにエイヴェリーが不思議そうに尋ねる。

服を作るにはとても使えない、せいぜい小物に加工することぐらいしか出来ない端切れだったからだろう。

だけどそもそもクラレンスは服を作りたいわけじゃない。
……っていうか作れません。

「はい、このくらいの大きさがちょうどいいです」

「なら、あっちにたくさんあるわ。ちょっと取ってくるわね」

「ありがとうございます」

エイヴェリーが席を立ったのと入れ違いでマーガレットがこちらへと来た。

「あら?エイヴェリーは?」

きょろ、と首を巡らすマーガレットに端切れを取りに行ってくれたことを伝えると、きょとんと目をまたたいた。

「端切れ?端切れでいいの?」

さきほどのエイヴェリーと同じ質問に答えているところで、大きな箱を二つ軽々と抱えたエイヴェリーが戻ってきた。

「お待たせ。マーガレットも一段落ついたのね」

にこやかな笑みを浮かべ、箱が作業台へと降ろされる。

ドスンッ!!

「?!」

とんでもなく重量がありそうなその音に、思わず箱とエイヴェリーを二度見した。

開かれた箱の中には端切れがこれでもか、と詰まっている。
たぶん相当に重い……はず。
それを二箱、軽々と抱えていた麗人の姿をクラレンスはあんぐりと見つめた。

どれだけ麗しくても長身の男性、美貌のオネエは力持ちだった。

「どうかした?」

「えと、なんでも」

ふるふると首を振る。
その横ではクラレンスの驚愕の理由に気付いたマーガレットが笑いをこらえている。

箱の中身から好みの布を物色する。
まるでちょっとした宝探し気分だ。

にこにこと布を選ぶクラレンスをお姉さま(?)2人も布を手にとったりしながら楽し気に眺める。

「小物でも作るのかしら?」

「はい、小物入れを作ります」

「小物入れ?」

「クラレンスくんはお裁縫もできるのね。男の子なのに感心だわ」

「う~ん、お裁縫はあんま得意じゃないです」

マーガレットの言葉に苦笑いしながら返す。

ちょっとした繕いものや、ボタンを取り付けることぐらいはできるけど本格的にやったことはなかった。
ましてや千手観音レベルのマーガレットに言われてしまえば否定しかできない。

シックな感じの柄、可愛らしい花柄に、乙女チックなレース模様、気になった端切れをいくつも選び「これをください」とお願いした。

ウィステリア商会の布でも満足だと思っていたが、思った以上の豊富な色と柄に大満足でホクホクの笑顔だ。

「それに今回は針も糸も使わないんで」

「「針も糸も使わない??」」

向かいに座る2人の目が真ん丸になった。
針も糸も身近すぎる、むしろ日常の一コマである彼女たちには衝撃だったのだろう。

クラレンスがここに来た目的、それはきれいな布を手にいれること。

だけどそもそもの発端はエミリアのためだった。

不器用でお裁縫が苦手なエミリア。
だけど愛しい相手に贈り物ができないことを彼女は悔しがり、悲しんでいた。

そこでクラレンスが思いついたのがカルトナージュだ。

「お友だちでお裁縫が苦手な子がいるんですよね。それで布を厚紙に張り付けて作る小物入れならその子でも作れるんじゃないかと思って」
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