異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

アツアツな甘い幸せ・キャラメルバナナのダッチベイビー

エプロンのひもをキュッとしめ、クラレンスが手にしているのは小型のフライパンのような道具。

最近はお手頃価格でも入手できるスキレットです。
地味に色々使えて便利ですよね。

「今日はなにを作るんですか？」

「ダッチベイビーです！」

「ダッチ……ベイビー……？」

「パンケーキのお仲間的なのです」

やっぱり同じようなやりとりを料理人さんたちと交わす。

「なにをしましょう？」

もはやクラレンスが厨房にいることに慣れっこで、手の空いた料理人さんたちが自主的にお手伝いしてくれるのがとてもありがたい。

「オーブンの予熱とトッピングのキャラメルバナナをお願いします」

「わかりました。イリーネ様のバナナは多めですね」

本当に色々と話が早くて助かります。

スキレットを熱するのと、バターとグラニュー糖でバナナをキャラメリゼするのはお任せし、クラレンスは生地作りに取り掛かる。

室温に戻しておいた牛乳と卵をボウルにいれ、泡だて器で切るように混ぜます。
そこにふるった薄力粉も加え、ダマにならないようにさらに混ぜましょう。

ここでのポイントは混ぜ方。
泡立てるのではなく、切るようにさっくりと混ぜていってください。

基本のダッチベイビーの材料は卵、牛乳、薄力粉とシンプルですが、生地にもほんのり甘みが欲しいので砂糖をちょっぴり加えます。この辺はお好みで調整してください。

「スキレットにバターと生地をいれたいです」

「火傷したら危ないですからね。それはこちらでやりましょう」

「ありがとうございまーす」

いい感じに余熱されたオーブンのスキレットにバターをいれ、ぐるりと全体になじませる。

そこに生地を流しいれ、あとは２２０℃で１５分ほど焼けば生地が完成です。

シンプルな材料を混ぜて焼くだけ、というお手軽さもダッチベイビーの魅力です。
トッピング次第で味のバリエーションも無限大！

焼いている間にお茶の準備をしてもらったり、イリーネを呼んできてもらったり。
折角のアツアツですからね、冷ますわけにはいきません。

トッピングの材料もスタンバイし、オーブンにへばりついて焼き上がりを待ちます。

「できました。スキレットに触れないでくださいね」

「はーい！」

アツアツに熱されたスキレットに触れないように注意しつつ、全体にバターを塗り、粉糖を手早くふりかけます。
キャラメルバナナをのせ、ホイップもアイスもどーん！

さあさあと促されるままに小走りで厨房外のダイニングテーブルへ向かいイリーネの隣に着席。
目の前に料理人さんたちが運んでくれたスキレットが鍋敷きごと鎮座された。ナイフとフォークも、お茶の支度もバッチリです。

「これがダッチベイビー？確実に美味しい！！」

早くもナイフとフォークを両手に、口に入れる前から感嘆をくれるイリーネに「熱いからスキレットに気をつけてね」とさっき自分も言われた注意をする。

なにせアツアツ。
スキレットからそのまま食べるのですぐに冷めずにアツアツを楽しめるんです。

アツアツで甘くて幸せ、イリーネの注文にピッタリのスイーツだ。

かなり大きめに切った生地とバナナ、それからアイスをいっぺんに頬張ったイリーネの瞳が大きく丸くなった。

「はにこれ？」

喋るのは口の中のものを飲み込んでからにしましょう。

だがイリーネの気持ちもわからないでもない。
パンケーキ、という言葉から連想したイメージとだいぶ異なっていたのだろう。

「面白いでしょ？外はカリッカリとしてて中はもっちり。シューとクレープが合わさったみたいな食感だよね」

「いいっ！これすっごい好き。カリカリにアイスやトッピングが超合うし、もちっと感もいい感じ。キャラメルバナナもおいしー！！」

ほにゃり、とイリーネの表情が崩れた。

「うん、キャラメルバナナおいしーね」

「リンゴとレモンも今度作って！」

お気に召したらしいイリーネに別バージョンもおねだりされました。