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ふせんは一束持っていかれた……
しおりを挟む「ご注文の品をお届けに…………あれ?」
なんとなく気分で配達屋さんっぽく「ご注文の品をお届けにあがりました~」と紡ぐはずだった言葉が途切れた。
その原因は視線の先に予想外の人物を見つけたから。
「なんで王子様??兄さんたちもどうしたの?」
こんにちは、とあいさつしつつ首を傾げる。
先日注文をうけたそろばん。
それをイザークたちに届けに騎士団にきたら何故かいたフェリックにエドワード、そしてベンジャミンの三人。
フェリックの側近でもあるベンジャミンとはパーティーのときにご挨拶した。
書類のひな形のことで手を握って熱く感謝を述べられました。
ソファに長い足を組んで座ったフェリックがよぉと片手をあげる。
「具合はもう平気なのか?だいぶ寒くなってきたし、また風邪をひかないよう気をつけろよ」
「はーい。お見舞いもありがとうございました」
とてとて、と近づけばもうだいぶ前の風邪の心配をされた。
なにげに過保護さんがここにも居ました。
「先日書類を提出しにいったさいに、そろばんの話をしたんです。そしたらフェリック殿下らも興味をもたれたようですよ」
クラレンスにソファを勧めながら、イザークが最初の疑問に答えてくれる。
「それで、どういったものなのでしょう?」
メガネをクイッとしつつ前のめりなベンジャミンや、興味津々なフェリックたちの前にそろばんをじゃらじゃらと取り出す。
「ご注文通り15個です。ご確認ください」
「はい、確かに。ありがとうございます」
とりあえず納品をすませつつ、以前イザークたちにもしたように使い方を実践しながら説明する。
「……確かに紙に計算するより楽だな」
「まぁ計算機が一番楽は楽ですけど。お値段は魅力的ですよね。あと壊れにくいし」
「お値段はいかほど?」
間髪を入れないベンジャミンの問いにはセバスが淀みなく答える。
そのお値段は実に計算機の10分の1未満。
複雑な魔法式など必要としないそろばんは材料費と職人さんの手間賃のみ。
キラーン☆とベンジャミンのメガネが光った。
「殿下、購入しましょう!」
城の文官の間では貴重な計算機の取り合いは多々ある。
もちろん他の部署よりも計算機の数は確保されているものの、予算の関係なんかで全然足りない。
「購入数も検討しなくちゃいけないし、一旦落ち着けベンジャミン」
またもや大量注文の予感です……。
そして、それはそうと……。
「あの、ベンジャミンさん。それはイザークさんたちの注文分なんで……」
これは自分のだ!とばかりに握りしめて離さないそれは返してくださいな。
放そうとしないベンジャミンの手からはエドワードが奪還し、イザークたちに返した。
またとられそうなのでそそくさと片付ける騎士たち。
「とりあえず執務室用とは別に私個人でもお一つ発注を」
ゴタゴタしたやりとりが済んだあとで、みんなの目が向いたのはそろばんが置かれてたテーブルの上の細長い紙。
「ところでクラレンスくん、これは?」
「ふせんでーす。そろばん大量発注してもらったお礼にお試しでどうぞ」
「ふせん……」
「端っこにのりがついてるんです。これをこうして、こうすると……ほら!」
束から一枚ぺらりととってペンで「確認おねがいします!」とメモをかきかき、キョロキョロとあたりを見渡し置いてあった本の間にぴたり。
じゃーん!と本をかかげてみせた。
本からはみ出たふせんのメッセージは一目で目立つ。
「貼ってはがせるし、ちょっとした確認事項とか書類期限とか書くのに便利じゃないですか?」
ドヤッとしたクラレンスの思っていた以上に反応があった。
「「それも追加で注文を!!」」
あまりの勢いに押され「は、はい……」と頷くクラレンスだった。
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