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いつもご迷惑おかけします
しおりを挟む「こっちはフルーツゼリーでーす」
おたま片手にクラレンスは声をあげた。
台を前にし、椅子に膝立ちでおたま片手にしたクラレンスの前には行列。
ちなみに同じような台と行列は他に2つほどある。
台のうえにはたくさんのガラス容器が並んでいた。
そこにせっせとボウルからゼリーをよそっては渡す。よそっては渡す。渡す、渡す。
ゼリーはそれなりに大量に作ったし、なによりみんなの前で一部のお姉さんたちだけに“ダイエットスイーツ”なんてインパクト大のスイーツを提供するなんて恐ろしくてできるわけがない。
とはいえ、騎士団の女性全員ともなればそれなりの人数がいるわけで。
なので自分で並んでもらうセルフ方式にしてみました。
クラレンスが担当している列は甘い砂糖水をたっぷり飲ませ、緩めのジェル状ゼリーに色んなフルーツを加えたフルーツゼリー。
彩りの華やかさもあって行列の長さもなかなかだ。
他にぶどうジュースを使ったぶどうゼリーと、コーヒーゼリーの台があります。
コーヒーゼリーの台にはセルフのシロップと生クリーム完備。
「おいし~い!!これでダイエットスイーツとか最高じゃないっ?!」
「ぷるぷるして冷たくて美味しいわ」
「これいくらでもイケそうなんだけど」
発端となったお姉さんらと姉のイリーネの会話にクラレンスは突っ込んだ。
「ほかのスイーツと比べたら断然カロリーは少ないけど、それでも食べ過ぎたら同じですからね?」
「「「……」」」
ある程度の満腹感も得られるし、低カロリーとはいえ食べ過ぎはいけない。
ただでさえ騎士である彼女らの胃袋は通常の令嬢の何割増しで食べれてしまうのだ。
子どもに現実を突きつけられ、「はぁい」と情けない返事を返して少しずつ味わうようにゼリーを食べるイリーネたち。
「だけど本当に美味しいね。あたしは甘ったるい菓子よりはこのぐらいの方が好きだよ」
そういうクラリッサが食べているのはコーヒーゼリー。生クリームあり、シロップなし。
配り終わったクラレンスも自分の分のゼリーを食べる。
フルーツたっぷりゼリーは一口ごとにフルーツの味も食感も色々で楽しい。
「お酒を使ったカクテルゼリーとかもおしゃれですよね」
思い付きでいった言葉だったが反応があった。
若い団員のお姉さんたちみたいに目の色変えてねだられたりはしなかったけど、お酒好きのクラリッサが興味を示したのをクラレンスは見て取った。
こんどクラリッサさんに作って持ってこよう。
母や姉がなにかと迷惑をかけてそうだし、とそう決めた。
少し確保しておいたコーヒーゼリーを持ってもう一つの騎士団へと向かった。
「あなたたちは何度おなじことを言ったらわかるんですか?」
父らの執務室では、瞳を細めて吹雪を背負ったイザークが仁王立ちしていた。
ひぃ!と声を上げた数人が肩を縮めて机に齧りついている。
それを見てなんとなくクラレンスは状況を察知した。
たぶんまた書類の期限忘れとか色々あったんだろう。同じような光景は何度か見ている。
お説教が終わったとろこで、はぁ、とお疲れなイザークの元へ行く。
「コーヒーゼリー持ってきたんで食べて下さい。お疲れさまです。……父さんらがいつも迷惑かけてます」
甘さ控えめなコーヒーゼリーはイザークにも気にいって貰えたようだ。
たまに持ってこよう。
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