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異世界にもオネエさんは存在した
しおりを挟む「んまぁ~!かわいいっ!」
目の前のなかなか強烈な麗人に、クラレンスはパチリと目を瞬いた。
「きょとんとしたお顔もかわいいわっ!やーん!持って帰っちゃいたいわ、この子」
「ほらほら、驚いてるわよ。突然ごめんなさいね?だけど本当に可愛いわ」
「えっと……ありがとう、ございます?」
若干疑問形でお礼を告げる。
なお、持って帰りたい発言にお付きのセバスが警戒した様子でちょっと前に出た。
「すみません、クラレンス様。さぁ、どうぞお掛けになってください」
申し訳なさそうな表情のエリックに促されすでにお客様が座っていたソファの向かいに腰かける。
場所はウィステリア商会の見慣れた応接室。
注文した商品を受け取りにきたところだ。
なお、クラレンスはウィステリア商会を訪れるたびに半分以上の確立でここに通されるのでなんの疑問も抱いていないが、普通の客がここへ通されることはまずない。
ここは商談相手やお得意様を通す部屋で、エリックがクラレンスに多大なビジネスチャンスを見出しているからこその対応である。
お子さまがお菓子とお茶をご馳走になるお部屋ではないのだ。
そしてそんな応接間で待っていた二人はエリックの商談相手でありお得意様。
「はじめまして。私はマーガレット。そっちのエイヴェリーと一緒に服飾の仕事をしているの。エイヴェリーがデザイン担当で私が縫製担当よ」
「はぁい♪エイヴェリーよ。よろしくねん♪」
すごいキャラが強いな、と思いつつクラレンスも自己紹介してよろしくお願いしますとご挨拶。
その脇ではエリックが相変わらずのクラレンスのマイペースさに関心したようにやりとりを見ていた。
……というのも。
「初対面でエイヴェリーに動じないなんてすごいわね。大抵は引いちゃうのよ」
「ちょっと驚いてはいます」
二人ともとっても美人だった。
そしてさすがは服飾関係のお仕事をしているだけあってとってもおしゃれだ。
とってもきれいなのだが……エイヴェリーは男性。
パンツを組み合わせたスーツドレスとバッチリ施されたお化粧。
それらを纏う姿は麗しいが、背の高さや細身だけど女性とは違うラインからそう見受けられる。
オネエさんというヤツだろうか?
「でもとってもお似合いです」
そう思ったので正直にそう告げた。
多様性の時代に慣れたクラレンスとしては他人に迷惑をかけなければ別にいいじゃないか、という感じだ。
視線を逸らしたくなるようならまだしも、宝塚みたいでお似合いだし。
「……っやだっ!超絶いい子なんだけど。本気でお持ち帰りしていい?」
「お持ち帰りは勘弁してください」
両手を組み合わせたエイヴェリーに感激の視線を向けられて、クラレンスはちょっとあとずさりながら首を振った。
そもそも僕なんでここに呼ばれたの?
そんな気持ちを込めてエリックに助けを求める。
「クラレンス様にお会いしたいというお客さまがいるのですが……」とは言われたが、用件がまるで思いつかない。
「当商会で扱わせて頂いているビジューヘアゴムがあるでしょう?お二人はあれに興味をお持ちになったんです」
ああ、と母と姉にプレゼントしたヘアゴムを思い出す。
「開発者がまさかの少年だって聞いて余計に興味を持っちゃったのよ!」
「残念ながらあたなの同類ではなかったみたいね」
えらい疑惑を持たれていたことを知ってクラレンスはちょっと遠い目をした。
エリックが小声で「違うとは何度も説明したのですが……」と弁明してくる。
「今回もなにやら素晴らしい思い付きがおありのようなので、そのことをポロっと漏らしたらお会いしたいと居座られてしまって」
苦笑いしながらも期待に満ち満ちた目を向けてくるエリックと、興味津々な二対の瞳。
「……僕、私用で発注しただけなんですけど?」
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