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パリッ、ジュワッ、ジューシー!甘辛照り焼き
しおりを挟むトルティーヤとピタパンの生地は料理人さんたちがつくってくれるので、クラレンスは具材担当だ。
「私はなにをすればいいですの?」
「ぼくも!」
エプロンを装着し、腕まくりもしたシルクとエリシュオンが意気揚々と聞いてきた。
生地に具材をくるくる巻くだけでなく、お料理も手伝いたいと今回参戦した二人だった。
それ自体は快諾したクラレンスたちだが……刃物や火を扱わせるつもりはない。
なにせシルクは手先があまり器用でないし、エリシュオンは幼い。
ケガでもしたら大変だ。
なので葉物を洗って水気を拭き取る作業をお願いした。
もう少し工程が進んだら、混ぜたり、具材をつめたりの作業をお願いしようと思う。
破かないように一枚一枚シルクが葉物を丁寧に洗い、そのとなりではエリシュオンが水気をキッチンペーパーでとんとんと拭いている。
二人ともみたことがないくらい真剣な表情だ。
そんな微笑ましい二人の正面の作業台でクラレンスは鶏肉を用意する。
「クラレンス様。から揚げの方は私が担当いたしますので、照り焼きの方をお願いしてもいいですか?」
「はーい。了解です」
揚げ物は料理長が担当してくれるようです。
ポテトサラダ用のジャガイモの処理もほかの料理人さんに頼んでくれてました。
テキパキと段取りをしてくれる料理長に、信頼とともに「一緒に来てもらってよかった」心の底からクラレンスはそう思った。
まずは鶏もも肉に厚みを均等に切り開きます。
厚みが違うと焼き具合にムラがでてしまうのでこの作業はとっても重要。
鶏肉に薄く片栗粉、塩コショウをまぶします。
余計な粉はハケなどで取り除きましょう。
ご家庭で調理するときはビニール袋に片栗粉、塩コショウを入れてその中で鶏肉に粉をまぶせば手が汚れなくて楽チンです。
鶏肉の大きさにあったフライパンで、多めの油で皮目を下に中火で揚げるように焼いてこんがりキツネ色になったらひっくり返します。余分な油はペーパーナイフで拭き取ります。
そしてクラレンスは黒い液体が入ったボトルを手にした。
先ほど魔法の鞄からじゃーん!とばかりに取り出したそれこそクラレンスが探し求めていたものだった。
「それはなんですの?」
「真っ黒……」
見慣れない謎の液体に葉物を洗う任務を完遂した二人が首を傾げた。
二人の問いにクラレンスはそれを掲げ、ドヤっといい笑みを浮かべた。
喜びが隠しきれない。
「これはお醤油です!!」
そう、 お・し・ょ・う・ゆ !!
先日、エリックがついに見つけてくれたのだ。
実物を目にした時は思わずエリックに抱きついたクラレンスである。
そしてこのお醤油があるからこそ今日のメニューは照り焼きなのだ。
チキン被りしてるとか知ったこっちゃない。
なお、から揚げはエドワード経由で耳にしたフェリックからのリクエストです。
再び皮目を下にして、しょうゆ、みりん、酒、砂糖をまぜたタレを加えて煮絡めます。よく絡んだらひっくり返して裏面も。
醤油の香ばしさと甘さが混じったいい香りが辺りに広まった。
鼻をクンクンさせてるエリシュオンが可愛い。
シルクも興味津々でフライパンを覗き込んでいる。
火や刃物を使うため、こっち側には来ちゃ駄目の言葉を守っている二人のもとへと小さめにカットしたお肉を乗せた皿を手に近寄る。
「味見してみる?」
「はい!」「うん!」
お肉の塊を口へと放り込んだ二人の目が大きく開き輝いた。
「美味しいですわ。甘辛くって、皮がパリッとしてるのにお肉がとっても柔らかいです」
「ぼく、これ好き!甘くておいしい!」
照り焼きはこどもに大人気の味付けである。
そしてもちろん大人にも……。
見知らぬ調味料と料理に向けられる熱視線。
ええ、非常に見覚えのある光景です。
新たなメニューを前にしたときの料理人さんたちのいつもの反応ですね。
そして味見にと差し出したそれはまたたくまになくなり、もう一度おなじ工程を繰り返すことになるのもいつものことです。
ちなみに照り焼きは屋敷でもすでにチャレンジ済みです。
よそで新メニュー挑戦すると料理人さんたちが拗ねるので……。
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