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想定外の事態
しおりを挟む中世ヨーロッパを思わせる華やかで広々とした部屋。
四方の壁には繊細な模様が描かれ、敷物も調度品も全てが格式高く品がいい。
そしてなによりむちゃくちゃお高そうだ。
照明はキラキラと目に眩しいほどだし、腰かけたベルベット地のソファの座り心地も抜群。
ザ・お城。
海外の古城の内部映像や、映画のシーンで見たイメージまんまの城内の一室。
そして実際、そこは城内の一室だった。
なんでこんなことに……?
そう思いつつもピシリと意識して背を伸ばす。
鮮やかな金髪に碧い瞳をした美青年を見た最初の感想は「うわぁ!王子様!!」だった。
そしてその相手は絵本の王子様のような存在ではなく、正真正銘この国のリアル王子様のフェリックだった。
横にはとてもこの年のこどもがいるようには見えない美しい王妃様の姿もあった。
城自体には頻繁に訪れるようになったクラレンスだが、いつも出向くのは騎士団方面ばかり。
こんな城内でもひときわ華やかな王族スペースに立ち入ったことなどもちろんないし、ましてやこんな雲の上の人物と対面することになるとは思ってもみなかった。
ましてやものすっごい見られてるし……。
見られている。
目の前のソファに座った蒼い瞳に値踏みするようにじっと見つめられ、さすがのマイペース少年もちょっとたじろぐ。
だっていきなり王族とご対面させられたのだ。
平静でいろというのがムリなはなしだ。
「ちょっとフェリックお兄様!クラレンス様を睨むのはやめてくださる?」
ムッとした表情で文句をつけたのはシルクだった。
堂々と王子様を睨みつけるその姿にいっそ称賛を覚える。
「いや別に睨んではだな……」
「でしたらそれが地顔ですの?まぁ、怖い。そのようなお顔ですとエルやクラレンス様が怖がるので席を外してくださらない?」
「おまえ……久々に会った従兄に向かってその口はなんだ」
「私だってフェリックお兄様やおば様にお会いできたことは嬉しいですわ。沢山心配をして頂いたことも存じてますし、数々のご配慮に感謝もしております。ですがそれと現在のフェリックお兄様の態度は別問題でしょう?呼び立てておいてその態度はないでしょう?」
……シルクがむちゃくちゃつよい。
幼い令嬢にタジタジな一国の殿下というたいへん珍しい光景にも関わらず、王妃様と侯爵夫人は微笑ましいやりとりでも見るように扇片手に微笑んでいらっしゃる。
姉妹でもある二人の容姿はどことなく似通っていた。
そして目の前で舌戦をくりひろげる二人と隣に座るエリシュオンの姿も、美形というくくりを抜きにしてもどことなく顔立ちが似ている気がする。
髪の色こそフェリックとエリシュオンが同じ色だが、凛とした気が強くて聡明そうな雰囲気はむしろフェリックとシルクの方が実の兄妹のようにも見える。……いまは年下の少女相手にタジタジだが。
クラレンスが王城の一室に居る理由。
それは可愛い姪にしていとこであるシルクとの面会の場に、なーぜーか、クラレンスも一緒にと王族直々にご招待されたからだった。
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