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ある意味“らしい”

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あんまりにもあっさりとしたOKに一同は一瞬ついていけなかった。

呆気にとられたような周囲の視線など気にも留めずに、紅茶をコクリと飲んだクラレンスは「あっ!」とばかりに母へと顔を向けた。

「勝手に決めちゃマズかった?」

問い掛けになんともいえない表情で首を振る母。
よかった、とばかりに表情を緩めるクラレンスだが周りの反応は微妙なままだ。

代々騎士を輩出する由緒正しき伯爵家だが、その家風は父や母らを見てわかるとおりいたって自由。
両親自身が恋愛結婚だし、こどもたちにも家の繋がりのためにと政略結婚を強いる気はない。
ましてはクラレンスは四人兄弟の末っ子、しかも相手は親交もある侯爵家の令嬢と申し分ないほどの相手だ。

なので反対などするはずもない。

するはずもない……のだが、もうちょっとこう、なんかない?そんな気持ちで息子を見やる母だった。

仲良しなこどもたち三人は見ていて微笑ましいし、シルクがクラレンスに恋心を抱いているのは一目瞭然。
可愛らしい恋模様をにやにやドキドキと見守っていた面々としてはクラレンスの反応に拍子抜けするほかない。

だって普通。

あまりにもあっさりしすぎで盛り上がりにかける。

「えっと、その……クラレンスもシルクちゃんに好意はあるのよね?」

「うん。シルクもエルも大好きだよ」

思わず問いかける母にためらいなく答えるクラレンス。

だけどなぜだろうか。

この、ちがう……そうじゃなくて、感がはげしくつきまとうこの感じ。

「いまは結婚とかあんまり意識したことないけど、これからもいっしょに居たいって思うしシルクとならいやじゃないよ」

相変わらず恋愛感情は読み取れないが、そういってふんわりお日さまみたいにクラレンスは笑う。

「シルクみたいにきっぱり「幸せにする」って宣言はできないけど、でもシルクとなら“いっしょに”幸せになることはできると思う。そんな毎日を積み重ねていくことはできると思うんだ」

「それでもいい?」と問いかければ、震えながらコクコクと頷くシルク。

「はい……はいっ!」

「じゃあ、よろしくね?」

にっこり笑って手を差し出せば、握手でなくぎゅうぎゅうと抱き着かれた。

ぱち、と小さな音が漏れた。
ぱちぱちとメイドたちから小さな音が続く。

恋愛小説的な盛り上がりはこれっぽっちもないし、思ってたシーンとはかなりちがうが……これはこれでなんだかとってもクラレンスたちらしかった。

顔を真っ赤にして嬉しそうにクラレンスに抱きつくシルクは年相応で可愛らしく、泣き出したシルクを宥めるクラレンスの手は優しい。

おめでとうございます!と瞳をキラキラさせて二人に声をかけるエリシュオンは微笑ましいし…………
紡がれた言葉のとおり、なんだかとっても幸せそうな光景だ。

遅ればせながら祝福の拍手や声が響き渡った。

そうしてはじまりは和やかだったティータイムはいつしかお祭り騒ぎへと早変わりした。
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