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★その他★ 番外編・企画など
クリスマス 1
しおりを挟む「ふんふんふーん♪ふんふんふーん♪ふふふふーん~♪」
クリスマスの定番、おなじみのジングルベルのメロディーがもれる。
12月、街は色とりどりに華やぐ季節。
赤や緑、金銀のクリスマスカラーに染まった通りは寒さも忘れるほどに楽し気だ。
思い思いの飾り付けがなされたツリー、リースにタペストリーに、気の早いサンタクロースがいたるとろこにかくれんぼしている。
そんなクリスマスムード一色な通りをあっちこっちに視線をさまよわせながらクラレンスはご機嫌で歩いていた。
楽し気に鼻歌を歌いながらきょろきょろとするこどもを道行く人々は微笑まし気に見送る。
その手には大切な人へとプレゼントらしい包みや、ご馳走用のワインや食材を持つ人も多かった。
それもそのはず、王都でも人通りの多いこの通りは大きな商店が立ち並ぶ繁華街。
中でもひときわ立派な店構えのドアを潜ると、見慣れたウィステリア商会の店内はクリスマスムード一色だった。
「はぐれないようにしてくださいね」
「はーい!」
セバスの念押しにいい子の返事で答える。
実はあまりの人の多さに馬車を停めた場所から店まではバッチリ手を繋がれていたクラレンスです。
微笑まし気な視線の一端は確実にそれ。
まず向かったのは売り物ではない大きなツリー。
見上げるほどのクリスマスツリーはオーナメントも凝っていてとてもきれいだ。
それから小物におかし、プレゼントの類など人にぶつからないようにしつつ店内を順に見渡す。
そうしてやっと目的のひとつへとたどりついた。
赤や緑、金銀のクリスマスカラーのリボンやガラのついた包装紙などがひしめくラッピング用のコーナーだった。
「あ、これかわいい。でもこっちのサンタもいいな」
沢山のギフトパックに目移りしてなかなかコレと決められない。
うーん、と唸ること数分。
ようやく選んだのは下の方にたくさんのデフォルメされたサンタが描かれている小振りのギフトパックだ。
せわしなくプレゼントをくばるミニサンタたちがかわいらしい。
数枚入りのそれをひとつでなくいくつも手にとる。
「そんなに買われるのですか?」
不思議そうなセバスにコクリと頷き次のコーナーへと向かう。
クリスマスカードのコーナで再びうーん、と唸っていると名前を呼ばれた。
集中しすぎて周囲が目に入っていなかったクラレンスがぱちりと瞬きふりかえるとエリックが「いらっしゃいませ」と穏やかに微笑んでいた。
大商店のオーナー自ら客のもとに出向くなどめったにない事態だが、クラレンスにとってはいつものことなのでなにも気にせず「こんにちはー」とご挨拶。
なんの疑問にも感じていない。
「クリスマスカードってここにあるので全部ですよね?」
ちょうどいいので気になったことを聞いてみた。
「ええ。お気に召すものがありませんでしたか?」
顔をくもらすエリックに「いえ、全部きれいなんですけど……」と慌ててクラレンスは首を振った。
デザインに不満があるわけではないのだ。
品ぞろえも豊富だし、きれいな絵柄やかわいらしい絵柄もたくさんある。
クリスマスカードを贈ろうと思いたったシルクや祖父たちもきっと喜んでくれると思う……。
ただ……せっかくならもっとワクワクするカードがいいということで。
「飛び出したい」
「「飛び出す??」」
端的な言葉は伝わらず、エリックやセバスが首を傾げた。
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