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ベッドを譲ってもらえた
しおりを挟む飲み会は大盛況だった。
強制参加ではなかったが、食べるのも飲むのも騒ぐのも大好き!な騎士たちは大多数が参加した。
そして一方で夜勤で参加できない騎士たちはちょっぴり泣いた。
すごく可哀想なので、作ったから揚げは一部保存しておいてもらうことにした。
魔法の鞄で保存すればいつでも揚げたてあつあつなので。
夜勤明けで朝からから揚げ重いとか気にしない。
なんなら部屋飲み用にお持ち帰りしてもらってもいいし。
ちなみにクラレンスも揚げたてほやほやをいくつかもらった。
せっかくだし兄のエドワードにも味わってほしいと思ったのだ。
他の家族はもれなく飲み会参加中なので……。
「へぇ~、これが“から揚げ”かぁ。うん美味しい。ボクはこのタルタルソースつけるのが好きかも」
「私はそのままが好きですね。ネギ塩ダレもさっぱりして美味しいですが」
「お口に合ってよかったです。僕も念願のから揚げが食べれてうれしいです。ローランさん、あとで油の処理お願いしまーす」
「おっけー、任せて」
クラレンスも教えてもらった魔法を実践がてらあとで挑戦してみるつもりだ。
「ほんっとうにクラレンスはお料理が上手ねー」
「マジで超美味い」
「から揚げもおいしいですけど、もう少し平らなチキンフィレを揚げてバンスにサンドしたバーガーや白身フライにタルタルソースかけたのもおいしいです」
「「こんど作ってっ!!」」
ヘンリーとイリーネが新メニューに前のめりに食いつく。
ついでに近場の騎士や料理人の目も光った。
気持ちいいぐらいにお肉をバクバク頬張る二人のそばで、両親はから揚げも楽しみつつジョッキを握る手が止まらない。
あちこちでどんどん消費されていくエールを横目に、「急性アルコール中毒にならないかな」と思わず心配になる。
本日の主役であるリシューはかつての同僚か、年嵩の騎士たちに囲まれていた。
そして功労者であるクラレンスとローランの元にも次々に人が訪れる。
机のうえはジュースやお菓子でいっぱいだった。
飲酒法がなくこどももワインを口にすることはあるが、クラレンスはあまり好きじゃないのでお酒はのまない。
なのでジュースを代わる代わるついでいってくれるのだが……そろそろお腹がタポタポいいそうだ。
まだほぼ丸まる残っているブドウジュースと水の瓶をもって席を立つ。
向かったのはバードたちが居るテーブルだった。
バードだけでなくレックスも車椅子で参加していた。
トンッと両手にもった瓶をテーブルへと置く。
「いっぱいもらったのでおすそ分けです。過度な飲酒は体に良くないんでほどほどにしてくださいね」
その言葉にあからさまにバードが手を止めた。
グラスを戻そうとするのを見てゆるっと笑う。
「そんな過敏にならなくても平気ですよ。少量なら害じゃないですし、無理しすぎる方がよくないです。せっかくのお祝いですしね」
「……そうだな」
「それにリシューさんを見て希望が持てたでしょう?」
「ああ、ありがとう」
いいえーと軽く笑ったところで自分を呼ぶ声が聞こえた。
「あっ、じゃあ戻りますね。おかわりも沢山あるんで皆さんいっぱい食べてくださいねー」
そう言い残し兄姉の元へと走り寄る。
飲み会は夜中まで続き、途中ギブアップしたクラレンスは騎士寮の父の部屋にお泊りした。
「父さん、お酒くさい」
顔をしかめられ、息子に一人でソファで寝ると言われた父の落ち込んだ姿が見られるのは次の朝。
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