31 / 193
ストーリーはわりと適当
しおりを挟むたたたたっと軽い足音を立てて抱き着いてくるエリシュオンを「わわっ」と軽くたたらを踏みながらも受け止めた。
「いらっしゃい、クラレンス兄さま!」
満面の笑みで来訪を喜んでくれるエリシュオンには、もはや微塵も当初の人見知りの様子はうかがえなかった。
クラレンスが「エル」と愛称呼びしているように、いまでは「クラレンス兄さま」と呼んでくれる。
末っ子のクラレンスとしては小さな弟が出来たようで可愛いし嬉しい。
「お待ちしていましたわ。どうぞご自分の家と思ってゆっくりしてくださいね」
「うん。ありがとう二人とも」
歓迎に笑顔でお礼を言うと、エリシュオンと手をつなぎ夫人らの方へと向かう。
「こんにちは。今日からしばらくお世話になります。宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば「あらあら、そんな堅苦しくなくていいのよ。シルクの言う通り自分のお家だと思ってね」とシルクたちによく似た美しい夫人は微笑んでくれた。
美味しいお茶菓子に舌鼓を打ったあと、シルクとエリシュオンにお屋敷の中を案内してもらい、広いお庭を探検もした。
ローズガーデンの迷路でさんざん迷ってしまったこともあって喉がカラカラだ。
「すぐにお茶をご用意しますね」
ふふっと笑いながらそう告げてくれたのは、メイドのミーナ。
優し気な垂れ目の少女はシルク付きのメイドで、今までも何度も顔を合わせている。
塞ぎがちだった姉弟をとても心配していたミーナは楽しそうな三人の姿にすごく嬉しそうだ。
「あ、ミーナさん。お茶じゃなくてこれがいいです!」
魔法の鞄からクラレンスが取り出したのはお手製のジンジャーシロップ。
「これは?」
「ジンジャーシロップです。炭酸水で薄めて欲しいです」
「畏まりましたわ」
氷たっぷりのジンジャーエールはとても涼し気だった。
コクコクと喉をならすクラレンスの横で、初挑戦のシルクとエリシュオンが両手でグラスを抱えながらちょっぴり恐々と口をつける。
口をつけた二人の反応は対照的だった。
「すっきりした飲み口ですわね」
気に入ったようで笑顔で二口目を口にするシルク。
そして、
「……!?」
大きな目をパチクリさせて可愛い唇を尖らせるエリシュオン。
どうやら辛かったようだ。
「エル、平気?シロップを加えたら飲めるかな?」
ミーナがすぐさま用意してくれた普通のシロップを追加で加えて甘みを増せば、エリシュオンもコクコクと飲んでくれる。
「午後はなにをいたしましょうか?日差しも強くなってきましたし、図書室で本でも読みます?」
「ぼく、兄さまのお話し聞きたい!」
シルクの提案に「はい!」と小さな手を挙げるエリシュオン。
お話しというのは前世の童話やマンガのストーリーだ。
何度か遊びに来るなかで、やることに困った時になんの気なしに語ってみせたら二人ともわりと気に入ってしまったのだった。
そして自身のことはほとんど覚えていないくせに、相変わらず細かい知識だけは無駄に覚えているクラレンスだった。
だけど、実際は記憶があやふやなとこもあるのでところどころ創作が入ってたりする。
元話を知る人が居ないのでバレません。
「じゃあ午後はお部屋でお話ししよっか」
短期ホームステイはとっても楽しくスタートしました。
1,073
お気に入りに追加
2,106
あなたにおすすめの小説

【完結】イケメン旦那と可愛い義妹をゲットして、幸せスローライフを掴むまで
トト
児童書・童話
「私も異世界転生して、私を愛してくれる家族が欲しい」
一冊の本との出会いが、平凡女子をミラクルシンデレラに変える

昨日の敵は今日のパパ!
波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。
画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。
迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。
親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。
私、そんなの困ります!!
アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。
家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。
そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない!
アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか?
どうせなら楽しく過ごしたい!
そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!
碧
児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます
井藤 美樹
児童書・童話
私の両親はお人好しなの。それも、超が付くほどのお人好し。
ここだけの話、生まれたての赤ちゃんよりもピュアな存在だと、私は内心思ってるほどなの。少なくとも、六歳の私よりもピュアなのは間違いないわ。
なので、すぐ人にだまされる。
でもね、そんな両親が大好きなの。とってもね。
だから、私が防波堤になるしかないよね、必然的に。生まれてくる妹弟のためにね。お姉ちゃん頑張ります。
でもまさか、こんなことになるなんて思いもしなかったよ。
こんな私が〈聖女〉なんて。絶対間違いだよね。教会の偉い人たちは間違いないって言ってるし、すっごく可愛いモフモフに懐かれるし、どうしよう。
えっ!? 聖女って給料が出るの!? なら、なります!! 頑張ります!!
両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる