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ストーリーはわりと適当
しおりを挟むたたたたっと軽い足音を立てて抱き着いてくるエリシュオンを「わわっ」と軽くたたらを踏みながらも受け止めた。
「いらっしゃい、クラレンス兄さま!」
満面の笑みで来訪を喜んでくれるエリシュオンには、もはや微塵も当初の人見知りの様子はうかがえなかった。
クラレンスが「エル」と愛称呼びしているように、いまでは「クラレンス兄さま」と呼んでくれる。
末っ子のクラレンスとしては小さな弟が出来たようで可愛いし嬉しい。
「お待ちしていましたわ。どうぞご自分の家と思ってゆっくりしてくださいね」
「うん。ありがとう二人とも」
歓迎に笑顔でお礼を言うと、エリシュオンと手をつなぎ夫人らの方へと向かう。
「こんにちは。今日からしばらくお世話になります。宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば「あらあら、そんな堅苦しくなくていいのよ。シルクの言う通り自分のお家だと思ってね」とシルクたちによく似た美しい夫人は微笑んでくれた。
美味しいお茶菓子に舌鼓を打ったあと、シルクとエリシュオンにお屋敷の中を案内してもらい、広いお庭を探検もした。
ローズガーデンの迷路でさんざん迷ってしまったこともあって喉がカラカラだ。
「すぐにお茶をご用意しますね」
ふふっと笑いながらそう告げてくれたのは、メイドのミーナ。
優し気な垂れ目の少女はシルク付きのメイドで、今までも何度も顔を合わせている。
塞ぎがちだった姉弟をとても心配していたミーナは楽しそうな三人の姿にすごく嬉しそうだ。
「あ、ミーナさん。お茶じゃなくてこれがいいです!」
魔法の鞄からクラレンスが取り出したのはお手製のジンジャーシロップ。
「これは?」
「ジンジャーシロップです。炭酸水で薄めて欲しいです」
「畏まりましたわ」
氷たっぷりのジンジャーエールはとても涼し気だった。
コクコクと喉をならすクラレンスの横で、初挑戦のシルクとエリシュオンが両手でグラスを抱えながらちょっぴり恐々と口をつける。
口をつけた二人の反応は対照的だった。
「すっきりした飲み口ですわね」
気に入ったようで笑顔で二口目を口にするシルク。
そして、
「……!?」
大きな目をパチクリさせて可愛い唇を尖らせるエリシュオン。
どうやら辛かったようだ。
「エル、平気?シロップを加えたら飲めるかな?」
ミーナがすぐさま用意してくれた普通のシロップを追加で加えて甘みを増せば、エリシュオンもコクコクと飲んでくれる。
「午後はなにをいたしましょうか?日差しも強くなってきましたし、図書室で本でも読みます?」
「ぼく、兄さまのお話し聞きたい!」
シルクの提案に「はい!」と小さな手を挙げるエリシュオン。
お話しというのは前世の童話やマンガのストーリーだ。
何度か遊びに来るなかで、やることに困った時になんの気なしに語ってみせたら二人ともわりと気に入ってしまったのだった。
そして自身のことはほとんど覚えていないくせに、相変わらず細かい知識だけは無駄に覚えているクラレンスだった。
だけど、実際は記憶があやふやなとこもあるのでところどころ創作が入ってたりする。
元話を知る人が居ないのでバレません。
「じゃあ午後はお部屋でお話ししよっか」
短期ホームステイはとっても楽しくスタートしました。
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