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可愛い弟の手料理 (イリーネ)

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わくわくしながら食卓につく。

クラレンスに「なにを作ったの?」と聞いても「夕食のお楽しみですー」と答えてもらえなかったからより待ち遠しくて仕方ない。

これでヘンリー兄さんに自慢しかえしてやれるわ!!

ずっとずっと会いたかった弟。
顔すらまともに覚えてなかった弟は、ものすっごく可愛かった!!

まず小っちゃい。
あれ?この子、13歳よね?って疑問に思うぐらい小っちゃかった。
そんでもって動きがなんか小動物っぽい。

背の高さの関係もあって大きな瞳で見上げてくる姿とか……。

可愛い。
わたしの弟、超絶かわいいぃぃぃ!!!!!

ふわふわのんびりしてることもあって超可愛いし癒されるわ。

あれから、時間があれば可愛い弟に構ってる。
はぁ~~鍛錬の疲れも吹っ飛ぶ可愛さ!可愛いは偉大!!

母さんたちもクラレンスが可愛くて仕方ないみたいだけど忙しくてなかなか構う時間がない。立場的にも屋敷に返る機会が多いのはわたしとヘンリー兄さんだけど、兄さんは自分の放った不用意な一言によってぎくしゃくしてた。

それもあって現状クラレンスと一番仲良しはわたしだと思っていたのに……。

先日クラレンスの髪をくしゃくしゃ撫でる兄さんを見た時の衝撃。

いつの間にあんな仲良く?!

いや、二人が仲良くするのはいいことなんだけど。
それでもあまりの態度の違いに鍛錬中に聞いてみたら……。

「別に普通だろ?兄弟なんだし。あいつ料理上手いよな。この前クラレンスがマヨネーズ使って作ったサンドイッチ食べさせてもらったんだけど、どれもめっちゃ美味かった」

なにそれ、聞いてない?!

マヨネーズ?とかいう白いソースはわたしもこの前食べた。
サラダがいつもと違った味わいですっごく美味しくておかわりしたし、クラレンスが考えたって料理長から聞いて「わたしの弟、天才!」って思ってた。

だけど手料理?!

なにそれ、なにそれ!!
わたし食べてないんですけど?!!

しかも自慢げな表情を隠しもしないヘンリー兄さんが超ムカつく!

これは帰ったら絶対にわたしも作ってもらわなくっちゃって決意して今日。

優しくていい子のクラレンスはわたしと母さんの頼みを快く引き受けてくれた。
やった。これで兄さんに自慢できるわ。


そして出てきた料理は……

「グラタン?」

「じゃがいもとベーコンのマヨグラタンです。こっちは生野菜のディップ。普通のマヨネーズと、ピンクっぽいのはタラコっていう魚卵が混ぜてあります」

一見普通のグラタンだけど、これにもマヨネーズが使われているらしい。
ディップは白とピンクの二種類。

グラタンがぐつぐついってるので猫舌のわたしはまずは生野菜のディップに手を付けた。
まずはピンク。母さんは初めてだからか白に挑んでた。

「?!これがマヨネーズ。コクがあって美味しいわね。お野菜嫌いの子でも食べられそうだわ」

「タラコも美味しい!塩味とプチプチ食感が良いアクセントね」

「このソースはなにで出来ているの?」

「卵黄とオイルとお酢ですー」

「「卵黄?!」」

白いじゃないっ?!

「乳化させることで白っぽくなるんですよ」

乳化……なんだかよくわからないけど、このソースを作り上げたクラレンス天才じゃない??


つづいてマヨグラタン。
フーフーと息を吹きかけて、スプーンを口へ。

「おいひぃ」

熱くて言葉がちょっと不明瞭になったのはご愛敬。

通常のグラタンと違ってホワイトソースの濃厚さはないけれど、マヨネーズを使ったソースとたっぷりのチーズのお陰で物足りなさはない。
コクともに感じるほんのりとした酸味も具材の味を引き立てるし、カリッとしたベーコンの塩味とうまみもいい感じ。

大満足で完食し、「またお料理作ってね」と母さんと共におねだりしたのは当然のことだ。


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