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【その後】
転生司祭は休日を過ごす 12
しおりを挟む「それにアーサーと殺し合うの嫌だし」
さらっと零された言葉に思わずユリアを凝視する。
え?待って、どういうこと?
なんでアーサーと殺し合う話になった??
フリーズする僕らを他所に、当のアーサーはというとユリアの発言にうんうん頷いていた。
「恋愛感情とかそういうのはとっくに超えてるから置いとくとして、結婚っていう手段で合法的にミシェル様を独占できるのは魅力的だけど、アーサーも他の子たちも許さないだろうしなぁ」
「お前だって同じ立場なら許さないだろう。万が一ミシェル様が女性で俺が告白したら絶対邪魔するだろうが」
「そうだよねぇ」
ねぇ待って、本当に待って。
「ま、まぁさっきの女がミシェルに気があるにせよ、10歳ぐらいなら許容範囲だろ。そんなこと言ってたらコイツなんて犯罪だしな……ぐぁ!」
とにかく話題を逸らそうとしたのだろう。
フォークでコイツ、とシルフィーナを指したウルフの腹にはシルフィーナの見事な一撃が決まった。
店内で暴れんなし。
そして腹は大惨事が起きると大変だからやめよう?
ウルフはどうでもいいけど、店に迷惑をかけるのは本意でない。
「うるさいわよ……」
悪態を吐きながらカルパッチョをフォークの先でつつくシルフィーナの声音には多分な苛立ちと、指摘されたくないことを指摘された時の色が含まれていた。
……今のヨハンくんの見掛けは立派な美少年ショタだしね。
女性らしくスタイルのいいシルフィーナとヨハンくんが恋人同士と思われることはまずない。
もどかしさとやるせなさを覗かせる彼女を見てつい口を挟んだ。
「ヨハンはいい男になりますよ」
「え?」
「背だって今のアーサーと同じぐらい伸びてたし、端正な男前間違いなし。私が保証します」
微笑んで告げれば長い睫毛をパチパチと瞬かせたシルフィーナがフォークを皿においてこちらへと身を乗り出した。
「そうよね……。ミシェルはヨハンの将来の姿を知っているのよね」
髪を耳にかけながら頬をピンク色に染めたシルフィーナが「10年後の彼はどんな姿?もっと詳しく教えて」と詰め寄ってくる。
恋するツンデレ乙女なその姿はちょっと可愛かった。
あ、ちなみにパーティ内で僕だけ「司祭」って役職呼びだったけど、あの一件の謝罪のあと名前で呼んでくれるようになりました。
僕も様付けしなくていいって言って貰えたし。
心の中では前から呼び捨てだったけど……。
食事を終え、いつもより遅くなった閉店に合わせてレーネを送りがてら僕らも帰った。
帰り道の途中、何の気なしにレーネが口を開いた。
……開いてしまった。
「でもミカエルさんがあんな強かったの納得です」
「強い……?」
「ちょっ、レーネ……」
ストップをかける間もなく、にこやかな笑みを浮かべたユリアが「なんかあったの?レーネちゃん」と問いかけ…………。
「昼間ゴロツキに絡まれちゃったんですよ~」
レーネの口から零れ落ちたその一言に固まった。
間に合わなかった……。
制止が間に合わなかったその事実に片手で額を押さえる。
詳しく話を聞き出し、そして僕に刃物を向けたゴロツキたちに「そいつら殺す!」オーラを立ち昇らせる勇者サマと聖女サマ。
ある意味安定の彼らを止めるのに四苦八苦することになるのだった。
その後、一人でお出かけがますます難しくなったのは言うまでもない。
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