46 / 62
【その後】
転生司祭は休日を過ごす 6
しおりを挟む「なんで急にお店辞めちゃったんですか?みんな残念がってましたよ」
「すみません。ちょっと火急の事情があって……」
「それと髪!最初気づかなかったけど黒から薄い茶髪になってる!!」
「ああ、こっちが地毛なんです。黒いのは染めてただけだから。変ですか?」
「お似合いです!!ミカエルさん雰囲気柔らかいから今の色合いの方がしっくりきます。黒は黒で落ち着いてて似合ってましたけど」
「ありがとう」
相変わらずレーネは元気だなーと思いつつ隣を歩けば、やがて見慣れた街並みへと出た。
「ミカエルさんっ!ミカエルさんってば聞いてます?!」
「聞いてますよ」
久しぶりなこともあってかレーネからの質問やらマシンガントークが終わらない。
でもまぁ、この年頃の女の子はこんなものかも知れない。
ユリアもおしゃべりは好きだし、孤児院の子たちも一生懸命その日にあった出来事なんかを語ってくれたし。
そんなことを思っているとフル回転していたレーネの口の動きがとまり、どこかツンと唇を尖らせてこちらを見ていた。
「レーネ?」
「……誰のこと、考えてたんですか?」
自分が話しているのにと、上の空になっていたことを拗ねているのだろうか?
そんな反応も見慣れたそれで「ごめん、ごめん」と苦笑いを浮かべる。
「“あの子ら”のことですか?」
ムスッと上目遣いに覗きこんでくるレーネ。
「その片割れとその他大勢の子たちのことです」
「なんですかそれ?結局だれかわかんないし!」
「ほら、到着」
店の前についたのでレーネに先を譲る。
僕は両手塞がってるしね。是非ともドアを開けて欲しい。
カラン、とベルの音が響いた。
「いらっしゃいませー!」
活気のいいおかみさんの声が響く。
「ごめんなさーい!買い出し遅くなっちゃいました!!」
「レーネ!遅いから心配したんだよ……ってミカエルさん?!どうしたんだい一体?!」
よく通る二人の声にお客さんたちの目が一斉にこちらを向いた。
厨房からはこの店のご主人も驚いたように顔を覗かせている。
急に居なくなった手前、気まずさを覚えながらも一先ず荷物を置くのとお客さんたちに迷惑をかけないためにも店の奥へと進んだ。
「勝手に居なくなってご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
まずは謝罪。
ピシリと腰を折り、誠心誠意の謝罪を告げる。
事情があったとはいえ、お店に迷惑をかけたのは事実だし。
怒鳴られることも覚悟していたが、店主夫婦は怒るどころか何があったのかと心配してくれた。
「ミカエルさんは最近のチャラチャラした若いのと違って真面目だしな。事情があったんだってこたぁわかってらぁ」
「ちょっと旦那さん!チャラチャラした若いのって私は入ってないですよね?」
「レーネが働き者なのはわかってるよ。……いらっしゃいませー!!っと油売ってる暇はないね。昼時は大忙しなんだから。さぁアンタは早く料理を作って!!レーネもさっさとエプロンつけて接客に回りな!」
またもや響いたドアベルにおかみさんが忙しなく指示を飛ばす。
昼時の店内はほぼ満席状態だ。
「せっかくだからミカエルさんも何か食べていくかい?店内は満席なんでこっちのスペースでよければだけど。それから置いてったお給料も渡さなきゃ。落ち着くまでちょっと待っててくれるかい?」
「いえ、それはご迷惑をお掛けしたお詫びなので!」
「何言ってんだい!労働の対価なんだからいいんだよ」
「いえいえ、本当に。それより……もしよかったら私も手伝いましょうか?」
あまりの込み具合に思わずそう声をかけた。
136
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!
碧
児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

【完結】イケメン旦那と可愛い義妹をゲットして、幸せスローライフを掴むまで
トト
児童書・童話
「私も異世界転生して、私を愛してくれる家族が欲しい」
一冊の本との出会いが、平凡女子をミラクルシンデレラに変える
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる