転生司祭は逃げだしたい!!

文字の大きさ
上 下
40 / 62
【その後】

転生司祭は看病する 7

しおりを挟む


「ああ、ミュルクヴィズの地下神殿の宝箱にある魔導書か」

魔導書の名前にもちょっと憶えがある気がしてたけど、前世のゲームプレイ時だ。
確か、難易度高かった割に魔王討伐には特に必要ない魔法や武器しかGET出来ないから、今回の旅ではスルーした地下神殿にそんなのがあった筈。

思い出せてスッキリ。
中途半端に思い出せないのって気持ち悪いもんね!と晴れやかな気持ちでうんうん頷いてたらガシッと肩を掴まれた。

犯人は隣のジャンさん。

「今、何て言った?」

美形のマジ顔、ちょっと怖いです。

「ああ、ミュルクヴィズの地下神殿の宝箱にある魔導書……か……」

ガシッ、っていうかもはやグワシッ!!な肩を掴む手が両手になった。
なになに、怖いっ?!

「あんの?」

「はい?」

「魔導書。グラヴィタスの魔導書」

「えっと、はい。確かそんな名前の原書が……」

「しかも原書っ?!」

ビビる僕に気付いてか、瞳を据わらせたユリアが「ジャンさん?」とどっから出したのっ?ってくらい低っい声でジャンさんを呼び、「手っ、手を放して下さい!」という必死な表情のヨハンくんの叫びにジャンさんが慌てて離した両手をユリアに示す。

必死に無実アピールした後で、再び僕へと向き直るジャンさん。今度は勿論、肩は掴まれてない。

「もしかして……それも神託、だったり?」

「ええ……まぁ。魔王討伐に関係ないのでスルーしましたが……」

若干目を彷徨さまよわせ答える僕に向けられる驚愕の視線×3対。

「バケモンかよ」

思わず、といった感じで漏れたジャンさんの発言には断固抗議したい。
それ、僕らがいつも思ってることだからね?
一般人からしたら勇者パーティ、人外だから。

あと、人に向かってお祈り始めるヨハンくんと、僕の賛辞を繰り出すユリアの反応もどうかと思う。

「よっし!ミュルクヴィズの地下神殿、行こう!!」

いい笑顔で立ち上がるジャンさんは若干テンション可笑しい。
何気に魔導書オタクだしな。

あと薄っすら目の下に隈あるから睡眠不足でハイになってるのかも。
今夜も夜更かしするって言ってたけど、もう寝ろし。
飲みかけのジャンさんのブラックコーヒーをそっと遠ざけた。

「こんな夜中から行けるわけないでしょう。それに行くならアーサーかウルフを連れて行った方がいいですよ。あそこ、魔法不可で力技で突破しなきゃいけない罠とか結構ありましたし」

「…………………一応確認するけど……行ったこと、ないんだよな?」

「……はい」

若干目を逸らして答える。

ゲームならありますけどね……。
現実的には魔王討伐の旅以前に迷宮とか行ったことありません。

……なら、なんで内部構造知ってんだよ!って話ですよね。わかります。

「…………神託って、迷宮内部や罠や宝箱の内容まで把握出来るモノなんですね」

何処か遠い目のヨハンくんにうっと肩を竦ませる。

だから神託じゃないんだ。言えないけど……。


翌日、アーサーは無事完全復活。
そして当然のように後日ジャンさんに地下神殿に引っ張て連れて行かれて魔導書も無事GETした。

そして行ったことのない迷宮内部まで把握してる事実に、周囲に慄かれたのも後日の話。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普通じゃない世界

鳥柄ささみ
児童書・童話
リュウ、ヒナ、ヨシは同じクラスの仲良し3人組。 ヤンチャで運動神経がいいリュウに、優等生ぶってるけどおてんばなところもあるヒナ、そして成績優秀だけど運動苦手なヨシ。 もうすぐ1学期も終わるかというある日、とある噂を聞いたとヒナが教えてくれる。 その噂とは、神社の裏手にある水たまりには年中氷が張っていて、そこから異世界に行けるというもの。 それぞれ好奇心のままその氷の上に乗ると、突然氷が割れて3人は異世界へ真っ逆さまに落ちてしまったのだった。 ※カクヨムにも掲載中

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

稀代の悪女は死してなお

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

声優召喚!

白川ちさと
児童書・童話
 星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。  仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。  ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。  ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

魔法が使えない女の子

咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。 友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。 貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

処理中です...