転生司祭は逃げだしたい!!

文字の大きさ
上 下
39 / 62
【その後】

転生司祭は看病する 6

しおりを挟む


あはは、と乾いた笑いを漏らしつつ、「それ飲んだら二人も寝なさい」と会話を逸らす。

「そう言えば、さっきまで何の話をしてたんです?」

コーヒーを啜りながら問いかければ、返ってきた答えは僕らが居た村の孤児院の話。
なんでそれで二人が引きった顔するんだろう?と首を傾げた。

アーサーやユリアの衝撃エピソードでも聞いたのかな?
規格外な勇者様と聖女様だし。

でも、と懐かしい村へと想いを馳せる。
村を出てから一年ちょっとか。

「久しぶりに村や孤児院の皆とも会いたいですね」

「わたしも会いたいです。アーサーの具合がよくなったらジャンさんかシルフィーナに連れてってもらいましょう!」

ジャンさんかシルフィーナに、っていうのは転移術で連れてって貰おうって意味だ。

まともに帰ると行き帰りだけで結構な日数だからね。電車や飛行機なんて便利なものはないし。
転移術のがもっと便利だけどさ。

「別にいいけど」

「でもその前にエルフの森にも行かなきゃですね」

フィーアデルフィア様や花妖精たちにも頼まれてるしね。
あと、エルフの病は癒えた筈だけど一度ヨハンくんにちゃんと看てもらいたいし。

「エルフの森……どんなところなんでしょう?」

ちょっとほっぺを染めてソワソワしてるヨハンくん。

ある意味好きな相手の実家に招待されるわけだし緊張するよね。
シスコン気味のアルトに意地悪されないか心配だ。

会話に参加しながらもずっと手元の魔導書に視線を向けてたジャンさんが本を閉じて眉間を揉んだ。
目が疲れたっぽい。

ブラックコーヒーをずずっと啜って軽く首を振るジャンさんの手元を身を乗り出したユリアが覗きこむ。

「……グラウィタス?」

「グラィタス。語源は万有引力。重力や引力に関わる魔術に関する魔導書で、コレはその写本の一部。まぁ、実用には向かない趣味で編み出されたような魔法が多いけど、貴重だし面白いは面白いかな。重力や引力は応用出来る範囲も多いし……」

興味を示した子供組に題名が見やすいように向きを変えてあげてるジャンさん。
術の名前なのか聞き慣れない用語を幾つも出しながら説明してくれるんだけど……僕らの頭にはハテナマークがいっぱいだ。
つまり、全然わからない。

半分聞き流しつつカップの中身を減らしていると、聞いたことあるような説明が一部過った。
あれ、どこで聞いたんだっけ?と頭を傾げていると、既にジャンさんの話に興味を失ったユリアが「どうしたんですか?」と両手にカップを持ったまま問いかけてくる。

「なんか聞いたことがある気がして……」と答えつつ頭を傾げること数秒。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

転生チートがマヨビームってなんなのっ?!

児童書・童話
14歳の平凡な看板娘にいきなり“世界を救え”とか無茶ブリすぎない??しかも職業が≪聖女≫で、能力が……≪マヨビーム≫?!神託を受け、連行された神殿で≪マヨビーム≫の文字を見た途端、エマは思い出した。前世の記憶を。そして同時にブチ切れた。「マヨビームでどうやって世界を救えっていうのよ?!!」これはなんだかんだでマヨビーム(マヨビームとか言いつつ、他の調味料もだせる)を大活用しつつ、“世界を救う”旅に出たエマたちの物語。3月中は毎日更新予定!

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

勇者ぴよ

まめお
児童書・童話
普通に飼育されてた変な動物。 それがぴよ。 飼育員にある日、突然放り出されて旅に出る話。

【完結】イケメン旦那と可愛い義妹をゲットして、幸せスローライフを掴むまで

トト
児童書・童話
「私も異世界転生して、私を愛してくれる家族が欲しい」  一冊の本との出会いが、平凡女子をミラクルシンデレラに変える

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

処理中です...