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【その後】
転生司祭は看病する 6
しおりを挟むあはは、と乾いた笑いを漏らしつつ、「それ飲んだら二人も寝なさい」と会話を逸らす。
「そう言えば、さっきまで何の話をしてたんです?」
コーヒーを啜りながら問いかければ、返ってきた答えは僕らが居た村の孤児院の話。
なんでそれで二人が引き攣った顔するんだろう?と首を傾げた。
アーサーやユリアの衝撃エピソードでも聞いたのかな?
規格外な勇者様と聖女様だし。
でも、と懐かしい村へと想いを馳せる。
村を出てから一年ちょっとか。
「久しぶりに村や孤児院の皆とも会いたいですね」
「わたしも会いたいです。アーサーの具合がよくなったらジャンさんかシルフィーナに連れてってもらいましょう!」
ジャンさんかシルフィーナに、っていうのは転移術で連れてって貰おうって意味だ。
まともに帰ると行き帰りだけで結構な日数だからね。電車や飛行機なんて便利なものはないし。
転移術のがもっと便利だけどさ。
「別にいいけど」
「でもその前にエルフの森にも行かなきゃですね」
フィーアデルフィア様や花妖精たちにも頼まれてるしね。
あと、エルフの病は癒えた筈だけど一度ヨハンくんにちゃんと看てもらいたいし。
「エルフの森……どんなところなんでしょう?」
ちょっとほっぺを染めてソワソワしてるヨハンくん。
ある意味好きな相手の実家に招待されるわけだし緊張するよね。
シスコン気味のアルトに意地悪されないか心配だ。
会話に参加しながらもずっと手元の魔導書に視線を向けてたジャンさんが本を閉じて眉間を揉んだ。
目が疲れたっぽい。
ブラックコーヒーをずずっと啜って軽く首を振るジャンさんの手元を身を乗り出したユリアが覗きこむ。
「……グラウィタス?」
「グラヴィタス。語源は万有引力。重力や引力に関わる魔術に関する魔導書で、コレはその写本の一部。まぁ、実用には向かない趣味で編み出されたような魔法が多いけど、貴重だし面白いは面白いかな。重力や引力は応用出来る範囲も多いし……」
興味を示した子供組に題名が見やすいように向きを変えてあげてるジャンさん。
術の名前なのか聞き慣れない用語を幾つも出しながら説明してくれるんだけど……僕らの頭にはハテナマークがいっぱいだ。
つまり、全然わからない。
半分聞き流しつつカップの中身を減らしていると、聞いたことあるような説明が一部過った。
あれ、どこで聞いたんだっけ?と頭を傾げていると、既にジャンさんの話に興味を失ったユリアが「どうしたんですか?」と両手にカップを持ったまま問いかけてくる。
「なんか聞いたことがある気がして……」と答えつつ頭を傾げること数秒。
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