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【その後】
転生司祭は転職したい 6
しおりを挟む「実は名前を変えて飲食店で働いてたんですよね。暫くはそのまま王都に滞在する予定でしたよ。魔物の王都来襲の件もありましたし」
「おまっ……そんなことしてやがったのか」というウルフのぼやきには「俺らがマジ大変だった時に」って副音声がバッチリ。
その件に関しては本当に申し訳ない。
「そもそもどうして魔物の件を黙ってましたの?あの王を確実に捕らえる為に行動を起こさせる必要があったのはわかるけど、それにしたってわたくしたちだけには教えてたって……」
不満そうなシルフィーナの意見はもっともだ。だけど。
「確証がなかったんです。ローゼマリー様の視た未来が私が関わったことにより回避されたように、人の行動によって未来は変わり得る。王の腐った人格はそのままでしたが、状況は大きく変わっていました。いまのあの男は幾つもの村々を壊滅に追いやった元凶でもなければ、エルフとの戦争を起こした張本人でもない。本来のあの男ほど追いつめられていたわけでないのであの事件を起こさない可能性だってあったんです」
「エルフとの戦争……そういえば、さっきもそんなことを言っていたわね。どういうことなの?」
「ローゼマリー様がアルベルト様の死とアルト様が王となっている未来を視たといったでしょう?本来なら彼女はそれを義務として王に伝えた。そして王であるアルト様の姿は、再発した病に蝕まれた姿だったんです」
アルベルト様の死後、原因である聖樹はそのままだったために再び病は広がった。
そしてアルベルト様の死の真相を探り当てたアルトは……誇り高き先代の王たる父と同じ道を選びエルフを救おうとした。
絶大な存在感を誇っていた前王の死。
病に蝕まれた若き王。
それらを知った愚王は今なら勝機があるかも知れないとエルフに戦争をしかけた。
「実際には病は収束しましたし、ローゼマリー様は先読みを王に告げませんでしたけど。ローゼマリー様にはお辛い想いをさせたようですが、私たちの村の件で彼女が先読みを外したと思っていたことが幸いでした」
「……戦争……それにアルトまで……」
起きるはずだった悲惨な未来を思い描いたのか口を覆って肩を震わすシルフィーナの背中をヨハンくんがそっと撫でる。
ところで……ヨハンくんはアルベルト様たちが帰ったからシルフィーナの横へ移動してるんだ。
因みにウルフは殿下たちが座ってたソファを占領してる。
んでもって、僕らが座ってるソファが一番小さいのに何故に一番人口密度が高いのかな??不思議ー。
「ヨハンの薬のおかげでエルフの森は侵略されずにすみました。でも戦争ともなれば双方被害は免れませんし、あの王は他にも色々やらかしてましたから相当恨みを買っていたんです」
「サラっと言ってっけどとんでもねぇじゃねぇか……」
「ほんとに。ミシェル何気に世界救いまくってるし」
顔を引きつらせるウルフとジャンさん。
ゲーム知識使って誘導してるだけで実際に問題解決してくれてるのは貴方たちなんですけどね。
僕からしたらとんでもないのはみんなの方。
「まぁ、そんなこんなで状況も違いましたし、それに本来ならあの襲撃の時間枠は十年近く先なので」
「十年も?」
「だって魔王討伐の旅、本来なら十年以上かかってますし」
「「「はぁっ?!」」」
「「「ええっ?!」」」
おおぅ。めっちゃ驚いてる。
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