27 / 62
【その後】
転生司祭は転職したい 3
しおりを挟む「はぁ?ちょ、待ってミシェル。ちょっと一旦落ち着こう」
両手を前に広げてそう言うジャンさんこそ落ち着こう。
「えっ、司祭様なんで……」
「司祭様っ?!」
いや、だから司祭様言うな言うてるやーん!聞く気なしかいな!
詰め寄ってくる両サイドに何故かエセ関西弁風なツッコミが出た。
もちろん、心の中で。
「戒律破りもしてしまいましたしね」
苦笑いしつつそう告げれば、はっとした表情をしたアーサーが「でもあれは正当防衛で!」と焦り、ユリアは「それにあの場にいた人間しか見て……」と中途半端に言葉を止めた。
僕を挟んで無言で見つめ合う二人。
決意を込めた瞳で見つめ合い、強く頷いた。
「ちょっと用事を思い出したので席を外しますね」
「すぐに戻ってくるんで」
にっこり笑顔に本能的にヤバいものを感じ両手でそれぞれ二人の腕を掴んだのは長年の反射だった。
「おい、まさか……」
「駄目ですっ!!流石に一国の王子殿下たちに手を出すのは駄目ですぅ!」
片頬を引き攣らせるウルフに、ウルフがあえて濁した部分を声に出し涙目で二人を止めるヨハンくん。
「やだなぁ、ヨハンくん。大丈夫。殺るのは最終手段だよ!まずは説得!」
「俺たちにだって常識ぐらいある」
絶対その常識僕らとズレてる!!やめてー!!
何とか二人を説得し、席に着かせることに成功。だが、納得はしてないようだ。
「でも司祭様。あの場にいたのは私たちと悪い人を除けば王子様と騎士団長だけですよ。悪い人たちは死刑だろうし、あとは二人に口を噤んでもらえれば問題ないです」
問題なくない、むしろ問題しかないからね。
「そうですよ。俺たちは絶対に言いませんし、ジャンたちだって……」
わーみんなが超高速首振り人形になってるー。
あかべこみたーい。
「違うんです。戒律破りは半分言い訳で私は元々旅が終われば司祭を辞すつもりでいたんですよ」
僕の所為で国主暗殺とかシャレにならない事態を引き起こすわけにはいかないと慌てて語る。
そう、元々そのつもりだったんだよね。
まずアレだ。
根本的な問題として信仰心の問題。
元々のミシェルは敬虔な教徒だったんだろうけど……前世を思い出して前世の価値観が勝っちゃったんだよね。
信仰心がすぽーん☆って抜けちゃった。
それでも司祭としての穏やかな生活は嫌いじゃなかったし、旅に出るにあたって司祭の肩書きは有効だ。
僕の言葉を“神託”と信じてもらううえでも重要だし、社会的立場があることは旅の移動中でも何かと便利だった。
………………が、魔王討伐という大義がなされた今。
表だって大した活躍してないとはいえ、仮にも勇者パーティの一員。
立場上げられて利用されてるのが目に見えてるよね。
辺境の村でお年寄りのお手伝いしたり、孤児院管理して感謝したり慕われたりしてる分にはいいんだよ。
役に立てれば嬉しいし、やりがいもある。
だけど教会の広告塔に担ぎ上げられてその上「パッとしねぇ」って微妙な目で見られるとか、それなんて地獄……。
絶対やだ。断固拒否!!
それに司祭って基本生涯独身だし。
僕は普通に可愛い彼女が欲しい派です。
とはいえ、流石にそれらをぶっちゃける勇気はないからお茶を濁そう。
「…………と、いうわけなんです」
教会側が以前のような役割にあることを許してくれるとは思わないし、権力争いだのの道具にされるのは望まないこと。
だから旅に出るにあたって教会や孤児院は信用できる後継に託してあるし、信仰や人助けなら役職や立場がなくとも出来ます的なことを聖人君主ぶって語った。
最後ちょっと人目を気にしていい人ぶってみました。ごめんなさい。
子供組から尊敬の混じった瞳を向けられ即座に脳内土下座。
彼女欲しいとか思っててすみません。大人は汚いんだよ。
67
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
普通じゃない世界
鳥柄ささみ
児童書・童話
リュウ、ヒナ、ヨシは同じクラスの仲良し3人組。
ヤンチャで運動神経がいいリュウに、優等生ぶってるけどおてんばなところもあるヒナ、そして成績優秀だけど運動苦手なヨシ。
もうすぐ1学期も終わるかというある日、とある噂を聞いたとヒナが教えてくれる。
その噂とは、神社の裏手にある水たまりには年中氷が張っていて、そこから異世界に行けるというもの。
それぞれ好奇心のままその氷の上に乗ると、突然氷が割れて3人は異世界へ真っ逆さまに落ちてしまったのだった。
※カクヨムにも掲載中
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
魔法使いアルル
かのん
児童書・童話
今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。
これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。
だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。
孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。
ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる