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【その後】
転生司祭は転職したい 3
しおりを挟む「はぁ?ちょ、待ってミシェル。ちょっと一旦落ち着こう」
両手を前に広げてそう言うジャンさんこそ落ち着こう。
「えっ、司祭様なんで……」
「司祭様っ?!」
いや、だから司祭様言うな言うてるやーん!聞く気なしかいな!
詰め寄ってくる両サイドに何故かエセ関西弁風なツッコミが出た。
もちろん、心の中で。
「戒律破りもしてしまいましたしね」
苦笑いしつつそう告げれば、はっとした表情をしたアーサーが「でもあれは正当防衛で!」と焦り、ユリアは「それにあの場にいた人間しか見て……」と中途半端に言葉を止めた。
僕を挟んで無言で見つめ合う二人。
決意を込めた瞳で見つめ合い、強く頷いた。
「ちょっと用事を思い出したので席を外しますね」
「すぐに戻ってくるんで」
にっこり笑顔に本能的にヤバいものを感じ両手でそれぞれ二人の腕を掴んだのは長年の反射だった。
「おい、まさか……」
「駄目ですっ!!流石に一国の王子殿下たちに手を出すのは駄目ですぅ!」
片頬を引き攣らせるウルフに、ウルフがあえて濁した部分を声に出し涙目で二人を止めるヨハンくん。
「やだなぁ、ヨハンくん。大丈夫。殺るのは最終手段だよ!まずは説得!」
「俺たちにだって常識ぐらいある」
絶対その常識僕らとズレてる!!やめてー!!
何とか二人を説得し、席に着かせることに成功。だが、納得はしてないようだ。
「でも司祭様。あの場にいたのは私たちと悪い人を除けば王子様と騎士団長だけですよ。悪い人たちは死刑だろうし、あとは二人に口を噤んでもらえれば問題ないです」
問題なくない、むしろ問題しかないからね。
「そうですよ。俺たちは絶対に言いませんし、ジャンたちだって……」
わーみんなが超高速首振り人形になってるー。
あかべこみたーい。
「違うんです。戒律破りは半分言い訳で私は元々旅が終われば司祭を辞すつもりでいたんですよ」
僕の所為で国主暗殺とかシャレにならない事態を引き起こすわけにはいかないと慌てて語る。
そう、元々そのつもりだったんだよね。
まずアレだ。
根本的な問題として信仰心の問題。
元々のミシェルは敬虔な教徒だったんだろうけど……前世を思い出して前世の価値観が勝っちゃったんだよね。
信仰心がすぽーん☆って抜けちゃった。
それでも司祭としての穏やかな生活は嫌いじゃなかったし、旅に出るにあたって司祭の肩書きは有効だ。
僕の言葉を“神託”と信じてもらううえでも重要だし、社会的立場があることは旅の移動中でも何かと便利だった。
………………が、魔王討伐という大義がなされた今。
表だって大した活躍してないとはいえ、仮にも勇者パーティの一員。
立場上げられて利用されてるのが目に見えてるよね。
辺境の村でお年寄りのお手伝いしたり、孤児院管理して感謝したり慕われたりしてる分にはいいんだよ。
役に立てれば嬉しいし、やりがいもある。
だけど教会の広告塔に担ぎ上げられてその上「パッとしねぇ」って微妙な目で見られるとか、それなんて地獄……。
絶対やだ。断固拒否!!
それに司祭って基本生涯独身だし。
僕は普通に可愛い彼女が欲しい派です。
とはいえ、流石にそれらをぶっちゃける勇気はないからお茶を濁そう。
「…………と、いうわけなんです」
教会側が以前のような役割にあることを許してくれるとは思わないし、権力争いだのの道具にされるのは望まないこと。
だから旅に出るにあたって教会や孤児院は信用できる後継に託してあるし、信仰や人助けなら役職や立場がなくとも出来ます的なことを聖人君主ぶって語った。
最後ちょっと人目を気にしていい人ぶってみました。ごめんなさい。
子供組から尊敬の混じった瞳を向けられ即座に脳内土下座。
彼女欲しいとか思っててすみません。大人は汚いんだよ。
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