25 / 62
【その後】
転生司祭は転職したい 1
しおりを挟む「えっと、私……邪教の教祖様になりたいとか言いましたっけ?」
あれ、おかしいな?
もしかして僕、寝てた?
知らない間に寝落ちして意味不明の寝言でも吐き散らしてましたか??
困惑しながら躊躇いがちに視線をやれば、無表情かつ若干死んだ目で首を振ってくれる仲間たち。
だよね、よかった。
そして、疑惑を抱かせた当の本人たちはというと……。
「「邪教じゃないです!」」
声を揃えて叫んだ。
いや、邪教だよっ!!
邪教以外のなんでもないよっ?!
心の中で全力で叫び返しながら片頭痛を訴える頭を押さえた。
遡のぼること少し前。
王都を襲撃した魔物の討伐も終わり『▶ にげる 』のコマンド選択にも失敗。
勇者と聖女にサンドイッチされつつ大国の次期王やエルフ王族ファミリーに囲まれての事情聴取?的なアレも終了。
父親のやらかしで超絶多忙な王子たちは僕に謝罪を重ねながらも事後処理のためにすでに退出し、アルベルト様やアルトもエルフの森へ帰るために腰を上げた。
「……今まで、悪かった……」
あーだの、そのだの散々言い淀んだあとでぐしゃぐしゃと頭を掻きつつ視線を逸らして謝罪したアルト。
「いえ」とお得意の微笑みを浮かべて返せば、謝罪が恥ずかしかったのかキッと睨んで、だけどまた決まり悪そうに「悪い」と反省する姿は思春期の若者っぽい。
ずっとガンつけられてたこともあって、僕の中でアルトは不良系キャラなのだ。
見掛けは美形エルフだけど。
そんな素直になれない不良系エルフに「謝るならちゃんと謝れ」「誠意が感じられなーい」「ありがとうとごめんなさいは基本なのー」とご不満そうなアーサー、ユリア、花妖精たち。
逆ギレされても恐いから僕としては煽るのやめて欲しい。
アルトにしては頑張ったと思うよ。
そして不良系息子さんと我儘系娘さんの父親たるアルベルト様は雰囲気と威厳がありすぎて、謝罪も謝辞もされるこっちの方が恐縮して頭を下げたい気分になるから居た堪れないよね。
「ミシェル―、元気でねー」
「また遊びにくるっ!」
「ミシェルもきてー」
お肉♡お肉♡と謎の歌を歌いだす花妖精たちにシルフィーナが「なんですの?」と訝し気に問う。
楽しそうに歌う花妖精たちはとってもキュートなんだけど、いかんせん歌詞が謎だしね。
「お礼なのー」
「ありがとーのお礼は基本っ」
「しつれーなシルフィーナやアルトとは違うのー」
言葉足らずの花妖精たちの言葉は案の定理解されず、それでもさり気なくディスられたシルフィーナやアルトから説明を求める視線を向いた。
「エルフの森は豊かで食材も美味しいですから。彼女たちは時折お礼として小さな果実などを転移で送ってくれてたんです。訪れた際はお肉を振る舞って下さるとそういうことだと思います」
「そう」「そうなの」とコクコク頷く妖精たち。
いやー、初めて受け取った時は吃驚した。
何もない空間から急に苺がぽろぽろ降ってきたからね。
普通に恐すぎて食べれなかった。
送り主がわかってからは有り難くいただいたけど。
小さな果実や貴重な薬草メインなのは妖精たちが小っちゃいからだ。
自分の体よりあまりにも大きいものの転移は難しいらしい。
エルフの森の食材は美味しいから何気に楽しみ。
因みにエルフは草食系なイメージもあるけど、普通に肉食。
弓が得意な狩猟民族だし。そりゃ獲ったら食べるよね。
「アルトたちやみんなにイジメさせないからー」
「遊びにきてー♪」
「なっ!!大体、お前たち知っていたなら教えてくれればっ。そうすればわたくしだってあんな失礼な対応は……」
「姉上の言う通りだ」
「わーせきにんてんかー」
「大人げなーい」
シルフィーナたち花妖精たちと仲悪いの?
めっちゃ舐められまくってない?
気安さの表れなの??
「そもそも、知ってたとか知らなかったとか関係ないだろ」
「騙したわけでもなく司祭様は最初に条件告げたもんね。その時に断わらなくて、治療は受けておいてイチャモンだけつけるとかどうなの?」
アーサーとユリアもやめなさい。
突っかかってくるシルフィーナに喧嘩売るのやめてって止めてたから鬱憤たまってたのかもだけどやめて。
シルフィーナたちの為っていうか、僕の胃の平穏の為にやめて。司祭様のお願い。
「まぁまぁ、私は気にしてませんし、何より口止めしたのは私自身ですから」
大袈裟に感謝されても手柄横取りの罪悪感で胃がしくしくするだけだし。
ねっと双方を宥める。
喧嘩反対。
78
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
【完結】落ちこぼれと森の魔女。
たまこ
児童書・童話
魔力が高い家系に生まれたのに、全く魔力を持たず『落ちこぼれ』と呼ばれるルーシーは、とっても厳しいけれど世話好きな魔女、師匠と暮らすこととなる。
たまにやって来てはルーシーをからかうピーターや、甘えん坊で気まぐれな黒猫ヴァンと過ごす、温かくて優しいルーシーの毎日。
【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
昨日の敵は今日のパパ!
波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。
画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。
迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。
親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。
私、そんなの困ります!!
アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。
家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。
そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない!
アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか?
どうせなら楽しく過ごしたい!
そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
妖精の風の吹くまま~家を追われた元伯爵令嬢は行き倒れたわけあり青年貴族を拾いました~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
児童書・童話
妖精女王の逆鱗に触れた人間が妖精を見ることができなくなって久しい。
そんな中、妖精が見える「妖精に愛されし」少女エマは、仲良しの妖精アーサーとポリーとともに友人を探す旅の途中、行き倒れの青年貴族ユーインを拾う。彼は病に倒れた友人を助けるために、万能薬(パナセア)を探して旅をしているらしい。「友人のために」というユーインのことが放っておけなくなったエマは、「おいエマ、やめとけって!」というアーサーの制止を振り切り、ユーインの薬探しを手伝うことにする。昔から妖精が見えることを人から気味悪がられるエマは、ユーインにはそのことを告げなかったが、伝説の万能薬に代わる特別な妖精の秘薬があるのだ。その薬なら、ユーインの友人の病気も治せるかもしれない。エマは薬の手掛かりを持っている妖精女王に会いに行くことに決める。穏やかで優しく、そしてちょっと抜けているユーインに、次第に心惹かれていくエマ。けれども、妖精女王に会いに行った山で、ついにユーインにエマの妖精が見える体質のことを知られてしまう。
「……わたしは、妖精が見えるの」
気味悪がられることを覚悟で告げたエマに、ユーインは――
心に傷を抱える妖精が見える少女エマと、心優しくもちょっとした秘密を抱えた青年貴族ユーイン、それからにぎやかな妖精たちのラブコメディです。
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる