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【その後】
転生司祭は転職したい 1
しおりを挟む「えっと、私……邪教の教祖様になりたいとか言いましたっけ?」
あれ、おかしいな?
もしかして僕、寝てた?
知らない間に寝落ちして意味不明の寝言でも吐き散らしてましたか??
困惑しながら躊躇いがちに視線をやれば、無表情かつ若干死んだ目で首を振ってくれる仲間たち。
だよね、よかった。
そして、疑惑を抱かせた当の本人たちはというと……。
「「邪教じゃないです!」」
声を揃えて叫んだ。
いや、邪教だよっ!!
邪教以外のなんでもないよっ?!
心の中で全力で叫び返しながら片頭痛を訴える頭を押さえた。
遡のぼること少し前。
王都を襲撃した魔物の討伐も終わり『▶ にげる 』のコマンド選択にも失敗。
勇者と聖女にサンドイッチされつつ大国の次期王やエルフ王族ファミリーに囲まれての事情聴取?的なアレも終了。
父親のやらかしで超絶多忙な王子たちは僕に謝罪を重ねながらも事後処理のためにすでに退出し、アルベルト様やアルトもエルフの森へ帰るために腰を上げた。
「……今まで、悪かった……」
あーだの、そのだの散々言い淀んだあとでぐしゃぐしゃと頭を掻きつつ視線を逸らして謝罪したアルト。
「いえ」とお得意の微笑みを浮かべて返せば、謝罪が恥ずかしかったのかキッと睨んで、だけどまた決まり悪そうに「悪い」と反省する姿は思春期の若者っぽい。
ずっとガンつけられてたこともあって、僕の中でアルトは不良系キャラなのだ。
見掛けは美形エルフだけど。
そんな素直になれない不良系エルフに「謝るならちゃんと謝れ」「誠意が感じられなーい」「ありがとうとごめんなさいは基本なのー」とご不満そうなアーサー、ユリア、花妖精たち。
逆ギレされても恐いから僕としては煽るのやめて欲しい。
アルトにしては頑張ったと思うよ。
そして不良系息子さんと我儘系娘さんの父親たるアルベルト様は雰囲気と威厳がありすぎて、謝罪も謝辞もされるこっちの方が恐縮して頭を下げたい気分になるから居た堪れないよね。
「ミシェル―、元気でねー」
「また遊びにくるっ!」
「ミシェルもきてー」
お肉♡お肉♡と謎の歌を歌いだす花妖精たちにシルフィーナが「なんですの?」と訝し気に問う。
楽しそうに歌う花妖精たちはとってもキュートなんだけど、いかんせん歌詞が謎だしね。
「お礼なのー」
「ありがとーのお礼は基本っ」
「しつれーなシルフィーナやアルトとは違うのー」
言葉足らずの花妖精たちの言葉は案の定理解されず、それでもさり気なくディスられたシルフィーナやアルトから説明を求める視線を向いた。
「エルフの森は豊かで食材も美味しいですから。彼女たちは時折お礼として小さな果実などを転移で送ってくれてたんです。訪れた際はお肉を振る舞って下さるとそういうことだと思います」
「そう」「そうなの」とコクコク頷く妖精たち。
いやー、初めて受け取った時は吃驚した。
何もない空間から急に苺がぽろぽろ降ってきたからね。
普通に恐すぎて食べれなかった。
送り主がわかってからは有り難くいただいたけど。
小さな果実や貴重な薬草メインなのは妖精たちが小っちゃいからだ。
自分の体よりあまりにも大きいものの転移は難しいらしい。
エルフの森の食材は美味しいから何気に楽しみ。
因みにエルフは草食系なイメージもあるけど、普通に肉食。
弓が得意な狩猟民族だし。そりゃ獲ったら食べるよね。
「アルトたちやみんなにイジメさせないからー」
「遊びにきてー♪」
「なっ!!大体、お前たち知っていたなら教えてくれればっ。そうすればわたくしだってあんな失礼な対応は……」
「姉上の言う通りだ」
「わーせきにんてんかー」
「大人げなーい」
シルフィーナたち花妖精たちと仲悪いの?
めっちゃ舐められまくってない?
気安さの表れなの??
「そもそも、知ってたとか知らなかったとか関係ないだろ」
「騙したわけでもなく司祭様は最初に条件告げたもんね。その時に断わらなくて、治療は受けておいてイチャモンだけつけるとかどうなの?」
アーサーとユリアもやめなさい。
突っかかってくるシルフィーナに喧嘩売るのやめてって止めてたから鬱憤たまってたのかもだけどやめて。
シルフィーナたちの為っていうか、僕の胃の平穏の為にやめて。司祭様のお願い。
「まぁまぁ、私は気にしてませんし、何より口止めしたのは私自身ですから」
大袈裟に感謝されても手柄横取りの罪悪感で胃がしくしくするだけだし。
ねっと双方を宥める。
喧嘩反対。
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