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転生司祭は逃げられない 3
しおりを挟む「……ハイエルフの病、それにアルベルト様の死……」
口を覆って呆然と声を漏らしたのは王子の隣の美女。
「……私が見た未来は、外れてなかった…………?」
「未来?」
「ああ、ローゼマリー様は先読みの巫女で、病に侵されるエルフとアルト様が王である未来を見られたのですよ」
向かいの王子たちから向けられる「何でお前が知ってんだ?!」って驚愕の視線はスルー。
「つまり、お前と同じようなモンか?」
チラリとローゼマリー様を見てから向けられたウルフの質問は笑って誤魔化す。
何せ、僕のはゲーム知識。
聖職者としては詐欺師もいいとこだ。
美しい瞳からぽろりと涙が零れた。
王子が細い肩をそっと抱く。
肩を抱く王子を見つめるピンクの瞳には喜びと、そして戸惑いが浮かんでいた。そしてそれは王子たちも同様で。
涙を浮かべる美女に「どうしたんですか?」とユリアが問えば、言いにくそうに桜色の唇を開いた。
「私は、8歳の時に初めて神の啓示を受けました。その後も数年に一度、未来を見てやがて先読みの巫女と呼ばれるようになりました」
ほら、そこ。
「えっ?そんだけ??」みたいな顔して僕と見比べんな。
僕のはインチキなんだよ!!
空気読め!!
啓示とか一生に一度でもあれば凄いんだよ!
「ですが私は先読みを外し、もう私にはその力がなくなってしまったものと……」
「だが君の見た未来は違ってなかった。ハイエルフの件も、今回のことも」
切なげに見つめ合うお二人さん、自分達だけの世界作るのやめて。
そう思ったのは僕だけじゃなかったようで、若干うっとうしそうに「ならいいじゃない。どこに悲しむ必要があるのよ?」とシルフィーナ。
「その、私たち、結婚する予定なんです」
「だが、ローゼマリーが巫女としての力を失っていないとなると……」
なるほど、話が読めた。
要は純潔の乙女でなくなるってことですね。
別に聖職者が結婚出来ないわけでも、乙女じゃないといけないわけでもないんだけど、清らかじゃないと神の寵愛を受けれないイメージが根強いんだよね。
でも。
「大丈夫ですよ。ご結婚されてもローゼマリー様が先読みの巫女としてのお力を失うことはありませんから」
世間一般の男として美女の涙に弱い僕は柔らかく微笑んだ。
「風習やしきたり、伝承にはそれ相応の意味や意義もありますがそれが全てではありません。 “信仰は心に宿るもの” 。貴女が神への御心を失わなければ問題ありません。現に、私はこの国の王妃となられてなお、先読みの巫女として在られる貴女の未来を“知って”いますから」
「本、当に?」
「ええ」
おぅ。
泣き止ませようとしたのに逆に号泣させてしまった……。
「えっと、つまり」
空気をかえるようにジャンさんが声をあげる。
「王子たちは王の愚行を予見してて、ミシェルもいつも通り先を知ってたから行動したってこと?つかミシェル、先に言えし。そもそもミシェルが消えるのと今回の件、どう繋がんの?」
「…………特に繋がりませんけど」
「はぁっ?」
「いえ、こっちが「はぁっ?」なんですけど?あれは王家の世襲争いの末に王が悪あがきで起こした事件で、勇者パーティが捕まるとかそんな展開なかったですし!」
あんな展開になるとか僕も聞いてないよ!!
ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ターン。
無言の静寂がおり、時計の針だけが動いてやがて長針が頂上を指すとオルゴールの音色と共に飾り時計から出てきた人形がクルクルと踊り出した。
わー、場違い。
踊りを止めた人形が戻っていき、パタンと扉が閉ざされて再び静寂が訪れた。
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