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転生司祭は逃げられない 2
しおりを挟む「……というわけです」
花妖精たちにやたらと懐かれているのもそのためだ。
部外者がこっそり聖樹に近づくなんて無理だし、治療に当たっても色々協力してもらった。
「信じられない。その話は、本当なの……?」
「おそらく本当だろうな」
半信半疑なシルフィーナの言葉を肯定してくれたのはアルベルト様だった。
「あれが危険な病であることはわかっていた。だから私は王としてなんとかそれを喰い止めようとした。その代償が己の命であることも覚悟していた」
「アルベルト様は癒せぬ病の影響を己が身に引き受けられたのです。それでエルフたちには後遺症ともいえる青黒い痣だけしか症状がなかったのですが……」
「私自身の命はそう長くなかっただろうな。だがある日、唐突に癒えた」
「そんな……」
つまり、アルベルト様は本来、僕と同じ死にキャラだ。
回想シーンだけの登場だったけど、類まれなる美貌とエルフの王としての気高さに人気の高いキャラだった。
どっかの愚王とは大違いだ。
だけど、そんな彼が命を賭して抑え込んだ病も時を経て再び猛威を振るってしまうんだけど。
「一つ、聞きたい。何故、貴殿はこのことを黙っていた?」
それはアルベルト様がずっと疑問に思ってたこのなのだろう。
僕の動向をシルフィーナに報告させてたっていうのも、僕らの関与を確信しつつも目的が読めずに何か裏があるのかって警戒されてたのかな。
でもさー。
「警戒されるような大層な理由はないです」
いや、ほんとに。
ひらひら手を振って無実アピール。
「あえて言うなら、大仰すぎる恩を受けるのは困るというか……」
「「「はっ?」」」
「私の知る未来ではエルフの森を救った感謝からシルフィーナ様は“敬愛の誓い”を結んで魔王討伐にも同行して下さるんですよね」
「はぁっ?!じゃあその方が都合いいじゃねーか。そしたらお前だってそいつにネチネチグチグチ嫌味言われることもなかっただろ」
顎でシルフィーナを指すウルフの言葉はある意味もっともなんだけど。
「旅にはスカウトしたかったんですけど、エルフの誓いって一生ものですし。重いんですよ。第一、誓いを捧げる相手が違いますし」
「相手が違う?」
「私が聖樹とフィーアデルフィア様を癒す治療法を得たのは知っていたからです。未来でエルフの森を救うヨハンとそのレシピを。本来、それを受ける筈だったのは彼で私ではありません」
「……僕、ですか?」
自分を指さしてキョトンとするヨハンくんに頷く。
うん、君。
「でも、ヨハンは……」
「ええ、エルフの森に行ってません。あの時まだ彼は同行してませんでしたから。ですが未来では訪れるんです。そして治療法を見つける。でもそれだとアルベルト様が亡くなってしまうし、他にもいろいろと被害が出てしまう」
それは困るんだよねー。
ヨハンくん連れてけばいいじゃないかって思うかもだけど、ヨハンくんだってすぐに治療法みつけたわけじゃなければ、年だって設定時より幼いし。
「なので未来を知る私が対処したに過ぎません。シルフィーナ様を救うためにヨハンがどれほど必死にその方法を見つけたかも知っていますし、その手柄を横取りする程に人でなしではありません」
視界の端でシルフィーナとヨハンくんが頬をピンクに染めた。
うむ、ショタ感が甚だしいな。
ゲーム終了間際ではヨハンくんも青年だったから恋人として違和感なかったけど今まだ9歳だしね。
まぁ、エルフにとって数年なんてあっという間だし、脈はアリそうだから頑張れヨハンくん!
「治療法を見つけたのはヨハン。そして治療薬を生成したのもほぼユリアです。シルフィーナ様もよく仰るように私の功績ではないですし」
「わたしの功績はすべて司祭様の功績です」
ユリアはキリっとした顔で何を言ってんのかな?
君の功績は君のものです。
アーサーも「俺のもです!」とか同意しない。
真っ青になって謝罪をするシルフィーナに顔の前で軽く手を振る。
別に今のは嫌味で言ったんじゃないから。いや、ほんとに。
「ただ、その結果シルフィーナ様に同行してもらう理由がなくなってしまって、後遺症の痣を口実にあんな交渉をした次第です」
だからアルト、もう今後は睨まないでね!!
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