転生司祭は逃げだしたい!!

文字の大きさ
上 下
14 / 62

転生司祭は逃げだしたい(勇者パーティ視点)7

しおりを挟む


□ヨハン視点


すがるように祈りを捧げる。
祈りを捧げる相手は、神ではなくミシェル様。

どうかご無事で!!
あと、一刻も早く戻ってらして下さい!!

後ろ手で拘束されているため、祈りの体制は取れないけど心の中で必死に祈ります。
純粋にミシェル様が心配なのもありますが……それ以上に、世界の危機です。
冗談でもなんでもなく、魔王以上の世界の危機が迫ってます。

ユリアさんが人質に取られ、僕らはひとまず大人しくしました。
ウルフさんは隙をみて暴れる気まんまんだったようですが、なんとか抑えてもらいました。

敵に聞かれぬよう念話を使って話しかけてきたジャン様曰く、

『とりあえず今は大人しく従おう。あの程度の敵を倒すのは例え拘束されてようとわけはない。それより今はユリアとアーサーが厄介だ。足手まといどころの話じゃない』

魔王を倒した勇者様と聖女様をまさかの足手まとい発言です……。

『一先ず、ミシェルと合流したい。万が一、ミシェルが本当に囚われてるなら下手な抵抗はしないほうがいいし、もし嘘でもこの状況ならあいつらは必死にミシェルを探すだろう。とにかく、ミシェルと会えさえすればすべて解決する』

そう、ミシェル様さえご無事で対面できればすべて解決するんです。

ご本人のご無事さえわかれば、アーサーさんとユリアさんが復活します。
そうなれば城中の人間が、いえ、世界中の人間が束になったって敵いません。

大人しく拘束を受けながら、ジャン様が恐いぐらいに真剣な声で王様たちに告げました。

「一刻も早く、ミシェルと会わせろ。無事を確認してからでないとそちらの要求を聞き入れるつもりはない。いいか?くれぐれも丁重に扱え。傷一つつけるなよ?」

そして僕らも、重々しくそれに頷きました。
アーサーさんとユリアさんは軽く殺気が混じってました。

万が一、ミシェル様を傷つけたら……多分、この国は滅びます。

冗談でも大袈裟でもなんでもないです。
ただの事実です。


ミシェル様は、何気に物凄い方です。

どんな高位の神殿関係者の方でも、あの方ほど多く神のお言葉をたまわる方を僕は知りません。
神の御寵愛の深さに畏敬を抱かずにはいられません。
宗派が異なると相容れない方たちもいらっしゃいますが、ミシェル様は神官である僕にもとても優しく接して下さいました。

正直、旅のメンバーの中でミシェル様が一番話しやすいです。
みなさん凄い方達ばかりで気後れしていた最年少の僕を色々気遣って下さったのもミシェル様です。……ミシェル様が頭を撫でてくださったりするたびに、その背後から無言で突き刺さる視線が恐かったですが。

そう、ミシェル様へ深い愛情を向けてるのは神だけではありません。
アーサーさんとユリアさんもです。

旅の途中もまざまざと感じたそれを一番痛感したのは魔王城でのこと。

あろうことか、魔王はミシェル様を侮辱しました。

結果、
ブチ切れたアーサーさんとユリアさんによって魔王は滅ぼされました。

旅の目的は魔王討伐でしたが、あの時は完全に私怨でした。
リンチでした。

魔王が滂沱の涙を流しながら必死に謝罪する光景はどっちが魔王かわからないぐらい怖かったし、正直、僕ら要らなかったです。
震えながら見てることしか出来ませんでした。

なので魔王討伐の瞬間については聞かれるたびに「大変でした」と苦笑いでお茶を濁します。

本当に大変でした。
主にミシェル様に荒ぶるアーサーさんとユリアさんを宥めて頂くのがですが……。

別の部屋に囚われてるユリアさんの状況はわかりませんが、狂気を帯びた瞳のアーサーさんが非常に気がかりです。
恐らく、ユリアさんも同様の状況だと思われます……。

僕、聞いたことあります。

これ、たぶん「闇堕ち寸前」ってやつです。

「…司祭様……司祭様になにかあったら…………世界を滅ぼそう……」

すごく物騒な呟きは……空耳ですよね?
空耳であって下さい!!


ミシェル様ーー!!どうか、ご無事で!!
世界の運命はミシェル様にかかってます!!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

【1章完】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

転生したら悪役令嬢が既に聖女扱いされていたのでスローライフを楽しみます。

篠原愛紀
児童書・童話
後で記入 表紙/篠崎ケイ(心喜)様

【完結】落ちこぼれと森の魔女。

たまこ
児童書・童話
魔力が高い家系に生まれたのに、全く魔力を持たず『落ちこぼれ』と呼ばれるルーシーは、とっても厳しいけれど世話好きな魔女、師匠と暮らすこととなる。  たまにやって来てはルーシーをからかうピーターや、甘えん坊で気まぐれな黒猫ヴァンと過ごす、温かくて優しいルーシーの毎日。

森の小さな千年記 ポンポン・トゥルポン・あらカルト 比類無き者達との出会い

Pyxis
絵本
あらすじ  数千年に一度(2000年周期?)目覚めると言われる精霊達の目覚めがある年の早春に起こる。 時を同じくして月の番人であるかぐや姫達の活動も少しづつ活発化されて行く。  かぐや姫は使いの者として鶴亀と亀鶴と言う文字通り鶴と亀のキメラを地球に眠る精霊達の一部族を目覚めさせる為に飛ばした。  現在月の力は弱まり(昔の様に頻繁な交流がなく地球との往来が少なくなっている為)伝令・伝達すらもままならない状況にあった。  かぐや姫にはお世話役として兎の精霊(月の住人)ウサ・ポンが身の回りの世話をやいていた。 かぐや姫はウサ・ポンの作る月見団子がとても好物でそれを食べる事が何よりの楽しみであった♪  一方月より地球に飛び立った鶴亀&亀鶴は予想だにしない人物に出会うのである・・・(かぐや姫の姿をした影の存在)  その陰の存在に洗脳された鶴亀&亀鶴は2000年の間眠りについていたハニワの精霊達の親玉ハニワンを呼び起こすのであった。  ハニワンは影の存在の意のままに動く命のベルトを着けられ手下のチビ達を従えて地球の転覆を謀る活動を繰り返そうとしていたのである。  ハニワン達を呼び起こした鶴亀&亀鶴は月に帰るためのエネルギーを蓄える為に少しの間休眠を取ることにした。(月から地球までの片道だけでもかなりのエネルギーを使う為)  その一方では目覚まし年計と言う目覚まし時計(1000年単位の目覚ましw以降千年計と呼ぶ)の寝坊?に因って18年もの遅れをしつつ比類無きハーブの精霊を呼び覚ますのであった♪  約2000年の眠りから覚めたトゥルシーの精霊トゥル・ポンは突然の騒音に驚き目覚まし千年計を必殺技で焦げ焦げの状態にしてしまうのであるが・・・とってもタフな千年計は即座にバージョンアップをするのであったww  そんなこんなで新たな2000年紀が始まろうとしていたのであった。(ホントかいw)

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

処理中です...