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転生司祭は逃げだしたい(勇者パーティ視点)7
しおりを挟む□ヨハン視点
縋るように祈りを捧げる。
祈りを捧げる相手は、神ではなくミシェル様。
どうかご無事で!!
あと、一刻も早く戻ってらして下さい!!
後ろ手で拘束されているため、祈りの体制は取れないけど心の中で必死に祈ります。
純粋にミシェル様が心配なのもありますが……それ以上に、世界の危機です。
冗談でもなんでもなく、魔王以上の世界の危機が迫ってます。
ユリアさんが人質に取られ、僕らはひとまず大人しくしました。
ウルフさんは隙をみて暴れる気まんまんだったようですが、なんとか抑えてもらいました。
敵に聞かれぬよう念話を使って話しかけてきたジャン様曰く、
『とりあえず今は大人しく従おう。あの程度の敵を倒すのは例え拘束されてようとわけはない。それより今はユリアとアーサーが厄介だ。足手まといどころの話じゃない』
魔王を倒した勇者様と聖女様をまさかの足手まとい発言です……。
『一先ず、ミシェルと合流したい。万が一、ミシェルが本当に囚われてるなら下手な抵抗はしないほうがいいし、もし嘘でもこの状況ならあいつらは必死にミシェルを探すだろう。とにかく、ミシェルと会えさえすればすべて解決する』
そう、ミシェル様さえご無事で対面できればすべて解決するんです。
ご本人のご無事さえわかれば、アーサーさんとユリアさんが復活します。
そうなれば城中の人間が、いえ、世界中の人間が束になったって敵いません。
大人しく拘束を受けながら、ジャン様が恐いぐらいに真剣な声で王様たちに告げました。
「一刻も早く、ミシェルと会わせろ。無事を確認してからでないとそちらの要求を聞き入れるつもりはない。いいか?くれぐれも丁重に扱え。傷一つつけるなよ?」
そして僕らも、重々しくそれに頷きました。
アーサーさんとユリアさんは軽く殺気が混じってました。
万が一、ミシェル様を傷つけたら……多分、この国は滅びます。
冗談でも大袈裟でもなんでもないです。
ただの事実です。
ミシェル様は、何気に物凄い方です。
どんな高位の神殿関係者の方でも、あの方ほど多く神のお言葉を賜る方を僕は知りません。
神の御寵愛の深さに畏敬を抱かずにはいられません。
宗派が異なると相容れない方たちもいらっしゃいますが、ミシェル様は神官である僕にもとても優しく接して下さいました。
正直、旅のメンバーの中でミシェル様が一番話しやすいです。
みなさん凄い方達ばかりで気後れしていた最年少の僕を色々気遣って下さったのもミシェル様です。……ミシェル様が頭を撫でてくださったりするたびに、その背後から無言で突き刺さる視線が恐かったですが。
そう、ミシェル様へ深い愛情を向けてるのは神だけではありません。
アーサーさんとユリアさんもです。
旅の途中もまざまざと感じたそれを一番痛感したのは魔王城でのこと。
あろうことか、魔王はミシェル様を侮辱しました。
結果、
ブチ切れたアーサーさんとユリアさんによって魔王は滅ぼされました。
旅の目的は魔王討伐でしたが、あの時は完全に私怨でした。
リンチでした。
魔王が滂沱の涙を流しながら必死に謝罪する光景はどっちが魔王かわからないぐらい怖かったし、正直、僕ら要らなかったです。
震えながら見てることしか出来ませんでした。
なので魔王討伐の瞬間については聞かれるたびに「大変でした」と苦笑いでお茶を濁します。
本当に大変でした。
主にミシェル様に荒ぶるアーサーさんとユリアさんを宥めて頂くのがですが……。
別の部屋に囚われてるユリアさんの状況はわかりませんが、狂気を帯びた瞳のアーサーさんが非常に気がかりです。
恐らく、ユリアさんも同様の状況だと思われます……。
僕、聞いたことあります。
これ、たぶん「闇堕ち寸前」ってやつです。
「…司祭様……司祭様になにかあったら…………世界を滅ぼそう……」
すごく物騒な呟きは……空耳ですよね?
空耳であって下さい!!
ミシェル様ーー!!どうか、ご無事で!!
世界の運命はミシェル様にかかってます!!
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