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転生司祭は逃げだしたい(勇者パーティ視点)4
しおりを挟む□ユリア視点
「司祭様、司祭様、司祭様……」
薄ら寒い部屋に声が虚しく木霊する。
何度呼んでもいつもみたいに「どうしました?」と優しく司祭様が頭を撫でてくれない。
だからまた、じわっと涙が滲んだ。
あれから何日すぎただろう?
司祭様が居ないから、時間も、日付の感覚もわからない。
シルフィーナの契約してる精霊の魔法で痕跡を探した。
そして見えたのは……。
優しい言葉をかけてくれた城の人達の私たちとは違う司祭様への対応。
怒りで頭が真っ白になってアーサーと暴れようとしたけれど、みんなに止められたのと、司祭様を探す方が優先だからなんとか抑えた。
さらに痕跡を辿って、司祭様の部屋で見た映像。
すごく苦しそうで辛そうに横たわる司祭様の姿にガタガタと体が震えた。
なんで、どうして??
ちょっと体調が優れないだけじゃなかったの?
もしかして…………そんなに凄く具合が悪いの??
わたしたちでも簡単に治せないぐらい?
だから優しい司祭様は何も言わなかったの?
ずっと?いつから?
「やだ、やだ、やだやだ、司祭様っ……」
考えれば考えるほど不安と恐怖が心を包んで、ぎゅっと子供みたいに自分の体を抱きしめる。
親からも要らないっていわれたわたしなんて、誰も必要としないと思ってた。
だけど、必要とされたかったから……だからいつもにこにこ笑ってた。
はじめは誰も信じられなかったけど、孤児院のみんなは優しかった。
アーサーと出会って、アーサーはわたしとおんなじだって、そう、思った。
そして司祭様は、わたしとアーサーにとって“特別”だった。
司祭様はよく言ってた。
人には“光”が必要だって。
それは“神様”だったり、“夢”や“信念”、“希望”や“大事な誰か”だったり色々だけど、人は弱いから、だからそういう“光”が必要なんだって。
そしてわたしやアーサーは多くの人の“光”だって、そう言ってくれた。
別に大勢になんと思われようとどうだってよかったけど、司祭様がわたしたちを「誇りだ」って言ってくれるのは凄く嬉しかった。
人に“光”が必要で、それがあるから人は正しく生きていけるというのなら、
司祭様はわたしとアーサーの“光”そのもの。
お手伝いしたのだって、魔王討伐の旅を頑張ったのだって、全部司祭様に褒めて貰いたかったからだし、優しさも大事なことも全部司祭様が教えてくれた。
旅だって、全然辛くなんてなかった。
眠れない夜は司祭様が温かい飲み物をくれて寝るまで話を聞いてくれたし、落ち込んでる時は咲いてた綺麗な花を摘んでくれた。
一緒なら、怖いことも、辛いことも全部全部平気だった。
なのにっ……司祭様が、ここには居ない。
「……しさい、さまぁ……」
溢れる涙もそのままに両手を組んで祈る。
どうか神様、お願いです。
司祭様を守って……。
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