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転生司祭は逃げだしたい(勇者パーティ視点)3
しおりを挟む□シルフィーナ視点
ソファの上に胎児のように身を丸めたその表情は苦し気で、
淡く霞んだ映像はそこで途切れた。
それは精霊魔法により読み取ったモノに宿る記憶の欠片。
飲み干していたクリスタルの瓶の中身は何らかの薬剤ね。
司祭の顔色は酷く悪く、固く瞼を閉じた姿は痛々しい。
そしてその映像を見てしまったアーサーとユリアの顔色は白を通り越して蒼い。
魔王にさえ怯まない勇者と聖女が何てザマですの?
まぁ、無理もありませんけど。
「ユリア、ヨハン、司祭様が飲んでたのは?」
「わかんない。司祭様のお手製だと思う」
「ずっとお具合が悪かったのでしょうか?でもミシェル様ご自身も回復はお得意の筈なのに」
「まさか……特別な病気っ?」
悪い方、悪い方へと想像を膨らませる子供たちをジャンが宥めるも効果は薄い。
でも確かに、あの司祭自身もそれなりに回復術は使えるし、何よりユリアかヨハンに頼めば大抵の不調なら何とかなる筈なのに。
ジャンに一言かけて、部屋を出た。
「居なくなった?」
「はい、理由は不明ですわ」
対話の相手はここには居ないお父様。
王であるお父様からはエルフの森を出るときにまめに報告を入れるよう仰せつかっていた。
特にあの司祭のことを気にかけておられるよう。
「また進展があれば連絡をしろ」
「はい、お父様」
通信を終え、部屋には静寂が戻った。
本当に、あの司祭は何を考えているのかわからない。
丁寧な別れの言葉が綴られた手紙に視線を落とした。
いつも浮かべてる微笑みと同様に柔らかな印象の文字で綴られたわたくしの名前。
最初は大嫌いだったし軽蔑していた。
突如、集落を尋ねてきたあの男は治療の提案をしてきた。
丁度その頃、エルフの森では数人の腕や脚、顔や肩などに青黒い痣のようなものが浮かびあがり原因も解決方も見つかっていなかった。
治療の対価としてつけられた交換条件がわたくしの旅の同行。
対価を求められるのは当然のことかも知れない。
だけどあの時のわたくしは足元を見られて人間ごときに交換条件をつけられた不満も、聖職者のくせにという思いもあった。
実際に治療に大きく関わったのがユリアだったのも大きい。
ユリアが従順なのをいいことに、自分が治すわけでもないのに不当な要求をつきつけてきた愚かで浅ましい人間。
それが最初の評価だった。
だけどそれなりな期間一緒に旅を続けていれば流石にわかる。
わたくしが嫌味を言っても反論もせずに申し訳なさそうな顔をするばかりだった彼にとっても、あれが本意でなかったことぐらい。
信じられないぐらいお人好しで過保護。
きっと、仕方なかったのだ。
魔王討伐の旅にはわたくしが必要で、それを予知していた彼にはそうするしかなかった。
そしてそれだって決して自分のためじゃなかった。
だから、少しは 見直していたのに。
このわたくしが、認めはじめてあげたというのに……。
「一体どこに行きましたのっ?!」
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