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転生司祭は逃げだしたい(勇者パーティ視点)2
しおりを挟む□ジャン視点
お元気で、じゃないし。思わず手に力が入り、手紙の端がぐしゃりと潰れた。
目の前には泣き喚くユリアと荒ぶるアーサー。
だが、これでも少しは落ち着いた方だ。
取り乱した勇者と聖女が駆け回っているという噂を耳にしてすぐ目にした二人は、はっきり言って半狂乱だった。取り押さえようとしたウルフが殴られ、派手な乱闘が始まりかけた。
精神異常といってもいい取り乱しように思わずヨハンに状態異常の無効化を試してもらったぐらいだ。
無駄だったが。
希代の聖女であるユリアに並みの術者の状態異常が効くわけもないし、外部攻撃でないことは予想してたけど。
なにより、
「司祭様」「司祭様」と呟き続ける彼らの不調の原因など直ぐ知れた。
そもそも、二人をこんな状況に追いやれる人物など一人しかいない。
なんとか落ち着かせ、話を聞く為に部屋へ戻って、ミシェルが居なくなったことを聞き、自分宛にもあった置手紙に目を通した。
丁寧な字で書かれた丁寧な文章にはこれまでの礼や今後の活躍を期待しています的な当たり障りのない文章ばかりで肝心の居なくなった理由は書かれていない。他のみんなも概ね同様。
輝かしい『勇者』と『聖女』の面影なんて見えないぐらいに廃人のように生気を欠いた二人の姿にくしゃりと髪を掻き上げる。
正直、意外でもなんでもない。
アーサーとユリアがどれだけミシェルに依存しているかは旅をしてる時からわかってた。
はじめの印象は素直な子たちとその保護者。
溌剌とした気持ちのいい若者のアーサーと、優しく屈託のないユリアだがそれだけが二人の本質ではない。
人懐っこいようで排他的、特にミシェルに危害を加える者には容赦がない。
ぶっちゃけ、こわい。
ミシェルの前ではにこにこ、ぶんぶん、飼い主に褒めて貰って尻尾を振り回すわんことにゃんこみたいな二人が豹変する様は二重人格か?って疑うぐらい極端だ。
正直、保護者でしかないミシェルには能力的にみても旅のメンバーから外れて貰った方がいいんじゃないかと最初は思ってた。
だけどそんな馬鹿げた提案をしなくて良かったと心底思う。
個性豊かすぎるパーティを纏めるのに保護者は不可欠。
ウルフは脳筋だし、シルフィーナはわがままなとこがある。ヨハンは概ねいい子だが、子供の扱いは苦手だ。
ミシェルが居なかったら自分が保護者兼まとめ役を一人で担わないといけなかったと思うと心底ぞっとする。
マジで居てくれて良かった!!
あと何気に能力も凄かった。
なんなの、ミシェル?どんだけ神に愛されてんの?ってぐらい神託の数がヤバい。
最初は胡散臭く思ってたけど、あんだけぽんぽん当てられると信じざるを得ないわ。引くほど当たるし。
マジでどこ行ったんだよ……。
お前大好きっ子たちがギャン泣きしてるぞー、保護者さん。
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