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転生司祭は逃げだしたい 6
しおりを挟む紫がかった水晶のようなそれが割れると同時に、酷く耳障りな音が教会を包む。
強烈な異音に騎士達が礼拝堂内に雪崩れ込み、視線は歪な笑いを浮かべる王へと向かった。
ジャンさんの生み出した氷の結晶で縫い留めるように拘束された王はその状態にも関わらず、狂ったように笑った。
「わしは捕まらんぞ!!」
いや、既にめっちゃ捕まってますけど?
走り寄った騎士数名に取り押さえられる王を見て心の中で突っ込む。
「あーはっはっは!!こうなったら、全て道連れだ!!!
あと数十分もしてみろっ!!それにつられて大勢の魔族たちがここへ攻め込んでくるだろう!!もう誰にも止められん!!絶望に咽びなくといいわっ!!!」
「貴方という人は……一体、どこまでっ……!!」
典型的な悪役っぷりを披露する父親に対し、息子である王子は苦悩も露わに歯噛みするものの浮かぶ驚きは存外少ない。
「緊急事態発動!すぐに持ち場につけ!!」
キビキビと的確な指示を出していく王子を尻目に僕は「やっぱ知ってたんだな」と思いつつ、アーサーたちへと近づく。
「いま拘束を解くから待ってて。ああ、可哀想に痛いだろう」
手を翳してぐるぐる巻き状態の拘束を破壊する。
痛々しく腫れた右頬に手を添え癒しを施せばあっと言う間にイケメン復活。
頬をそっと撫でて傷の治りを確認していたらギュっと逞しい腕に抱き込まれた。
ちょ、苦しい。
しかもそこにジャンさんに同様に拘束を解いて貰ったユリアまで泣きながら抱き着いてきたものだから、僕は尻餅をつくことになった。
「司祭様っ、お怪我はありませんか?!」
「痛いとことか苦しいとこはっ??」
突如全身が神々しい光に包まれたのはユリアの回復魔法だろう。
光の強さからも最高出力だろうそれに「もったいないっ!」と思ってる間にもアーサーに全身をペタペタと触られる。
無事を伝えてから「それより」と二人へ向き合った。
「これから魔族が攻めてきます。ユリア、結界の発動を。位置的にも正門のある北門が一番狙われるでしょうからアーサーとジャンは北門へ。ユリアも補助を頼みます。シルフィーナ様とヨハンは西門へ。私とウルフは東門へ向かいます」
「わたし、司祭様と一緒に行きますっ!」
「俺もっ!!」
駄々をこねられたが何とか二人を説得した。
めちゃくちゃ渋られた。
「ウルフ……司祭様に怪我させたり逃がしたりしたら、殺すぞ」
「ひっ!」
アーサー、それ勇者がしちゃ駄目な顔。
見て、ウルフの尻尾が股に挟まっちゃってんじゃん。
「司祭様、何処にもいかないでくださいね?」
袖を掴んで涙目+上目遣いで覗きこんでくるユリアの肩越しにめっちゃウルフがブンブン首縦にふってるよ。
超必死だな。
「逃げんなよ、ぜってー、逃げんなよ!!!」
「そうだよ、ミシェル。あの後、すっごく大変だったんだから」
ジャンさんの言葉に頷くシルフィーナとヨハンくん。
ヨハンくんとか涙目だしね。
何があったのさ?
聞きたいような怖いような……。
「住民の避難とかはどうするの?討ち漏らしの対処や飛空してくる魔族の対処も必要ですわよ」
「それは問題ないですよ。騎士団が対応して下さいますし、事態に備えて魔術師も配備してある筈ですから。ですよね?王子殿下」
「!!……あ、ああ」
驚愕に目を見張った王子が「何故それを?」と問いかけてくるが、時間がないのでまたあとで。
今は魔族の対応が第一だ。
…………ってことで。
あっさり終わった魔族退治。
もうね、ほんとあっさり、さっくり解決しました。
そりゃー奴らのボス、一番強い筈の魔王と腹心たちをサクッと倒しちゃった勇者ご一行だもの。その辺の雑魚が相手になるわけないよね。
はい、解決ー!!お疲れ様でしたー!!解散!!
…………ってなるわけもなく、どうなったかというと。
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