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転生司祭は逃げだしたい 5
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「司祭殿からも勇者殿に頼んでは頂けませんか。この者はきっと魔族に誑かされているのです。親として王として、わしは辛くとも責任をとらなければ」
全然、辛そうじゃないけどね。
ただ自分の立場を脅かされるのが嫌なだけでしょ、という言葉は呑みこむ。
「そうすれば助けて頂けるのですか?」
代わりに出た言葉に王の瞳が輝き、王子たちの瞳には侮蔑が宿る。
その視線を避けるように軽く首を竦ませた。
「ですが、そもそもこの状況では現実的に無理なのでは?」
そういって拘束された身を示す。
「貴方方が言うことを聞いて下さるなら拘束は解きましょう。ああ、ですが。この空間には特殊な術式が用いられています。魔法は使えませんので無駄な真似はなさらない方が良いでしょう」
視線で示された僕のすぐそばに立つひょろりとした男にビンゴ、と心の中で呟いた。
術者は多分こいつだろーな、って思ってたんだよね。
やせて顔色の悪い男はいかにも術者然としてたし、ずっと僕の側にいるのもアーサーたちや騎士団長の近くだと危険だと判断してかなって思ってた。
「わかってますよ。そうでなければジャンたちがただ囚われているわけがありませんから」
「ご慧眼ですな」
はっはっ、と機嫌よさげに笑う王に僕は眉を下げる。
「ひとまず、ユリアに剣を突きつけている男性を退けては頂けませんか?彼女は首輪もつけている。危険性はないでしょう?か弱い少女にあのような扱いはあまりに惨い」
ぼたぼたと涙を流したままのユリアの姿を見て、王はあっさりと男に剣を収めて退くように命じた。
完全優位の余裕だろう。
「ありがとうございます」
「いいえ。さぁ、今度はそちらが願いを叶えて下さい」
困った顔をして、僕はよろよろと立ち上がった。
王子の顔を見て「申し訳ありません」と告げた僕はゆっくりとアーサーたちへと向き直る。
「アーサー、ユリアを」
「守りなさい」とは言葉にせずとも伝わっただろう。
僕を担いできた大柄な男に思いっきり回し蹴りを叩き込む。
その勢いと共に跳び上がり、自らの両足で相手の頭部を挟み込んでそのままバク宙のような形で回転しつつ、大男を思いっきり放り投げた。
プレレス技のフランケンシュタイナーの派生技みたいな感じかな?
フランケンシュタイナーと違って下へ向かってじゃなくて、相手を王のそばの男たちに向かって投げたから巻き込まれた男たちがバッタバタと倒れる。
そのまま素早く剣を持った男の懐に潜り込んで当て身を加えて剣を奪い、ついでに王子を突き飛ばした。
王子は騎士団長がキャッチしたし問題なし。
巻き込まれると危ないから騎士団長から離れないでね。
因みに、手首の縄は袖口に仕込んだ石のナイフで切断済み。
非常に有り難いっちゃ有り難いんだけど……僕だけ拘束が縄って舐められすぎじゃない??
アーサーたちとの差……。
「な、なにを……。司祭が剣など……」
「だから?」
ガタガタ震える男を前に冷ややかに首を傾げる。
手にした剣を振り下ろした。
血の飛沫を浴びながら、剣の柄を握り直す。
倒れ伏した痩躯の男の背にその切っ先を。
「司祭が剣を使えない?ただの戒律でしょう?
人を殺してはいけない、傷つけてはいけない。法を破り、人としての道に背く貴方たちが何を仰るのです?笑わせる」
術者の男が血を吐き、場に満ちる術が切れた。
これでジャンさんたちも大丈夫だろう。
残りの残党たちが怯みながらも武器を振り上げようとするが、右手を軽く上げるだけで終わらせた。
ぐっと苦し気に首を押さえ、やがてドサドサと膝をつく男たち。
「先程のお言葉をお返ししましょう。
あまり、無駄な真似はなさらないで頂けますか?無益な殺生は好みませんので」
そりゃあ僕は地味司祭ですけどね?
これでも勇者パーティとして魔王討伐の旅に加わってたからね?
それなりに体力だってあればレベルだって積んでるんだ。
それに聖魔法以外の火力の高い攻撃魔法は苦手だけど、知識チート舐めないで欲しいな。
魔族ならともかく、人間なんてちょっと結界応用した膜で顔付近覆えば息出来ないし楽勝だけど?
要はあれだ。
マジモンチートと比べんな!!!
そこいらの奴とだったら僕の方が全然強いつーの!!
「なっ、ななな……!」
恐慌をきたし、言葉にならない音を紡いだ王が次の瞬間、手にしたナニかを床へと投げつけた。
全然、辛そうじゃないけどね。
ただ自分の立場を脅かされるのが嫌なだけでしょ、という言葉は呑みこむ。
「そうすれば助けて頂けるのですか?」
代わりに出た言葉に王の瞳が輝き、王子たちの瞳には侮蔑が宿る。
その視線を避けるように軽く首を竦ませた。
「ですが、そもそもこの状況では現実的に無理なのでは?」
そういって拘束された身を示す。
「貴方方が言うことを聞いて下さるなら拘束は解きましょう。ああ、ですが。この空間には特殊な術式が用いられています。魔法は使えませんので無駄な真似はなさらない方が良いでしょう」
視線で示された僕のすぐそばに立つひょろりとした男にビンゴ、と心の中で呟いた。
術者は多分こいつだろーな、って思ってたんだよね。
やせて顔色の悪い男はいかにも術者然としてたし、ずっと僕の側にいるのもアーサーたちや騎士団長の近くだと危険だと判断してかなって思ってた。
「わかってますよ。そうでなければジャンたちがただ囚われているわけがありませんから」
「ご慧眼ですな」
はっはっ、と機嫌よさげに笑う王に僕は眉を下げる。
「ひとまず、ユリアに剣を突きつけている男性を退けては頂けませんか?彼女は首輪もつけている。危険性はないでしょう?か弱い少女にあのような扱いはあまりに惨い」
ぼたぼたと涙を流したままのユリアの姿を見て、王はあっさりと男に剣を収めて退くように命じた。
完全優位の余裕だろう。
「ありがとうございます」
「いいえ。さぁ、今度はそちらが願いを叶えて下さい」
困った顔をして、僕はよろよろと立ち上がった。
王子の顔を見て「申し訳ありません」と告げた僕はゆっくりとアーサーたちへと向き直る。
「アーサー、ユリアを」
「守りなさい」とは言葉にせずとも伝わっただろう。
僕を担いできた大柄な男に思いっきり回し蹴りを叩き込む。
その勢いと共に跳び上がり、自らの両足で相手の頭部を挟み込んでそのままバク宙のような形で回転しつつ、大男を思いっきり放り投げた。
プレレス技のフランケンシュタイナーの派生技みたいな感じかな?
フランケンシュタイナーと違って下へ向かってじゃなくて、相手を王のそばの男たちに向かって投げたから巻き込まれた男たちがバッタバタと倒れる。
そのまま素早く剣を持った男の懐に潜り込んで当て身を加えて剣を奪い、ついでに王子を突き飛ばした。
王子は騎士団長がキャッチしたし問題なし。
巻き込まれると危ないから騎士団長から離れないでね。
因みに、手首の縄は袖口に仕込んだ石のナイフで切断済み。
非常に有り難いっちゃ有り難いんだけど……僕だけ拘束が縄って舐められすぎじゃない??
アーサーたちとの差……。
「な、なにを……。司祭が剣など……」
「だから?」
ガタガタ震える男を前に冷ややかに首を傾げる。
手にした剣を振り下ろした。
血の飛沫を浴びながら、剣の柄を握り直す。
倒れ伏した痩躯の男の背にその切っ先を。
「司祭が剣を使えない?ただの戒律でしょう?
人を殺してはいけない、傷つけてはいけない。法を破り、人としての道に背く貴方たちが何を仰るのです?笑わせる」
術者の男が血を吐き、場に満ちる術が切れた。
これでジャンさんたちも大丈夫だろう。
残りの残党たちが怯みながらも武器を振り上げようとするが、右手を軽く上げるだけで終わらせた。
ぐっと苦し気に首を押さえ、やがてドサドサと膝をつく男たち。
「先程のお言葉をお返ししましょう。
あまり、無駄な真似はなさらないで頂けますか?無益な殺生は好みませんので」
そりゃあ僕は地味司祭ですけどね?
これでも勇者パーティとして魔王討伐の旅に加わってたからね?
それなりに体力だってあればレベルだって積んでるんだ。
それに聖魔法以外の火力の高い攻撃魔法は苦手だけど、知識チート舐めないで欲しいな。
魔族ならともかく、人間なんてちょっと結界応用した膜で顔付近覆えば息出来ないし楽勝だけど?
要はあれだ。
マジモンチートと比べんな!!!
そこいらの奴とだったら僕の方が全然強いつーの!!
「なっ、ななな……!」
恐慌をきたし、言葉にならない音を紡いだ王が次の瞬間、手にしたナニかを床へと投げつけた。
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