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転生司祭は逃げだしたい 4
しおりを挟む目隠しの所為で何も見えない。
正確に言うならば、目隠しっていうかズタ袋みたいなのを頭から被せられて、しかも両手を後ろ手で縛られている。
荷物みたいに担がれて振動がお腹に地味にダメージだ。
ドサッと乱雑に床に落とされたので、どうやら目的地到着らしい。
「「司祭様っっ!!」
悲痛な声が僕を呼ぶ。
「動くなっ!」
怒鳴り声と、人を殴るような音。
その音に、危うくブチ切れそうになった。
乱雑にズタ袋を剝ぎ取られ、取り戻した視界には懐かしい面々。
僕の縄とは違い、頑丈そうな鉄球のおもりまでついた手枷、足枷に胴体に巻き付いた鎖と完全拘束なアーサーと獣人のウルフ。
一見、豪奢な首飾りにも見えるユリアの首に光る黄金に真紅の宝石の光る輪はマダムの言っていた魔力封じの首輪だろう。座り込んだ彼女の首には剣が突き付けれており、ハイエルフのシルフィーナ、魔導師のジャンさん、神官のヨハンくんも後ろ手に拘束されていた。
「一体、何をやってるんです……?」
怒りが一周まわって、呆れた声しか出ない。
どんな状態だよ、ほんと。
「誰のせいだと思ってんだ、誰のっ!!全部おまえのせいだろうがっ!!」
「…………」
犬歯を覗かせて怒鳴るウルフに僕は黙った。
やっぱ、そうなんですね……。
「おまえ居ねーとコイツらほんと使えねーんだよ!!」
「本当に……。泣くわ取り乱すわ、簡単に捕まるはで大変だったよ」
「一体どこに行ってましたのっ?!」
「ご無事で良かったですぅ」
上から、ウルフ、ジャンさん、シルフィーナ、ヨハンくん。
薄々そうじゃないかなとは思ってたけど、やっぱ僕のせいなんですね、これ。
「司祭様……無事で良かったっ」
「お怪我はありませんか?司祭様っ」
号泣状態のユリアと鎖をジャラジャラと鳴らしながら身を乗り出すアーサー。
外野そっちのけで盛り上がる僕らに痺れを切らした男たちが「煩いっ!黙れ!!」と怒鳴り声をあげた。
バラ窓から月光の降り注ぐそこは教会。
神聖な筈のその場所で武器を手にした不届き者たちは王の部下だ。
入口の扉が開かれた。
「これは……っ?」
驚きの声を上げ、真紅の絨毯を踏みしめたのは第一王子。
その後ろに付き従うのは騎士団長だ。
入り口付近に待機した男たちが二人の後ろにいた年若い騎士たちを阻み、人質を示しながら王子に進むよう促す。
「役者が全員揃ったようだ」
両手を広げ、それこそ役者のように高らかな声を上げたのは国王だった。
バーンっ!と扉を開き大仰に登場した王。
なんなの?全員揃うまで祭礼準備室とかでずっと待機してたの?
場所が無駄に夜の教会なことも演出の一つですか?
そんな疑問がつらつらと浮かぶが、空気が読める僕は沈黙を保った。
「父上、これは一体っ?何のおつもりですっ?!」
「何のつもり、とは?」
「国の、いえ、世界の恩人でもある彼らになんという扱いを!今すぐ拘束を解いて下さい!!」
「もちろんだとも。彼らが言うことを聞いてくれればすぐにでも」
ニヤリ、と厭らしく笑った王がアーサーたちを見る。
「勇者殿、あの者を殺してください」
王が真っすぐに指さした相手は、自分の子供でもある第一王子。
「貴方という人は……」
「ふん。わしが何も知らぬとでも?この親不孝者の出来損ないがっ!!!」
「親……?貴方に親を語る資格があるとでも?」
「黙れっ!!!国を乗っ取ろうとする逆賊の分際でっ」
ヒートアップする親子喧嘩に僕たちは置いてけぼりだ。
他所でやってよ。
そんなことを思っていたら、唐突に矛先が向いた。
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