あやかし居酒屋「酔」

文字の大きさ
上 下
19 / 33
◆・◆ お品書き ◆・◆

草食?肉食?とろとろロールキャベツ 1

しおりを挟む


コンソメスープを小皿に掬って一口。
ベーコンやお肉の旨みがスープにしっかりと溶け出していた。

充分にスープを吸ってしんなりとしたキャベツは上手に取り出さなければ崩れてしまいそうな程にとろとろの仕上がりだ。

「何個いりますか?」

リクエストを聞き、お玉とお箸を使ってロールキャベツを皿へと盛り付ける。
少し深さのあるお皿にして旨みの染み出たスープもたっぷり。

3つとリクエストを出した、相も変わらず眠たげな顔をした太郎へと皿を手渡しつつ綾はふと思いついた言葉を呟いた。

「ロールキャベツ系男子……」

思わずそんな言葉を呟いたのは、先日の泥酔を詫びた糸織に「じゃ、お詫び、に隣いい?」としれっと隣をGETしたからだ。

「俺の、こと?」

「ロールキャベツ系、男子ですの?」

言葉の意味がわからなかったらしい太郎と糸織が首を傾げた。
人間界アッチに出入りしている雪音には伝わってる様子を見て綾もあれっ?と首を傾げる。

「タロくん知らない?人間界アッチの言葉なんだけど」

「知ら、ない。出歩くとこ、限られてる、し」

「そっか。ロールキャベツ系男子ってのは、草食系と見せかけて肉食系の男の人のことを外側はキャベツだけど中はお肉なロールキャベツに例えた言葉だよ。草食系とか肉食系っていうのは実際の食べ物じゃなくて恋愛に対する姿勢を指してるの」

「肉食系……」

ポツリと呟かれたその言葉につられ、複数の視線が糸織へ向いた。

「な、何故わたくしを見られますのっ?!」

何故って……、それは、ねぇ?

「ってか、俺、もともと肉食。犬、だし」

……確かに。

「そうよねぇ。雰囲気で誤魔化されがちだけど、太郎は普通に女の子大好きだし、外見も肉食系よね」

「それもそうですね」

草食系と見せかけた肉食系、と思わせ、実は根っからの肉食系。ややこしい。

「あ、九十九さんもどうですか?野菜やお肉のコクはあるけどスープはわりとあっさりですよ。おでんの具とかでも使われることもあるし九十九さんでも平気だと思います」

「うむ。なら一つ貰おう」

「はーい。おかわり必要なら言ってくださね。羅刹さんは何個いりますか?」

「とりあえず5」

それぞれによそって手渡す。
羅刹用はいつも大き目の皿だ。

「うむ、悪くない」

スープを一口飲んだ九十九の言葉に綾は笑顔を浮かべる。
どちらかというと和食を好み、チーズたっぷりなどこってりしすぎるものは苦手な彼の口にもあったようだ。

「お肉だから蒼くんも好きだと思うんだけどなぁ。朝ごはんには重いですかね?」

大抵は「ぼくも行く!」と羅刹にくっついて訪れる蒼だが、まだ子供ということもありお眠の時もままある。
今日は昼間動き回ったらしく、既に寝てしまったようで一緒じゃなかった。

ロールキャベツは食べたことないから拗ねそうだ。

「別に朝でも平気だろ」

豪胆な胃を誇る羅刹の言葉をまんま受け止めてもいいものか迷ったが、2個ほど取り置くことにした。
もし蒼が食べれなくても目の前の彼が食べてくれるだろうし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。 狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか! 四社の狐に天狐が大集結。 第七弾始動! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ネカマ姫プレイしていたら、イケメン騎士(女)が部屋に来た

うみ
キャラ文芸
 たまたま気に入ったキャラクターが萌え萌えの女キャラだった俺は、ゲーム内でピンチに陥った時、イケメン騎士キャラクターに助けてもらう。それをきっかけにネカマプレイをすることになったんだが……突然イケメン騎士から「助けてくれないか」とチャットで呼びかけられると同時に、部屋のチャイムが鳴る。  男だと思っていたイケメン騎士は可愛らしい女の子で、思わぬお泊りとなってしまった俺は彼女の仕草にドキドキすることに……   ※初々しい二人の甘々ラブコメもの。スマホ投げ注意! ※女装表現あります。苦手な方はご注意ください。 ※カクヨム、なろうにも投稿してます。

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。 「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」 「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」 「同窓会なのに……?」

諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~

七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。 冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??

8月をゼリーに閉じこめる、私たちは旅に出る

杉背よい
ライト文芸
母親が亡くなり、途方に暮れている女子高生、美里の前に音信不通だったハツミ叔母さんとその息子・影広が訪ねてきた。季節はちょうど夏休み。美里は戸惑いながらも叔母さんに押し切られ、一緒にひと夏を過ごすことになる。「美里ちゃん、お母さんの幽霊に会いに行こうよ」──叔母さんの声に導かれ、美里たちは旅に出る。

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

処理中です...