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◆・◆ お品書き ◆・◆
草食?肉食?とろとろロールキャベツ 1
しおりを挟むコンソメスープを小皿に掬って一口。
ベーコンやお肉の旨みがスープにしっかりと溶け出していた。
充分にスープを吸ってしんなりとしたキャベツは上手に取り出さなければ崩れてしまいそうな程にとろとろの仕上がりだ。
「何個いりますか?」
リクエストを聞き、お玉とお箸を使ってロールキャベツを皿へと盛り付ける。
少し深さのあるお皿にして旨みの染み出たスープもたっぷり。
3つとリクエストを出した、相も変わらず眠たげな顔をした太郎へと皿を手渡しつつ綾はふと思いついた言葉を呟いた。
「ロールキャベツ系男子……」
思わずそんな言葉を呟いたのは、先日の泥酔を詫びた糸織に「じゃ、お詫び、に隣いい?」としれっと隣をGETしたからだ。
「俺の、こと?」
「ロールキャベツ系、男子ですの?」
言葉の意味がわからなかったらしい太郎と糸織が首を傾げた。
人間界に出入りしている雪音には伝わってる様子を見て綾もあれっ?と首を傾げる。
「タロくん知らない?人間界の言葉なんだけど」
「知ら、ない。出歩くとこ、限られてる、し」
「そっか。ロールキャベツ系男子ってのは、草食系と見せかけて肉食系の男の人のことを外側はキャベツだけど中はお肉なロールキャベツに例えた言葉だよ。草食系とか肉食系っていうのは実際の食べ物じゃなくて恋愛に対する姿勢を指してるの」
「肉食系……」
ポツリと呟かれたその言葉につられ、複数の視線が糸織へ向いた。
「な、何故わたくしを見られますのっ?!」
何故って……、それは、ねぇ?
「ってか、俺、もともと肉食。犬、だし」
……確かに。
「そうよねぇ。雰囲気で誤魔化されがちだけど、太郎は普通に女の子大好きだし、外見も肉食系よね」
「それもそうですね」
草食系と見せかけた肉食系、と思わせ、実は根っからの肉食系。ややこしい。
「あ、九十九さんもどうですか?野菜やお肉のコクはあるけどスープはわりとあっさりですよ。おでんの具とかでも使われることもあるし九十九さんでも平気だと思います」
「うむ。なら一つ貰おう」
「はーい。おかわり必要なら言ってくださね。羅刹さんは何個いりますか?」
「とりあえず5」
それぞれによそって手渡す。
羅刹用はいつも大き目の皿だ。
「うむ、悪くない」
スープを一口飲んだ九十九の言葉に綾は笑顔を浮かべる。
どちらかというと和食を好み、チーズたっぷりなどこってりしすぎるものは苦手な彼の口にもあったようだ。
「お肉だから蒼くんも好きだと思うんだけどなぁ。朝ごはんには重いですかね?」
大抵は「ぼくも行く!」と羅刹にくっついて訪れる蒼だが、まだ子供ということもありお眠の時もままある。
今日は昼間動き回ったらしく、既に寝てしまったようで一緒じゃなかった。
ロールキャベツは食べたことないから拗ねそうだ。
「別に朝でも平気だろ」
豪胆な胃を誇る羅刹の言葉をまんま受け止めてもいいものか迷ったが、2個ほど取り置くことにした。
もし蒼が食べれなくても目の前の彼が食べてくれるだろうし。
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