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◆・◆ お品書き ◆・◆
海老とアボカドのマヨグラタン 1
しおりを挟む「それでねっ、そこで会った相手がちょっと恰好よかったの」
きゃあと華やいだ声を上げる雪音は頬を薄く色づけた。
「お主、ついこの間失恋だとなんだと騒いでいたばかりだろうに」
「うっさいわね!だからこそ新しい恋を探してるんじゃない!!」
心底呆れたような声を上げる九十九を振り返り雪音が吠える。
今日は九十九はカウンターではなく他のあやかしと座敷に座っていた。
もふもふ尻尾がふわふわしてるので一人で場所を取っている。
まぁまぁと宥めながら綾は空いたマリネの皿を回収し、新たな料理を置いた。
「海老とアボカドのマヨグラタンです。熱いので気をつけてくださいね」
「きゃー!!女子が大好きな組み合わせじゃない!絶対美味しい!食べる前から美味しい確定!」
「この器があぼがど?ですの?」
「アボガドじゃなくてアボカド、ですよ糸織さん」
普段口にしてる人でも意外といる間違いだ。
まぁ意味は伝わるし綾的にはどっちでもいいけど。
半分にカットしたアボカドをまんまお皿として使用している。
縦に切ったアボカドの種と中身をくり抜き、海老とアボカドをマヨネーズや塩胡椒で味を整えくり抜いた器に戻したものをピザ用チーズをのせて焼いた一品。
「最強の組み合わせだわ!」
サムズアップして「おいしい!」を伝えてくれる雪音に微笑みながら綾は小鉢をいくつもお盆にのせた。
小鉢の中身は切り干し大根と油揚げの煮物。
そして三連になった長皿に盛られたのは塩辛などの珍味だ。
お盆を手に厨房から出た綾は座敷へと料理を運ぶ。
九十九などは海老とアボカドのグラタンはあまりお気に召さないだろう。
男性陣はどちらかというと舌にあった和風を好む者が多い。
とりあえず大好物の油揚げもあるし満足してもらえるはず。
再びの発端は何だったのか?
気づけばいつもの言い争いがはじまった。
じゃれ合うような(本人たちは大真面目だけど)雪音と九十九のやり取りを見ながら、やっぱり雪音さんも九十九さんになら萎縮しないんだよなぁと綾は不思議に思う。
妖力が高い相手にも萎縮せずにいられるのなら、羅刹相手にも平気なんじゃないかと。
人間であり、妖気を持たない綾には格上の相手から感じる肌を刺すような感覚というのがわからないが九十九が平気なのなら意識の問題もある筈だ。
実際、綾や蒼とのやり取りが意外だったのか、雪音たちも最初のころよりは馴染んできてはいるのだけれど。
そしてそんな二人の言い争いに気が逸れていた時だった。
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