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若干の危機感を抱く
しおりを挟むその後、迎えがくるまで雑談を暫し。
マリーが出会いを訪ねれば、
「可愛い女の子が数人の男達に絡まれてたから思わず連れの振りをして声を掛けたんだ」
と正直に答えたレイにまた一悶着。
「クローディア様っ?!大丈夫だったと仰ってたじゃないですか!?」
すかさず飛ぶクレアの叱責。
「大丈夫だったもの。初回はレイが助けてくれたし、その後また絡まれるからって街を案内してくれたの。それに次からはちゃんと自分で対処出来たわ」
「いや、全然大丈夫じゃないから。追い払らえてはいてもめちゃくちゃ男に声掛けられまくってたんで。次からは送り迎えだけでも誰か一緒にお願いします」
「「必ず」」
強い意志を宿して頷くクレアとマリーを見てクローディアはレイに喰ってかかる。
「絡まれったってちゃんと一人で対処出来るわ」
「相手が暴力でも振るってきたら如何するの」
「え?別に叩きのめすけど。わたくしこう見えて結構強いのよ?」
きょとんと首を傾げるクローディアにその実力を眼にしたことのあるフレイヤとクレアは若干乾いた笑いを浮かべた。
「可憐な見た目からは想像も出来ない闘いっぷりだったな。アルバートも冗談めかしていたが実際スカウトしたいくらいだ」
「予想外の闘争心でしたよね」
レイとマリーは想像がつかない。
華奢なクローディアを思わず見つめる。
意思が強そうな大きな猫目は、確かに気が強そうではあるが女性らしいその容姿はとても戦闘には結びつかない。
「まぁ、何にせよ街に来る時は誰かと一緒に」
「信じてないのっ?」
「信じる、信じないじゃなくて心配なものは心配なんだよ。それにディーだってわざわざ絡まれたいわけじゃないでしょう。いい子だからいうことを聞いて」
頭を撫でながら諭されれば、自分が我儘を言ってるみたいで・・・渋々小さく頷く。するといい子、いい子と更に頭を撫でられる。
「まだ暫くは噂も落ち着かないでしょうし、レイ様を屋敷へ招待しても良いかジルベルト様に伺ってみては 如何ですか?」
クレアの助言に名案、とばかりに眼を輝かせた。
「ジルベルト様、今度レイを屋敷に招待しても構いませんか?」
早速、とばかりに迎えにきたジルベルトへ切り出した。
「別に構いませんが」
唐突に真剣な表情で向かい合われ、困惑を露わにしたジルベルトは取り敢えず肯定を返す。
その途端、
ぱぁっと音がしそうな程に華やいだ笑顔に紺碧の瞳を瞬く。
「有難う御座いますっ!」
輝かんばかりの笑顔。
「レイ、構わないって。今度絶対遊びに来てね」
腕に抱き着くクローディアに返事を返しながらレイは小さく笑みを浮かべる。
「素でおねだり余裕じゃん」
小さく呟いた声に「え?」と可愛らしく小首を傾げるクローディア。
眼の前にいる先程紹介されたばかりのジルベルトは固まってるし、女性である侍女の子たちですら僅かに頬が赤い。部屋の隅に居る義兄や、特に自分の従弟なんて美女の満面の笑みを前に茹った蛸のようになっている。
塗りつぶされたような顔色に、アイツ倒れないかなとレイは他人事のように思った。
別れ際、
「レイ」
小さく名を呼んだクローディアはその後、口を噤んでしまう。
何かを言いたそうに、俯いて両手指を無意味に擦り合わせる。意を決したように上げられた顔。
「えっと、その・・・・・・またね」
両の拳を握りしめて伝えられた言葉に、レイのショコラブラウンが甘く蕩ける。
「うん、またね」
レイが大きなアメジストを覗きこんでそう返せば、薔薇色の唇が綻ぶ。
ほっとしたように肩の力を抜くクローディアの髪を撫でながら、レイは少しだけ心配になった。
周りの反応を見るに、今までディーは素を見せていなかったようだけど
果たしてこれは素を見せて大丈夫だったのだろうかと。
見送りに出てくれたクローディアに向く視線の多さに若干の不安を感じる。
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