おままごとみたいな恋をした

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それとこれとは関係ない

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 抱きしめて髪を撫で続けてくれるシャーロットの繊手に触れ、「大丈夫です」と小さく笑いかける。それでも彼女はまだ気がかりそうに、一度ぎゅっとクローディアを抱きしめた。
 離れることを躊躇う彼女にクロードが席を移すことを提案する。それにシャーロットが頷けばクローディアのすぐ脇に彼女の為の椅子が移動された。席に座ったシャーロットはテーブルの下、クローディアの手をそっと握りしめる。
 重ねられた手の温かさに気恥ずかしいような落ち着かない気持ちを抱えながら話を戻す。

「シュネールクラインへ渡ったわたくしはすぐに先程言った宝具を試されましたの。わたくしの能力チカラは微弱だった。急に能力チカラを行使しすぎて能力チカラが枯渇しているのかとも思いました」


 聖女として目覚めた時のことは誰にも語らなかった。

 その後、どれだけ独自に学び、試行錯誤してもあの時のような能力チカラは引き出せなかった。
 それでも、学ぶことは止めなかった。

「わたくしは如何しても能力チカラを失った気がしなかったんですの」

 自分の中に確かにあった予感。

「聖女としての能力チカラはなくなってはいないけれど、わたくしの中にはない。それならば、が何処にあるのか」

 クローディアの言葉に全員の視線がジルベルトを捉えた。

「私の中に・・・貴女の聖女としての能力チカラが?」

「考えられるのはそれだけだったわ。自分でも原理はよくわからないけれど。ジルを癒した時、無意識に聖女としての核みたいなモノも注ぎ込んでしまったんじゃないかしら。そしてわたくしにはその残り火のようなモノだけが残った」

 例えば、
 傷を癒すことの出来る魔道具があったとして。

 魔道具はそれに魔力を与えることによって効果を発現させる。
 使用する側が魔道具を行使し、その結果だけを対象へと与えればいい。だけど、突如聖女として目覚め、何もわからないうえに必死だったクローディアはその魔道具が癒しを与えるならばと魔道具ごとジルへ渡してしまった。
 そんな感じだろうか。

「そんなコトが可能なの?」

「さぁ?わたくしも意識してやったわけではないですし、何度も言うように聖女の能力チカラ自体が意味不明な所がありますから。でも、事実彼がわたくしの能力チカラを有しているだろうことは彼と暮らして割と早い段階でほぼ確信に変わりましたけど」

「私から貴女の能力チカラを感じたという事ですか?」

 問い掛けに首を振る。

「はっきり言ってそれはわかりませんでしたわ。わたくしが確信したのは貴方から話を聞いたからです」

 “クリストファー様の話を”

 続けた声にジルベルトだけでなく隣のシャーロットも、テオドールも眼を見開いた。その様子に少しだけ笑う。

「やはり、気づいておられませんでしたのね。貴方が説明して下さったクリストファー様が酷く体調を崩された時のお話は全て伝聞系でしたの。ジルベルト様は実際に重篤な症状の彼をご覧になった事はないのではなくて?」
 
 最初に彼の実家の話を聞いた時から疑問だった。

 3歳まで生きられないと言われていたクリストファー。
 そして、痛まし気に語る病状の語尾。軽い熱や咳の話はジルベルト自身の感情や体験が入るのに、酷い症状については「・・・だそうです」等人づてのものだったからだ。

 そして、

「最初にわたくしがオルセイン邸を訪れた時、カイル様も仰ってたわ。
”だって」

 握られたままのシャーロットの手に力が籠る。
 無意識のままに強く握られ、はっとしたように謝罪と共に離された。

「クローディアちゃん、それって・・・」

「男性であるジルベルト様に聖女の能力チカラは使えなくとも、漏れ出していたモノがあるのではないかと思いますわ。わたくしの元々の能力チカラはそれなりに大きいですし、第一、聖女のそれは願いに反応する」

「成程ね、ソレでボクにあのペンダントを作らせたワケだ」

 フォークをプラプラと指先で振りながら面白そうに瞳を細めるゼロスにクローディアもにっこりと微笑む。

「ええ、流石はゼロス様ですわ。あれだけの期間で特定の力を溜める術式を組み込んだ魔道具を作って下さる方なんて他に思い浮かばなかったので」

「待って下さい。それはあのクリストファーのネックレスの事ですか?団長があれを?」

「多分そーじゃない?緋色のネックレスでしょ?クローディアとの手合わせのおねだりがアレだったんだよね。そんな注文があったからクローディアが聖女の能力チカラを本当は隠してるんじゃないかって疑問だったんだよ。オマエの攻撃のコトもあったし」

「あれも一つの実験でしたの。勿論わたくしの実力だけでは到底ゼロス様に勝てないから駄目元なところもありましたけど。ジルベルト様の中のわたくしの能力チカラを扱う事が可能か否か。結果はご存知の通り大成功でしたわ」

「それでクローディアちゃんあんな無茶な闘い方したのか」

 呆れたようなアルバートの言葉にきょとんと首を傾げる。

「それも多少はありますけど、自分より格上の方に挑むのになりふり構わないのは当然でしょう?手加減して敵う相手ではないのですから喉笛掻っ切る気合で挑みましたわ。実力差を考えれば殺すつもりでもまだ足りないでしょう?」

「「「・・・・」」」

「キミとはもう二度と闘わない」



 ・・・解せぬ。






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