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墓穴
しおりを挟むあの後、眠りから醒めたクローディアは羞恥に両手で顔を覆った。
しかもその姿を物珍しそうにジルベルトにまじまじと見られた。
いっそ埋めて欲しい。
埋まる代わりにシーツを被って蹲ろうかと思ったが、余計に後悔をする案件になるのは自覚したため何とか踏みとどまった。
運ばれた医務室のベットの上で目覚めたクローディアは色々とパンク状態だった。
直前まで夢を見ていた為、寝言で変な事を言っていないかしらとか。
先程の人生初体験についてとか。言葉にするのも恥ずかしい。
しかもその人生初体験をゼロスやアルバート含むあの場にいたその他大勢+ここまで運ばれる道すがら出会った人達にも見られている事とか。
寝落ちしたうえ、寝顔を晒した事とか。
もう、色々と。
グルグルする頭で、それでも表向きだけは神妙にベッドの上に身を起こしジルベルトの説教を聞き入れる。これ程表情を取り繕える事に感謝した瞬間はない。相槌を打ちながら彼の説教を聞き終え(ほぼ聞いてなかったけど)、ふぅと一つ息を吐いた後にも爆弾を落とされた。
「本当にゼロス様って何なんですの。息一つ切らさないとか、あの治療速度とか色々おかしいです!というか旦那さまもまだ余裕がありますし。殺す気でって言ったのに、炎の威力を途中で弱めましたわね」
「あれ程威力が出るとは思わなかったので。正直怯みました」
「黒コゲにするつもりで丁度良かったと思いますわ。あの人なら何とかなりそうですもの」
先程までの神妙な態度とは一転、捲くし立てるクローディアの心境たただ一つ。
色々と居た堪れないので話題を変えたい。
何かの形で吐き出さないと自分が何を口走るかわからないから必死。
唐突に口数が多くなるとか焦った人間の典型だなと、冷静な頭の何処かが呟いた。
「だいたいっ、何が一番ムカつくって!ゼロス様のあの肌ですわ!!」
振り返って思えばわかる。
暴走してた。
だけど心からの本心でもあった。
「あの距離で顔覗き込んでも毛穴一つ見えないあの肌の綺麗さ何なんですの!?意味がわからないですわ!!野菜全般嫌いな癖に!!!」
意味がわからないのは確実に自分の発言そのものだった。
現に胸の前で拳を握りしめたクローディアにジルベルトはきょとんとしてた。
でも、あのウサギっぽい色彩の癖にゼロスは人参も食べられないのだ。性格を知った今では確かに好き嫌い多そうだなと思うけど。
偏食っぽい。
そして実際偏食だった。
食べられるけど嫌い。
そして若干意味の分からないキレ方をしたが故の事故だった。
クローディアの剣幕にきょとんとしていたジルベルトが手を伸ばした。
「貴女だって綺麗でしょうに。
団長よりずっと」
傷の痕のあった頬を親指の腹でそっと撫でて何て事のないように口にしたジルベルトにクローディアは再びフリーズ。「この綺麗な肌に傷をつくるなんて」と続けらる。思考がフリーズしていた為に顔色と反応に出なかった事だけが唯一の救い。
何だというのか。
夜、自室に戻った後で医務室で出来なかったシーツを頭から被って蹲るを実行した。
あの決闘の翌日、クローディアはゼロスに質問攻めにされながら当初の目的通りおねだりをした。因みにジルベルト達は居ない隙に。おねだりを叶えて貰う為に弊害となるゼロスの仕事を手伝う事を申し出れば彼は喜々として受け入れてくれた。
契約成立。
二週間以内という厳しい期限を設けたにも関わらずあっさりと了承してくれた彼は流石だ。
魔術に関しては。
どうか、その優秀さを他の仕事でも活かして欲しいと思わずにはいられない。
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