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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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泣くのが落ち着いた後に話を聞いてくれた。
「アルファス殿下が私を愛してくれなくて……そこまではまだ耐えれたんです。でも、アルファス殿下に嫌われないように淑女の基本をしていただけなのに、「気味の悪い笑みだな」って……っ」
時に頷いたり、相槌を入れてくれたりしたから話しやすかった。
「だから、もう無理だったんです」
「そうか、俺にできることがあるならいつでも言ってな」
イロハにも言われた言葉だ。でも、話せる相手が増えたのは心強い。
一方その頃、アルファスとアオイは二人っきりで食事をしていたのが終わった頃だった。
「アルファス、エルファッタ様大丈夫かしら」
「アオイは優しいな。エルファッタは大丈夫だろう。あの地位だけが高い女は家が何とかしてくれるだろう」
アオイは手を口元に当て、笑った。
「ぷっ、アルファス様悪ーい」
と、くすくす笑いながら言った。
「エルファッタは頭が悪いからな。俺たちが噂を流したことはバレないだろう」
誰かに聞かれていることも知らずに言った。それを聞いたであろう男女は姿を現す。
「おい、アルファス」
急に現れてきた男女は、男は白髪混じりの長髪と高貴そうな服を着ていて、女も同様に高貴そうな服を着ていた。
「陛下……!? 皇后も!」
アルファスは膝をつき、右手を胸に当て頭を下げる。アオイもアルファスに倣って頭を下げた。
「今の話は真か?」
皇后、レイナは扇を口元で開く。レイナは東国出身だから、この国に合わない言葉を使う。
「……言い逃れはできぬぞ、アルファス。我らの耳で聞いたのだからな」
まずい、と思う。皇子じゃなくなる可能性もある。
「…それは、良くないと思いますっ!」
アオイが言った。転移者の頭がお花畑だということに今気がついた。
「アオイ……黙ってて」
ボソリと言う。もしかしたら皇帝、皇后に聞こえているかもしれない。
「なぜですかっ! なぜ、黙らなければいけないんですか!」
ボソリと言った意味がなくなった。
「アルファス、もう吐け。我らはもう知っているのだからな」
皇帝皇后両陛下は冷ややかな視線を送っていた。アルファスはアオイ以外誰も味方がいないことに気がついた。
(……なぜだ。なぜ俺がこんな仕打ちを迎えなければならない!)
今まで黙っていた皇帝、エルカードは口を開ける。
「……ここでの話もなんだから、書斎に来い」
エルカードが言った気がした。
「アルファス、残念だ」と。
その言葉は、アルファスの心に突き刺さる。皇帝はアルファスの味方ではないことを、アオイを失うと、孤独になことに気づく。
アオイはアルファスに叫んでから、黙ったままだった。拗ねたみたいだ。そんなところも可愛いよ、と言ってあげられる余裕はなかった。
「……エルファッタには元々、感情はなかったんです」
もう一度聞くなら、そう言うつもりだ。
レイナとエルカードはアルファスに無関心になっていく。レイナはこう思う。
ー……アルファスはもうダメだ、と。
(もう今更後悔したって元通りにはなれないわ。さよならアルファス皇子)
もうレイナもアオイも話を聞いていなかった。
「アルファス殿下が私を愛してくれなくて……そこまではまだ耐えれたんです。でも、アルファス殿下に嫌われないように淑女の基本をしていただけなのに、「気味の悪い笑みだな」って……っ」
時に頷いたり、相槌を入れてくれたりしたから話しやすかった。
「だから、もう無理だったんです」
「そうか、俺にできることがあるならいつでも言ってな」
イロハにも言われた言葉だ。でも、話せる相手が増えたのは心強い。
一方その頃、アルファスとアオイは二人っきりで食事をしていたのが終わった頃だった。
「アルファス、エルファッタ様大丈夫かしら」
「アオイは優しいな。エルファッタは大丈夫だろう。あの地位だけが高い女は家が何とかしてくれるだろう」
アオイは手を口元に当て、笑った。
「ぷっ、アルファス様悪ーい」
と、くすくす笑いながら言った。
「エルファッタは頭が悪いからな。俺たちが噂を流したことはバレないだろう」
誰かに聞かれていることも知らずに言った。それを聞いたであろう男女は姿を現す。
「おい、アルファス」
急に現れてきた男女は、男は白髪混じりの長髪と高貴そうな服を着ていて、女も同様に高貴そうな服を着ていた。
「陛下……!? 皇后も!」
アルファスは膝をつき、右手を胸に当て頭を下げる。アオイもアルファスに倣って頭を下げた。
「今の話は真か?」
皇后、レイナは扇を口元で開く。レイナは東国出身だから、この国に合わない言葉を使う。
「……言い逃れはできぬぞ、アルファス。我らの耳で聞いたのだからな」
まずい、と思う。皇子じゃなくなる可能性もある。
「…それは、良くないと思いますっ!」
アオイが言った。転移者の頭がお花畑だということに今気がついた。
「アオイ……黙ってて」
ボソリと言う。もしかしたら皇帝、皇后に聞こえているかもしれない。
「なぜですかっ! なぜ、黙らなければいけないんですか!」
ボソリと言った意味がなくなった。
「アルファス、もう吐け。我らはもう知っているのだからな」
皇帝皇后両陛下は冷ややかな視線を送っていた。アルファスはアオイ以外誰も味方がいないことに気がついた。
(……なぜだ。なぜ俺がこんな仕打ちを迎えなければならない!)
今まで黙っていた皇帝、エルカードは口を開ける。
「……ここでの話もなんだから、書斎に来い」
エルカードが言った気がした。
「アルファス、残念だ」と。
その言葉は、アルファスの心に突き刺さる。皇帝はアルファスの味方ではないことを、アオイを失うと、孤独になことに気づく。
アオイはアルファスに叫んでから、黙ったままだった。拗ねたみたいだ。そんなところも可愛いよ、と言ってあげられる余裕はなかった。
「……エルファッタには元々、感情はなかったんです」
もう一度聞くなら、そう言うつもりだ。
レイナとエルカードはアルファスに無関心になっていく。レイナはこう思う。
ー……アルファスはもうダメだ、と。
(もう今更後悔したって元通りにはなれないわ。さよならアルファス皇子)
もうレイナもアオイも話を聞いていなかった。
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