42 / 48
第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
銀田真(24歳)はEDか否か。
しおりを挟む
近頃の銀田は、やたらと自室に籠りがちだ。
俺が、朝起きてリビングに行くと、必ずすでに起きていて美味しい紅茶と朝ご飯を用意してくれているし、俺が、仕事から帰れば相変わらず好物の夕飯を作ってくれている。
けれど、夕飯の片付けが終わると、銀田は、リビングのバカでかいソファーで寝そべってテレビを観ている俺を置いて、そそくさと自室に籠もってしまうのだ。
いやお前、家政婦じゃねーんだからさ!
てかお前が、この城みたいな部屋の一家の主だろがい。
俺は会社では、小間使いのようにこき使われてる身の癖して、家に帰れば、まるでどっかの王国のキングのような扱われ方されてて、なんつうかギャップ酔いがしゅごい。
大抵、こんなとき、俺は決まって、たろさんに電話をかける。
「ええー?」
たろさんは、何度も同じ話を聞かされているにも関わらず、今夜も新鮮なリアクションをしてくれるから好きすぎる。
「なぁ、どう思う?」
「どうって……」
「最初の頃は、あんだけウザ絡みしてきてたのにさぁー、最近は全然だからさぁ」
「……ふぅーん、なんだか欲求不満って感じ?」
「ッんなっ!? 違っ!」
否定しつつも、たろさんが急に変なこと言うもんだから、カーッと顔が熱くなってしまう。
「んなのダーイジョブだってえ、マミリンが心配するようなことは、なーんも無いからぁ」
「…………おっ、俺は、別に……」
「だってアイツ、マミリンにしか勃たないらしいよ」
「ふーん…………は?」
「あれ? 前に言わなかったっけか? 銀田は、マミリン以外にはチ◯コがピクリとも勃たないんだって」
「…………」
「あ、チ◯コが勃たないっつーのは、要するに勃」
「っ分かるわい!」
いや……聞いてない……聞いてないよ、そんなこと! たろさんが銀田のこと、前にEDって言ってたのって……そっ、そういう意味だったのか……。
…………え? 俺にしか……チ◯コが反応しないってこと……だよな……?
「あれ!? マミリン!? 聞こえてるぅー!?」
「…………う、うん」
そう答えるのが精一杯だった。え!? 待って、銀田が、俺にしか!? え!? マジで!? 俺だけなの!? ウソでしょ!? 待って待って待って!? 俺にしか興奮できない!? 俺だけ!? 俺だけ……俺だけにしか……勃……。
「あっ、そんなことよりマミリン聞いてよ、こっちは大ニュース!」
「……なぁ、じゃあなんでアイツ、ずっと俺のこと避けてんだろ?」
「え!? なんだって? そんなの、仕事してるからじゃねーの?」
「仕事って?」
「だから、小説書いてんだよ」
「……えっ、でも……今さら続編とか……」
「そんなことよりも! ねぇ、マミリン、聞いてよ! ねぇ!?」
これまで何度聞いても、たろさんは、銀田が自室に籠もる理由は、『ボク恋』の続編を書いてるからだろうと、決めつけているけど……。でも、そんな奇跡的なこと、大ファンの俺でさえ、とてもじゃないがすぐには信じがたい。
「……でもさ、元々、小説書き始めたきっかけだって、くだらなかったじゃん……」
「だからでしょ」
「……え?」
「アイツは、だから今回も、マミリンのためだけに続編書いてんじゃない?」
「……は? ……なんで」
「なんでって……」
たろさんは、さも呆れたかのように言った。
「んなの好きな子のためなら、余裕で書くっしょ」
「……ッ!?」
「そんなことより、マミリン聞いてよ! 俺、なんと大吉キュンにツ◯ッターフォローされたんだけど!? すごくない!?」
「へぇー、山田ってツ◯ッターとかやってたんだ」
「いや、それがね! 俺がデジャヴュのイラストを載せたら、それにイイネしてくれたのが大吉キュンだったのよ! ねぇ、すごくない!?」
「あー、デジャヴュは今、人気だからね」
でもそうか……。なら、アイツ、今も部屋で小説書いてるかもなのか……。
「あ! ありがとう、たろさん! それじゃまたね」
「え!? ちょっ……マミリン!? 待っ」
俺は、たろさんの電話を切ると足早に銀田の自室へと急いだ。
銀田の寝室の前で、一瞬たじろいでしまったものの、俺は思い切ってコンコンとドアをノックしてみた。
しばらく待ってみても、反応が無いので、さっきよりも強めにノックをしてみたところで、急にドアが開いた。
「うっわ!」
「……気のせいかと思ったけど、やっぱり、みゃーちゃんだった」
そう答える銀田の表情は、どこか強張ってみえた。落ち着いた声のトーンとは、不釣り合いに余裕がない。その違和感を見つけるために、それとなく、銀田の身体を目で追っていくと、ある一部分に目が釘付けになった。
「っおまえ! 俺にしか勃たねーんじゃなかったのかよ!」
なんと銀田の股間が、ゴリゴリに勃起していたのである。つい今しがた電話で、たろさんと、そのことについて話していたせいで、感情的にそんな言葉が飛び出してしまった。
俺は、銀田が小説を書いているどころか、エロ動画でも観ながら抜いてただけだと思って、自分が銀田の書いた小説でさんざ抜いてることは差し置いて、カッと頭に血が上ってしまったのだ。
「……あっ……や、ごっ、ごめん……こんなの……気持ち悪いよね」
「……別に……俺には関係無い……」
「…………みゃーちゃんに……」
銀田は、少し躊躇うように、口をつぐむと、小さな声でそっと、続けた。
「……みゃーちゃんに読んでもらうの想像しながら……いつも書いてるから……」
「…………は?」
なんだ、オナってたんじゃねーのか。
「……あー、また金玉先生の新作でも出んの?」
「……いや、そっちじゃなくて今は『ボク恋』の続編書いてるんだ」
…………え?
…………………………マジで?
「…………ふぅん……そーなんだ。……じゃあ気になってた続きが読めるんだな」
「気になってたって?」
俺は、それに答える代わりに、ゆっくりと銀田に近づくと、そっと、身体を押し当てて、銀田の腕の間から手を忍ばせ腰に腕を回した。銀田は「ミャッ!?」と声と両手を上げた。
「で、結局のところ、宮内杏は誰を選ぶんだろうな?」
「……だれをっ……っあ……あっ」
聞きながら俺は、自分の固くなったソレを銀田の太ももに何度も擦りつけた。
「だって原作じゃー銀之丞は担任の先生、だもんなぁー?」
「……うっ……あっ……まっ、待っ」
言いながら俺は、銀田の背中に回していた腕の片方を、そっと背中から離すと、ゆっくりと銀田の熱くなった股間を撫で始めた。
「全年齢向けのラノベで先生と生徒ってのは、ちとマズいんじゃねーの?」
「みゃっ……あっ……あっ……ダメだっ」
「……なんで?」
「……ぼく……ぼく……はっ」
銀田は、顔を真っ赤にさせながら、必死に首を振って、俺を自分から離れさせようとしている。
「…………っするから」
「……ん?」
必死に何かを伝えようとしているのが分かって、俺は銀田の股間に擦りつけていた顔を上げた。
「『ボク恋』を書き終えたら、僕は、みゃーちゃんに、もう一度告白するんだ」
俺は、しゃがんだまま、口をポカンとさせて銀田を見上げていた。
俺が、朝起きてリビングに行くと、必ずすでに起きていて美味しい紅茶と朝ご飯を用意してくれているし、俺が、仕事から帰れば相変わらず好物の夕飯を作ってくれている。
けれど、夕飯の片付けが終わると、銀田は、リビングのバカでかいソファーで寝そべってテレビを観ている俺を置いて、そそくさと自室に籠もってしまうのだ。
いやお前、家政婦じゃねーんだからさ!
てかお前が、この城みたいな部屋の一家の主だろがい。
俺は会社では、小間使いのようにこき使われてる身の癖して、家に帰れば、まるでどっかの王国のキングのような扱われ方されてて、なんつうかギャップ酔いがしゅごい。
大抵、こんなとき、俺は決まって、たろさんに電話をかける。
「ええー?」
たろさんは、何度も同じ話を聞かされているにも関わらず、今夜も新鮮なリアクションをしてくれるから好きすぎる。
「なぁ、どう思う?」
「どうって……」
「最初の頃は、あんだけウザ絡みしてきてたのにさぁー、最近は全然だからさぁ」
「……ふぅーん、なんだか欲求不満って感じ?」
「ッんなっ!? 違っ!」
否定しつつも、たろさんが急に変なこと言うもんだから、カーッと顔が熱くなってしまう。
「んなのダーイジョブだってえ、マミリンが心配するようなことは、なーんも無いからぁ」
「…………おっ、俺は、別に……」
「だってアイツ、マミリンにしか勃たないらしいよ」
「ふーん…………は?」
「あれ? 前に言わなかったっけか? 銀田は、マミリン以外にはチ◯コがピクリとも勃たないんだって」
「…………」
「あ、チ◯コが勃たないっつーのは、要するに勃」
「っ分かるわい!」
いや……聞いてない……聞いてないよ、そんなこと! たろさんが銀田のこと、前にEDって言ってたのって……そっ、そういう意味だったのか……。
…………え? 俺にしか……チ◯コが反応しないってこと……だよな……?
「あれ!? マミリン!? 聞こえてるぅー!?」
「…………う、うん」
そう答えるのが精一杯だった。え!? 待って、銀田が、俺にしか!? え!? マジで!? 俺だけなの!? ウソでしょ!? 待って待って待って!? 俺にしか興奮できない!? 俺だけ!? 俺だけ……俺だけにしか……勃……。
「あっ、そんなことよりマミリン聞いてよ、こっちは大ニュース!」
「……なぁ、じゃあなんでアイツ、ずっと俺のこと避けてんだろ?」
「え!? なんだって? そんなの、仕事してるからじゃねーの?」
「仕事って?」
「だから、小説書いてんだよ」
「……えっ、でも……今さら続編とか……」
「そんなことよりも! ねぇ、マミリン、聞いてよ! ねぇ!?」
これまで何度聞いても、たろさんは、銀田が自室に籠もる理由は、『ボク恋』の続編を書いてるからだろうと、決めつけているけど……。でも、そんな奇跡的なこと、大ファンの俺でさえ、とてもじゃないがすぐには信じがたい。
「……でもさ、元々、小説書き始めたきっかけだって、くだらなかったじゃん……」
「だからでしょ」
「……え?」
「アイツは、だから今回も、マミリンのためだけに続編書いてんじゃない?」
「……は? ……なんで」
「なんでって……」
たろさんは、さも呆れたかのように言った。
「んなの好きな子のためなら、余裕で書くっしょ」
「……ッ!?」
「そんなことより、マミリン聞いてよ! 俺、なんと大吉キュンにツ◯ッターフォローされたんだけど!? すごくない!?」
「へぇー、山田ってツ◯ッターとかやってたんだ」
「いや、それがね! 俺がデジャヴュのイラストを載せたら、それにイイネしてくれたのが大吉キュンだったのよ! ねぇ、すごくない!?」
「あー、デジャヴュは今、人気だからね」
でもそうか……。なら、アイツ、今も部屋で小説書いてるかもなのか……。
「あ! ありがとう、たろさん! それじゃまたね」
「え!? ちょっ……マミリン!? 待っ」
俺は、たろさんの電話を切ると足早に銀田の自室へと急いだ。
銀田の寝室の前で、一瞬たじろいでしまったものの、俺は思い切ってコンコンとドアをノックしてみた。
しばらく待ってみても、反応が無いので、さっきよりも強めにノックをしてみたところで、急にドアが開いた。
「うっわ!」
「……気のせいかと思ったけど、やっぱり、みゃーちゃんだった」
そう答える銀田の表情は、どこか強張ってみえた。落ち着いた声のトーンとは、不釣り合いに余裕がない。その違和感を見つけるために、それとなく、銀田の身体を目で追っていくと、ある一部分に目が釘付けになった。
「っおまえ! 俺にしか勃たねーんじゃなかったのかよ!」
なんと銀田の股間が、ゴリゴリに勃起していたのである。つい今しがた電話で、たろさんと、そのことについて話していたせいで、感情的にそんな言葉が飛び出してしまった。
俺は、銀田が小説を書いているどころか、エロ動画でも観ながら抜いてただけだと思って、自分が銀田の書いた小説でさんざ抜いてることは差し置いて、カッと頭に血が上ってしまったのだ。
「……あっ……や、ごっ、ごめん……こんなの……気持ち悪いよね」
「……別に……俺には関係無い……」
「…………みゃーちゃんに……」
銀田は、少し躊躇うように、口をつぐむと、小さな声でそっと、続けた。
「……みゃーちゃんに読んでもらうの想像しながら……いつも書いてるから……」
「…………は?」
なんだ、オナってたんじゃねーのか。
「……あー、また金玉先生の新作でも出んの?」
「……いや、そっちじゃなくて今は『ボク恋』の続編書いてるんだ」
…………え?
…………………………マジで?
「…………ふぅん……そーなんだ。……じゃあ気になってた続きが読めるんだな」
「気になってたって?」
俺は、それに答える代わりに、ゆっくりと銀田に近づくと、そっと、身体を押し当てて、銀田の腕の間から手を忍ばせ腰に腕を回した。銀田は「ミャッ!?」と声と両手を上げた。
「で、結局のところ、宮内杏は誰を選ぶんだろうな?」
「……だれをっ……っあ……あっ」
聞きながら俺は、自分の固くなったソレを銀田の太ももに何度も擦りつけた。
「だって原作じゃー銀之丞は担任の先生、だもんなぁー?」
「……うっ……あっ……まっ、待っ」
言いながら俺は、銀田の背中に回していた腕の片方を、そっと背中から離すと、ゆっくりと銀田の熱くなった股間を撫で始めた。
「全年齢向けのラノベで先生と生徒ってのは、ちとマズいんじゃねーの?」
「みゃっ……あっ……あっ……ダメだっ」
「……なんで?」
「……ぼく……ぼく……はっ」
銀田は、顔を真っ赤にさせながら、必死に首を振って、俺を自分から離れさせようとしている。
「…………っするから」
「……ん?」
必死に何かを伝えようとしているのが分かって、俺は銀田の股間に擦りつけていた顔を上げた。
「『ボク恋』を書き終えたら、僕は、みゃーちゃんに、もう一度告白するんだ」
俺は、しゃがんだまま、口をポカンとさせて銀田を見上げていた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。


鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる