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第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
推し作家の正体が元同級生だった件。
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目を覚ますと、銀田と、たろさんが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
冷たい違和感を感じて、おでこに触れると、濡れタオルが当てられている。
どうやら俺は、気絶してしまっていたらしい。
「…………あの、」
俺が上体を起こそうとすると、慌てて2人に、手で制止された。
そこで初めて、自分が寝ているのは、ベッドではなく、ソファーの上であることに気がついた。
そりゃそうだろう、だって、本屋に来ているのだから。
本屋にベッドなんかあるわけねーもんな……。
まだ、頭はぽやぽやとしている。
「……んあ……お、おれ……?」
「大丈夫か! 陸人!!」
「……うっわ、お前……本人の前でもキャラになりきるとか、引くわぁ~」
……キャラ? こいつのコレ、何キャラなの? ねぇ、たろさん!?
そう聞き返したいのに、まるで口が回らない。
「…………え……は?」
「えっ!? 何だ!? 陸人!?」
「……しぇんしぇー……は?」
「シェイシェイ!? どういたしまして!」
「アホか、お前は。マミリンは、先生のことを気にしてんだよ」
「……シェッ……先生!? 医者を呼ぶべきなのか!?」
「アホか! 先生っつーのは、お前のことだろうが……」
…………え?
たろさん、今……なんて言ったの……?
「……僕は……医師免許は持っていないが?」
「んなの俺だって持ってねーよ!」
えっと……えっと……、
どうしよう……ツッコミがいねぇ……。
とりあえず、俺が確認するのが1番間違い無さそうだな。
「……おま……おまえが……金玉なのか?」
あ、聞き方を間違えた……。
「えっ、金玉!? 太郎に、たまにふざけて、そう呼ばれることはあるけども?」
いや、あるんかい!
お前……リアルでもフツーに金玉呼ばわりされてんじゃねぇよ……。
「…………ぷっ」
ヤバイ……ちょっとだけツボってしまった。
「みゃっ……みゃーちゃんが笑った! みゃーちゃんが笑った!」
「るっせーな! んなデケー声出さなくたって俺にも聞こえてるわ、ボケ」
なっ、なんだか、銀田と話してるときの、たろさんて、ちょっとガラ悪くなってない? でも、なんか、新鮮でおもろいけど……って。
そーじゃなくって、そーじゃなくってですね……。
「……ほんとうに、おまえが……金太真琴先生なのか?」
ようやく少し頭がスッキリしてきた俺は、銀田の顔を見上げて、改めてそう聞いた。
銀田は、一瞬、たろさんの方を不安げに見たあとで、
「…………うん」
そう、小さく頷いた。
もちろん、俺はこの場で納得することはできなかったし、思うところは多々あった。
だって、そんなん、信じられるわけ無いだろ……。
「…………そっか」
でも、事実だって、変えられない。
「みゃーちゃん……げ、幻滅した?」
でかい図体に不釣り合いな、蚊の泣くような声で、銀田がボソリと言う。
「…………別に」
嘘は言っていない。事実、俺は、金太真琴先生の大ファンなわけで、たとえ、その作家の正体が、俺の嫌いな人間だったとしても、作品には罪はない。
いや、むしろ、罪が帳消しになる可能性すらある。
第一、俺が銀田のことがトラウマになってから、もう10年の時を経ている。さすがに、この歳になってまで、子供時代のアレやコレやを、とやかく言うのは野暮すぎるだろう。
んなものは、もう、時効だ、時効。
今となっては、元同級生と握手するためにトイレで念入りに手を洗ってきた自分が、ただただ恥ずかしい。
ってか、手を握るより先に、チ◯コにぎにぎしてたとか、どんなギャグだよ……。
順番が逆すぎるだろ……。
ていうか、俺……金太真琴先生とエッチしちまったのか……。字面にすると、めちゃくちゃ興奮するな……。
金太真琴先生が、イコール銀田だと思うと、萎えるけども……。
んー、まだ、頭の整理はぜんぜんついてないぞ。とにかく、時間が欲しい……。
「マミリン許してくれてるみたいで、良かったじゃん」
「うん」
俺の気持ちをよそに、たろさんと銀田は、2人で何かからようやく開放されたレベルの笑顔を浮かべている。
「……許すもなにも、作品には何の罪もないじゃん」
「おー! やっぱ、そう思うよなー。俺もずっと、コイツにそう言ってやってたんだけどさぁー。コイツがいつまで経ってもウジウジしてるからさぁー」
「……うふふ」
「なー、だから言ったじゃん!」
「でもやっぱり、みゃーちゃんにだけは、僕(攻め)✕みゃーちゃん(受け)の同人誌書いてることなんて知られたくなかったな」
…………ん?
「だーから、今マミリンだって言ってただろぉー? 作品には罪は無いんだって!」
…………は?
「……あの、すみません、今、なんて?」
冷たい違和感を感じて、おでこに触れると、濡れタオルが当てられている。
どうやら俺は、気絶してしまっていたらしい。
「…………あの、」
俺が上体を起こそうとすると、慌てて2人に、手で制止された。
そこで初めて、自分が寝ているのは、ベッドではなく、ソファーの上であることに気がついた。
そりゃそうだろう、だって、本屋に来ているのだから。
本屋にベッドなんかあるわけねーもんな……。
まだ、頭はぽやぽやとしている。
「……んあ……お、おれ……?」
「大丈夫か! 陸人!!」
「……うっわ、お前……本人の前でもキャラになりきるとか、引くわぁ~」
……キャラ? こいつのコレ、何キャラなの? ねぇ、たろさん!?
そう聞き返したいのに、まるで口が回らない。
「…………え……は?」
「えっ!? 何だ!? 陸人!?」
「……しぇんしぇー……は?」
「シェイシェイ!? どういたしまして!」
「アホか、お前は。マミリンは、先生のことを気にしてんだよ」
「……シェッ……先生!? 医者を呼ぶべきなのか!?」
「アホか! 先生っつーのは、お前のことだろうが……」
…………え?
たろさん、今……なんて言ったの……?
「……僕は……医師免許は持っていないが?」
「んなの俺だって持ってねーよ!」
えっと……えっと……、
どうしよう……ツッコミがいねぇ……。
とりあえず、俺が確認するのが1番間違い無さそうだな。
「……おま……おまえが……金玉なのか?」
あ、聞き方を間違えた……。
「えっ、金玉!? 太郎に、たまにふざけて、そう呼ばれることはあるけども?」
いや、あるんかい!
お前……リアルでもフツーに金玉呼ばわりされてんじゃねぇよ……。
「…………ぷっ」
ヤバイ……ちょっとだけツボってしまった。
「みゃっ……みゃーちゃんが笑った! みゃーちゃんが笑った!」
「るっせーな! んなデケー声出さなくたって俺にも聞こえてるわ、ボケ」
なっ、なんだか、銀田と話してるときの、たろさんて、ちょっとガラ悪くなってない? でも、なんか、新鮮でおもろいけど……って。
そーじゃなくって、そーじゃなくってですね……。
「……ほんとうに、おまえが……金太真琴先生なのか?」
ようやく少し頭がスッキリしてきた俺は、銀田の顔を見上げて、改めてそう聞いた。
銀田は、一瞬、たろさんの方を不安げに見たあとで、
「…………うん」
そう、小さく頷いた。
もちろん、俺はこの場で納得することはできなかったし、思うところは多々あった。
だって、そんなん、信じられるわけ無いだろ……。
「…………そっか」
でも、事実だって、変えられない。
「みゃーちゃん……げ、幻滅した?」
でかい図体に不釣り合いな、蚊の泣くような声で、銀田がボソリと言う。
「…………別に」
嘘は言っていない。事実、俺は、金太真琴先生の大ファンなわけで、たとえ、その作家の正体が、俺の嫌いな人間だったとしても、作品には罪はない。
いや、むしろ、罪が帳消しになる可能性すらある。
第一、俺が銀田のことがトラウマになってから、もう10年の時を経ている。さすがに、この歳になってまで、子供時代のアレやコレやを、とやかく言うのは野暮すぎるだろう。
んなものは、もう、時効だ、時効。
今となっては、元同級生と握手するためにトイレで念入りに手を洗ってきた自分が、ただただ恥ずかしい。
ってか、手を握るより先に、チ◯コにぎにぎしてたとか、どんなギャグだよ……。
順番が逆すぎるだろ……。
ていうか、俺……金太真琴先生とエッチしちまったのか……。字面にすると、めちゃくちゃ興奮するな……。
金太真琴先生が、イコール銀田だと思うと、萎えるけども……。
んー、まだ、頭の整理はぜんぜんついてないぞ。とにかく、時間が欲しい……。
「マミリン許してくれてるみたいで、良かったじゃん」
「うん」
俺の気持ちをよそに、たろさんと銀田は、2人で何かからようやく開放されたレベルの笑顔を浮かべている。
「……許すもなにも、作品には何の罪もないじゃん」
「おー! やっぱ、そう思うよなー。俺もずっと、コイツにそう言ってやってたんだけどさぁー。コイツがいつまで経ってもウジウジしてるからさぁー」
「……うふふ」
「なー、だから言ったじゃん!」
「でもやっぱり、みゃーちゃんにだけは、僕(攻め)✕みゃーちゃん(受け)の同人誌書いてることなんて知られたくなかったな」
…………ん?
「だーから、今マミリンだって言ってただろぉー? 作品には罪は無いんだって!」
…………は?
「……あの、すみません、今、なんて?」
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