【完結】大好きなラノベ作家の正体が初めてを捧げたワンナイトラブの相手だったので今すぐに爆発します。

コウヨリモカ@新作ヒーヒー執筆中✏️💦

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第二章 間違いが、正解を教えてくれる。

FX山田大吉(24歳)、童貞。

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「……マミリン?」

 耳元で聞き慣れた電話口の声は、下手をすると実の母親以上に慈愛じあいに満ちていた。

「……かーちゃん……」

「ンヘッ!?」

「……んふ」

 いつも大人の余裕たっぷりに見える、たろさんの間の抜けた声を聞いて、ようやく他に足が着いたような気持ちになった。思わず気が抜けて笑みが溢れてしまう。ここ、52階だけどな。

「どっ、どしたん?? アイツになんか虐められでもした??」

「……虐められたというか……」

 ……ある意味、イジメ抜かれましたとでもいうべきか……。

「……エッ、なになに!? まさかアイツになんか変なことされてねーよな!?」

「……もちろん」

 YES! なんて心の中だけでしか叫べないよね……。いくら山田に振られたからって、その足で代わりにたろさんの友達に手を出しちゃいました、テヘッだなんて言えるわけがない……。

「……そっかぁー、よかったぁー。なんか、マミリンの声の雰囲気が夜中に話したときと別人格すぎて、何かあっちゃったんかと心配したよー」

「……は、ハハッ……」

「でも、良かったぁ、この歳で童貞処女のダチなんて、ゼッタイお互いもう作れないじゃん? しかもマブダチ♡」

「…………え?」

「え?」

「…………あの、たろさん今なんて……?」

「えっ!? まさか、マミリン童貞処女じゃなかったの!?」

「……え? いや……まぁ、ハイ」

「ハァアアアアアアアッッ!?」

「……ハハッ」

「……ってことは非処女?」

「……えっと」

「……非童貞? どっち!?」

「……いや、俺のことなんかより……」

「いーから答えてよ!」

「…………」

「大事なことだから」

「……うん」

「で、いつ!!??」

「……いつだろう?」

「アバウトで何歳んときよ!!??」

「……2……4歳?」

「ホヤホヤじゃねーか」

「……あれ? そういえば、太郎さんって、おいくつでしたっけ?」

「急によそよそしくなってんじゃねーか」

「たしか……27歳でしたっけ?」

「ちょっっっと待った! マミリンッ!? もしかして……まさかまさかだけどヤケで大吉キュン以外と寝てたりなんかしてないよね!?」

「……たろさん、どうにも脱力するんで、山田のことをそのって呼ぶの辞めにしませんか?」

「大吉キュン大吉キュン大吉キュン大吉キュン!」

 ……なるほど、相当にお怒りでいらっしゃる。

 俺は、言うべきか言わざるべきかを、まだ計りかねながら、頭をかいた。一度犯したミスが、雪だるまのようにゴロゴロと大きくなりながら自分自身の上へと転がり落ちてくる。これぞまさに自業自得というやつだ。

 ちまたでよく聞くハイリスクハイリターンって、このことか……。山田って、投資信託だったんだな……。どうりで魅力的なわけだよ。おかげさまで大失敗して火傷しちまったぜ……。今後はFX山田様と呼ばせていただこう……。

 あ、だめだ、気を抜くと現実逃避しちゃう。

「……あ、えっとぉー……」

 俺は、浅い深呼吸をした。

 ええい、ままよ!

「銀田真となら、寝ました……」

 その後、しばらく沈黙が続き、だいぶ経ったあとで、ようやく、たろさんのギネスに載れそうなほどにクソ長いため息が聴こえてきた。

「……ごめんなさい……」

「……いや……こういうのはさ、結局のところ、手を出したヤツの責任なのよ」

「…………手を出したヤツでごめんなさい……」

「…………マジで?」

「…………」

 それから、また長い長いため息がやってきて、すぐさまギネス記録は塗り替えられたのだった。チャンチャン。



「……マミリン……まじかぁああああ……」

「…………」

「よりによって、アイツに処女捧げちゃったんかぁあああああ」

「……いや、まさか俺の同級生だったとは思わなくて……」

「……ああ、まぁ……そうか。マミリンは、アイツのこと何も知らないもんね」

「……あの」

「ん?」

「ザギ……銀田とたろさんって、そもそもどんな関係なんですか?」

「……んー、あー……気になる?」

「……いや、別に……」

「……ふふっ、俺とアイツはねぇー……」

 俺は、別に本当に全然ドキドキなんてしていない。

「……ただの従兄弟でーーーすぅ」

「…………」

 なんだ……ただの従兄弟か。もちろん、全くホッとしてなんかいない。全然。

「……言われてみれば、確かに2人って、どこか雰囲気が似てるよね」

「ハァアアアアアアアッッ!? どこがぁ!?」

「……いや……えっと、体型とか?」

 2人共モデルかっつーくらいに、スラッと背が高いのだ。たぶん、どっちも山田よりデカイと思う。

 たろさんは、髪の毛を腰まで伸ばしてるせいでバンドマンの見た目だけど、これで髪が短くて、前髪も顔がはっきりと見える髪型になれば、俳優だと言われても全然不思議じゃない。それこそ、街を歩けば引っ切り無しに芸能関係者から、スカウトされそうなほど顔立ちも整っている。

 正統派の美男子である山田とはまた違う、少し切れ長の二重が、とても印象的な目元は、ノーマルの男だって落とせそうなくらい色気があるのだ。

 それに比べて俺は、黒目は小さいわ、奥二重だわで、目つき悪めだし、犬歯まで不格好ときちゃー、我ながら色気の欠片も見当たらない。

 こんな俺が、山田の隣に並んで釣り合うわけがないのだ。

「……でもやっぱ、アイツが悪いよ」

「……え」

「だってさ、ファンに手を出すのはご法度でしょ」

「たろさん、俺、銀田のファンなんかじゃないっスよ」

「わはは! いや何言ってんのよマミリン……めちゃめちゃファンじゃんか……って、んんん!?」

「いや、むしろ嫌いなタイプの人間だし……」

「ま、待って待って? ねぇ、マミリン、もしかして聞いてないの?」

「……何もって……何がスか?」

「……………………うっわー……俺はてっきり……」

「……え? なに? なになになに!?」

「いや、ほらー、全てを知った上で、タガが外れてエッチしちゃったんかと思ってたからさぁー」

「……いや……だから何なんすか?」

「そっかぁー、つまりマミリンは、銀田真として抱かれたわけね……」

 俺は、たろさんが何を言いたいのかサッパリ分からずに、どんどん不安が積もっていく。

「マミリンさぁー、銀田がなんの仕事してるのか、知りたい?」

「……ッ」

 俺は、思わずたじろいで、即答できずに黙り込んだ。
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