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第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
銀田真(24歳)、お金ならあります。
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オーケー、全てを理解した。
まとめると、こういうことだろ?
つまり、たろさんは、ザギンに対して俺が不利になるようなことは何一つ伝えていないし、全ての行動は、ただ俺を助けたいばかりに取った行動に過ぎないと。
一言でいうと、超良いヤツってこと。
それに対して俺は……。
仕事にかこつけて山田をホテルに連れ込んで、ことに及ぼうとするわ……絶賛自慰中の恋敵に助けを求めるわ……挙げ句の果てに、俺のことをストーカーみたいに異常に執着してくる元同級生のチ◯コに、自分から腰落として処女失うわ……。
……最低にも程があるだろうが!
昨日からの自分を冷静に振り返ると、あまりにも酷すぎる……。
一言でいうと……ただの、チ◯ポ大好き女装男じゃねえですか……。
もはや最低すぎて笑いが込み上げてくるレベルです……。
「……クッ……クッ……」
「どうしたの、みゃーちゃん?」
「……今すぐ……消えてしまいたい」
「そんな、早まったりなんかしちゃダメだよ、みゃーちゃん!」
「誰も、んなこた言ってねーわ……」
「……でも、みゃーちゃんが、そんなに残りの人生どうなってもいいなら」
言ってねーし。
「その残りの人生、全部、僕にちょうだい」
……は?
「ねぇ、僕に全部、買い取らせて? お願い!」
「…………」
「2億で」
「……にッ」
あ、やっべ、つい反応しちまった……。
だって、どんな規格外なことだろうと、コイツが言うと冗談に聞こえねぇんだよなぁ……。
「僕だったら、みゃーちゃんが働かなくても、一生笑って暮らせるだけのお金をいつでもあげられるし、ご飯だって毎日みゃーちゃんの好きなものを作ってあげるよ!」
なんだか、物事が、また一段と面倒くさい方向に進みだした気がする……。早めに止めとくか……。
「……あのなぁ」
「あっ、あと、好きなだけセックスしてあげるよ」
「……ッ」
アホな話に、気を抜いていたせいで、思わずビクンッと身体が反応してしまった。
「……あ、もちろん! みゃーちゃんが、したいときだけでいいよ。みゃーちゃんがして欲しいことなら、いつだって、何でも全部、してあげる」
随分とまぁ、自己犠牲の精神のお強いことで……。
「……お前はしたくねぇのかよ」
そう思わず口をついて出た。言い終わらない内に、しまった! と自分の失言を自覚したけど、予想に反してザギンは、特に何もピンと来ていないようだった。
「そんな、めっっそうもない! 僕が、みゃーちゃんに何かをさせるだとか、生れてこの方一度だって考えたこともないよ! それに、僕はもう、みゃーちゃんとの思い出だけで生きていけるくらいなんだ……それくらい今幸せなんだよ」
よくもまぁ、いけしゃあしゃあと調子の良いことを言うよ……と、半分は呆れて、半分は参った気持ちで、思わず俺は少し笑った。
記憶だけ……か。それなら、俺だって、山田との思い出を数え切れないくらい持ってるんだけどな。本当にそれだけで満足できるんだとしたら、そりゃー幸せだろうなァー……。
「……なぁ、お前って、俺が山田を好きなことも知ってたわけ?」
するとザギンは、途端に顔を歪めて苦々しい物でも食べたような声で言う。
「……いや……そいつの事は、脳が名前だと認識する直前でシナプスを破壊してたから永久に知らないんだよ……」
「知ってんじゃねぇか……」
「いや、知らないんだよ。陸人を傷つけるような奴のことなんて、知っちゃったら、何しでかすか自分でも分からないから……」
「…………」
……コイツ、俺を名前呼びするのって、マジで無自覚なのか?
なんか、コイツに呼び捨てにされると、通常時のヘタレキャラと別人格すぎて、素でビビるんだよな……これも人間の本能ってやつ?
「……あのさ、ちょっとだけ気になってんだけど……」
「なになになになに!?」
いや、食いつきがスゲェな。池の鯉か?
「お前の髪型ってやっぱ、銀之丞を意識してんのか?」
「……え?」
「……ほら、あの……お前、知んねーかな? 『ボクの初恋の人を紹介します。』って、5年くらい前にスゲー人気だったアニメなんだけど」
「……知らないもなにも……」
「ん?」
「そのラノベ、書いたの僕なんだけど」
「……ハハッ。おっまえなァー、マジでたまに電波みたいなこと言いだすよな」
「え? 電波って??」
「……んん? あー、いい、いい、別に。ってか、お前よく原作がラノベだって知ってたな。……いや、むしろ知ってて当然だよな! 今でこそだいぶブームが落ち着いてるけど、マジでラノベブームの火付け役って作品だもんな。しかも、まさかの金太真琴先生の処女作にして大ベストセラーになったという奇跡の作品だもんな!」
「……ふふっ、なんだか、みゃーちゃんに処女って言われると照れちゃうな」
「キモッ! いっちいち下ネタみたいに突っかかってくんの、マジで辞めろ!」
「ごめんごめん……でも、まさか、みゃーちゃんに読んでもらってたなんて、思ってもみなかったよ」
「さっきっから、その自作発言すんの、マジで辞めたほうがいいぞ……ファンが聞いたらソッコーでネットに吊し上げられっからな……」
「……え? ……だって……僕……。…………んんん!?」
その瞬間、みるみるザギンの顔色から血の気が引いていくのが、俺にも見て取れた。
ついさっきまで、やりたい放題、言いたい放題だった奴が、急に青ざめて黙りこくっていると、イイ気味だというよりも、むしろ大丈夫か? が、勝ってしまう……。
「……おっ、オイ……どうした? 具合悪いのか?」
でも、ザギンは、俺の声が届いていないかのように、両手で頭を抱え込んでしまった。
「……え? 僕のファンの子って……え? ……そういうこと!?」
「……おっ、おいってば……」
「……つまり僕はファンの子に対して……あんな……」
「……なぁ! 大丈夫かよ、銀田!?」
自分でも驚きだったが、そのとき突然、ザギンの本名を思い出したのだった。
「……え?」
「……え?」
言った俺も、言われたザギンも、思わず互いの顔をまじまじと見つめてしまう。
「……嬉しいっ、みゃーちゃん! 真って下の名前で呼んでくれたっていいんだよ?」
「るっせ! 呼ぶか! だぁほ!」
そんな冗談みたいなことを抜かしながらも、相変わらず顔色は悪く、表情も強張ってみえる。
その張り詰めた顔のままで、いきなり両肩を掴まれた。
「ちゃんと責任は取るからね!」
「……はぁ?」
「責任は必ず取ります!」
俺は、今にもキスされやしないかと、内心ヒヤヒヤしていたが、果たして俺の懸念は懸念で終わった。
ので、もちろん、ホッとした。
まとめると、こういうことだろ?
つまり、たろさんは、ザギンに対して俺が不利になるようなことは何一つ伝えていないし、全ての行動は、ただ俺を助けたいばかりに取った行動に過ぎないと。
一言でいうと、超良いヤツってこと。
それに対して俺は……。
仕事にかこつけて山田をホテルに連れ込んで、ことに及ぼうとするわ……絶賛自慰中の恋敵に助けを求めるわ……挙げ句の果てに、俺のことをストーカーみたいに異常に執着してくる元同級生のチ◯コに、自分から腰落として処女失うわ……。
……最低にも程があるだろうが!
昨日からの自分を冷静に振り返ると、あまりにも酷すぎる……。
一言でいうと……ただの、チ◯ポ大好き女装男じゃねえですか……。
もはや最低すぎて笑いが込み上げてくるレベルです……。
「……クッ……クッ……」
「どうしたの、みゃーちゃん?」
「……今すぐ……消えてしまいたい」
「そんな、早まったりなんかしちゃダメだよ、みゃーちゃん!」
「誰も、んなこた言ってねーわ……」
「……でも、みゃーちゃんが、そんなに残りの人生どうなってもいいなら」
言ってねーし。
「その残りの人生、全部、僕にちょうだい」
……は?
「ねぇ、僕に全部、買い取らせて? お願い!」
「…………」
「2億で」
「……にッ」
あ、やっべ、つい反応しちまった……。
だって、どんな規格外なことだろうと、コイツが言うと冗談に聞こえねぇんだよなぁ……。
「僕だったら、みゃーちゃんが働かなくても、一生笑って暮らせるだけのお金をいつでもあげられるし、ご飯だって毎日みゃーちゃんの好きなものを作ってあげるよ!」
なんだか、物事が、また一段と面倒くさい方向に進みだした気がする……。早めに止めとくか……。
「……あのなぁ」
「あっ、あと、好きなだけセックスしてあげるよ」
「……ッ」
アホな話に、気を抜いていたせいで、思わずビクンッと身体が反応してしまった。
「……あ、もちろん! みゃーちゃんが、したいときだけでいいよ。みゃーちゃんがして欲しいことなら、いつだって、何でも全部、してあげる」
随分とまぁ、自己犠牲の精神のお強いことで……。
「……お前はしたくねぇのかよ」
そう思わず口をついて出た。言い終わらない内に、しまった! と自分の失言を自覚したけど、予想に反してザギンは、特に何もピンと来ていないようだった。
「そんな、めっっそうもない! 僕が、みゃーちゃんに何かをさせるだとか、生れてこの方一度だって考えたこともないよ! それに、僕はもう、みゃーちゃんとの思い出だけで生きていけるくらいなんだ……それくらい今幸せなんだよ」
よくもまぁ、いけしゃあしゃあと調子の良いことを言うよ……と、半分は呆れて、半分は参った気持ちで、思わず俺は少し笑った。
記憶だけ……か。それなら、俺だって、山田との思い出を数え切れないくらい持ってるんだけどな。本当にそれだけで満足できるんだとしたら、そりゃー幸せだろうなァー……。
「……なぁ、お前って、俺が山田を好きなことも知ってたわけ?」
するとザギンは、途端に顔を歪めて苦々しい物でも食べたような声で言う。
「……いや……そいつの事は、脳が名前だと認識する直前でシナプスを破壊してたから永久に知らないんだよ……」
「知ってんじゃねぇか……」
「いや、知らないんだよ。陸人を傷つけるような奴のことなんて、知っちゃったら、何しでかすか自分でも分からないから……」
「…………」
……コイツ、俺を名前呼びするのって、マジで無自覚なのか?
なんか、コイツに呼び捨てにされると、通常時のヘタレキャラと別人格すぎて、素でビビるんだよな……これも人間の本能ってやつ?
「……あのさ、ちょっとだけ気になってんだけど……」
「なになになになに!?」
いや、食いつきがスゲェな。池の鯉か?
「お前の髪型ってやっぱ、銀之丞を意識してんのか?」
「……え?」
「……ほら、あの……お前、知んねーかな? 『ボクの初恋の人を紹介します。』って、5年くらい前にスゲー人気だったアニメなんだけど」
「……知らないもなにも……」
「ん?」
「そのラノベ、書いたの僕なんだけど」
「……ハハッ。おっまえなァー、マジでたまに電波みたいなこと言いだすよな」
「え? 電波って??」
「……んん? あー、いい、いい、別に。ってか、お前よく原作がラノベだって知ってたな。……いや、むしろ知ってて当然だよな! 今でこそだいぶブームが落ち着いてるけど、マジでラノベブームの火付け役って作品だもんな。しかも、まさかの金太真琴先生の処女作にして大ベストセラーになったという奇跡の作品だもんな!」
「……ふふっ、なんだか、みゃーちゃんに処女って言われると照れちゃうな」
「キモッ! いっちいち下ネタみたいに突っかかってくんの、マジで辞めろ!」
「ごめんごめん……でも、まさか、みゃーちゃんに読んでもらってたなんて、思ってもみなかったよ」
「さっきっから、その自作発言すんの、マジで辞めたほうがいいぞ……ファンが聞いたらソッコーでネットに吊し上げられっからな……」
「……え? ……だって……僕……。…………んんん!?」
その瞬間、みるみるザギンの顔色から血の気が引いていくのが、俺にも見て取れた。
ついさっきまで、やりたい放題、言いたい放題だった奴が、急に青ざめて黙りこくっていると、イイ気味だというよりも、むしろ大丈夫か? が、勝ってしまう……。
「……おっ、オイ……どうした? 具合悪いのか?」
でも、ザギンは、俺の声が届いていないかのように、両手で頭を抱え込んでしまった。
「……え? 僕のファンの子って……え? ……そういうこと!?」
「……おっ、おいってば……」
「……つまり僕はファンの子に対して……あんな……」
「……なぁ! 大丈夫かよ、銀田!?」
自分でも驚きだったが、そのとき突然、ザギンの本名を思い出したのだった。
「……え?」
「……え?」
言った俺も、言われたザギンも、思わず互いの顔をまじまじと見つめてしまう。
「……嬉しいっ、みゃーちゃん! 真って下の名前で呼んでくれたっていいんだよ?」
「るっせ! 呼ぶか! だぁほ!」
そんな冗談みたいなことを抜かしながらも、相変わらず顔色は悪く、表情も強張ってみえる。
その張り詰めた顔のままで、いきなり両肩を掴まれた。
「ちゃんと責任は取るからね!」
「……はぁ?」
「責任は必ず取ります!」
俺は、今にもキスされやしないかと、内心ヒヤヒヤしていたが、果たして俺の懸念は懸念で終わった。
ので、もちろん、ホッとした。
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