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第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
やらかしの太郎(27歳)。
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俺は、知らないと大嘘をついた。
なんなら、山田の電話番号が、俺のスマホの暗証番号だった。
「へぇ、そうなんだね」
意外そうな響きを含みながらも、何も知らないザギンの声はどこか、嬉しそうに聞こえる。
「……」
なにも、ザギンを喜ばしてやりたかったわけじゃない。……ただ、山田の連絡先を知っていたところで、そもそも俺から電話できるわけがないのだ。
ザギンの言う通り、本当に山田が俺に連絡を寄越していたとして、その山田の思惑が、俺にとって必ずしも良いものとは限らない。俺が山田にしたことを思えば、当たり前のことだ。
それにもし、山田が連絡をしていなかった場合に、俺から一方的に電話をすることは、山田にとって不愉快どころか、最悪のケースは恐怖を与えてしまいかねない。
俺は、山田に出るとこ出られて訴えられても、もしくは逮捕されたっておかしくないようなことをしてしまったんだ。
あのとき、山田はめちゃくちゃ興奮しているように見えたけど、それだって、単なる生理現象に過ぎないかもしれない。
山田に拒絶された以上、俺に歩み寄る術は何もないのだ。
もう、いっそ自首した方が良いんじゃないだろうか。入るとこに入って、物理的に山田絶ちをしたほうが、自分にとっても最善なことのように思えてきた。
まさに、俺と山田の関係は、このバグりまくったスマホみたいに、もうどうしようもない。
俺が、そんなことを考えているともしらずに、ザギンは、穏やかに微笑んでいる。
それが何だか無性に腹が立つが、悔しくてもここは頼らざるを得ない。
「……けど、まぁ……職場には連絡入れたいから、やっぱりスマホ貸してもらっていいか?」
「会社になら僕が電話しておいたよ」
「……え?」
「え?」
いや、おかしいおかしい!
「……どういう意味だよ」
「だから、みゃーちゃんの会社になら、僕から休む連絡入れといたよ」
「……うん……え? ちょい待て……俺、お前にどこで働いてるかなんて言ってねぇよな?」
「うん、太郎から聞いたよ」
……あんの、おしゃべりロン毛オナニーやろうめがぁああああああっっ!!
ハァハァ……ん?
「……なぁ……たろさんが、わざわざ俺の職場のことお前に伝えた意図が分からないんだが……」
終電逃した友人を泊めさせて欲しいだけなのに、フツー職場まで伝えるか? まぁ、伝えるかもか……いくら知り合いだからって素性が全く分からないヤツをいきなり泊めるわけにはいかないよな。
「よく太郎が、みゃーちゃんの話してくれるから、結構前から知ってたよ」
ハイ、ちょっと待ったぁああああッッ!!
「いや、なんでたろさんがお前に俺の話してるんだよ?」
……え? 待って、ちょっとガチで意味が分からないんですけど、え? たろさんがザギンに前々から俺のことを話してたってことか……? なにゆえ!?
「えっ……なん……え?」
「そんなの僕がみゃーちゃんのこと好きだからに決まってるでしょ」
「…………は?」
……え? つまり、たろさんは、ザギンが俺のことを好き(それも異常に)だって分かってて、俺に泊まるように仕向けたってこと!?
……あんのヤロー……まんまとハメやがったなぁあーーーーーッッ!?
さては、山田とどうにかなりたがってる俺のことを、体よく間引くチャンスだと踏んだな!?
人が人生最大に落ち込んでるのをいいことに……アイツめ……。
……って誰だよ、ソイツ。んなこと、たろさんがやるわきゃねーーーだろ。百歩……いや、千歩譲ってそうだったとしても、悪意があるわきゃねーーだろ。途方に暮れてる俺を、どうにか手助けしたかっただけに決まってるじゃねーか。
でも、コイツも、俺が来るって分かってて、待ち構えてたんだとすると……思い返すとめちゃめちゃ怖えな……。
そもそも最初ロビーで会った時、完全に初対面の体だったじゃねーか、コワッ!
たろさん……あなたの優しさが、思わぬ方向に力を発揮しちゃっています……。今の俺の状況を知ったら、さすがのあなたも一瞬で萎えるでしょう。
でも……たろさんを差し置いて、山田のビンビンのチ◯コを勝手に拝んじゃったんだもんな……このくらいの仕打ちを受けて、当然の身ですわ……。
まさか、こんな男に処女を捧げる羽目になるとは夢にも思わなかったけど……たろさん……あなたの思ってもみない形で、恋敵が強制退場させられそうです。
だって、たろさん……あなたの仲良しの恋敵は、好きでもない男の匂い嗅いだだけで、チ◯コが勃つようになっちゃったんですよ……。そんなん、ただの変態じゃないですか……。
こんな快楽堕ちした、ふしだらな身体で、山田に、好きだなんて言えるわけないよ……。
もう俺は、ダメです……何も、言う資格がありません……。
どうやら俺は、長かった片思いの戦場から離脱することになりそうです……。
「でもね、最初みゃーちゃんのことをクライアントの女の子かと勘違いしたとき、あんまりにも、みゃーちゃんにそっくりだったから、本当にビックリしたんだよ」
「そりゃー、俺が女装してんだから、似てるに決まってんだろ……」
「え? でもさ、僕、みゃーちゃんが来るだなんて夢にも思ってなかったから」
「……え」
「……え?」
「……今、なんつった?」
「みゃーちゃんに会えたなんて夢みたいだなぁーって」
「いや、そうじゃなくて……だって、お前、たろさんから俺が行くこと電話で聞いてたんだろ?」
「え? 聞いてないよ」
「……は?」
「僕のファンの子が来るとしか聞いてない」
……オイ太郎よ、おまえ超おしゃべりな癖して肝心なことは何にも言ってねぇええじゃねーーーーーかぁあああああッッ!!
いや、そこは言っとけよ……。
言っとけ……ください。
なんなら、山田の電話番号が、俺のスマホの暗証番号だった。
「へぇ、そうなんだね」
意外そうな響きを含みながらも、何も知らないザギンの声はどこか、嬉しそうに聞こえる。
「……」
なにも、ザギンを喜ばしてやりたかったわけじゃない。……ただ、山田の連絡先を知っていたところで、そもそも俺から電話できるわけがないのだ。
ザギンの言う通り、本当に山田が俺に連絡を寄越していたとして、その山田の思惑が、俺にとって必ずしも良いものとは限らない。俺が山田にしたことを思えば、当たり前のことだ。
それにもし、山田が連絡をしていなかった場合に、俺から一方的に電話をすることは、山田にとって不愉快どころか、最悪のケースは恐怖を与えてしまいかねない。
俺は、山田に出るとこ出られて訴えられても、もしくは逮捕されたっておかしくないようなことをしてしまったんだ。
あのとき、山田はめちゃくちゃ興奮しているように見えたけど、それだって、単なる生理現象に過ぎないかもしれない。
山田に拒絶された以上、俺に歩み寄る術は何もないのだ。
もう、いっそ自首した方が良いんじゃないだろうか。入るとこに入って、物理的に山田絶ちをしたほうが、自分にとっても最善なことのように思えてきた。
まさに、俺と山田の関係は、このバグりまくったスマホみたいに、もうどうしようもない。
俺が、そんなことを考えているともしらずに、ザギンは、穏やかに微笑んでいる。
それが何だか無性に腹が立つが、悔しくてもここは頼らざるを得ない。
「……けど、まぁ……職場には連絡入れたいから、やっぱりスマホ貸してもらっていいか?」
「会社になら僕が電話しておいたよ」
「……え?」
「え?」
いや、おかしいおかしい!
「……どういう意味だよ」
「だから、みゃーちゃんの会社になら、僕から休む連絡入れといたよ」
「……うん……え? ちょい待て……俺、お前にどこで働いてるかなんて言ってねぇよな?」
「うん、太郎から聞いたよ」
……あんの、おしゃべりロン毛オナニーやろうめがぁああああああっっ!!
ハァハァ……ん?
「……なぁ……たろさんが、わざわざ俺の職場のことお前に伝えた意図が分からないんだが……」
終電逃した友人を泊めさせて欲しいだけなのに、フツー職場まで伝えるか? まぁ、伝えるかもか……いくら知り合いだからって素性が全く分からないヤツをいきなり泊めるわけにはいかないよな。
「よく太郎が、みゃーちゃんの話してくれるから、結構前から知ってたよ」
ハイ、ちょっと待ったぁああああッッ!!
「いや、なんでたろさんがお前に俺の話してるんだよ?」
……え? 待って、ちょっとガチで意味が分からないんですけど、え? たろさんがザギンに前々から俺のことを話してたってことか……? なにゆえ!?
「えっ……なん……え?」
「そんなの僕がみゃーちゃんのこと好きだからに決まってるでしょ」
「…………は?」
……え? つまり、たろさんは、ザギンが俺のことを好き(それも異常に)だって分かってて、俺に泊まるように仕向けたってこと!?
……あんのヤロー……まんまとハメやがったなぁあーーーーーッッ!?
さては、山田とどうにかなりたがってる俺のことを、体よく間引くチャンスだと踏んだな!?
人が人生最大に落ち込んでるのをいいことに……アイツめ……。
……って誰だよ、ソイツ。んなこと、たろさんがやるわきゃねーーーだろ。百歩……いや、千歩譲ってそうだったとしても、悪意があるわきゃねーーだろ。途方に暮れてる俺を、どうにか手助けしたかっただけに決まってるじゃねーか。
でも、コイツも、俺が来るって分かってて、待ち構えてたんだとすると……思い返すとめちゃめちゃ怖えな……。
そもそも最初ロビーで会った時、完全に初対面の体だったじゃねーか、コワッ!
たろさん……あなたの優しさが、思わぬ方向に力を発揮しちゃっています……。今の俺の状況を知ったら、さすがのあなたも一瞬で萎えるでしょう。
でも……たろさんを差し置いて、山田のビンビンのチ◯コを勝手に拝んじゃったんだもんな……このくらいの仕打ちを受けて、当然の身ですわ……。
まさか、こんな男に処女を捧げる羽目になるとは夢にも思わなかったけど……たろさん……あなたの思ってもみない形で、恋敵が強制退場させられそうです。
だって、たろさん……あなたの仲良しの恋敵は、好きでもない男の匂い嗅いだだけで、チ◯コが勃つようになっちゃったんですよ……。そんなん、ただの変態じゃないですか……。
こんな快楽堕ちした、ふしだらな身体で、山田に、好きだなんて言えるわけないよ……。
もう俺は、ダメです……何も、言う資格がありません……。
どうやら俺は、長かった片思いの戦場から離脱することになりそうです……。
「でもね、最初みゃーちゃんのことをクライアントの女の子かと勘違いしたとき、あんまりにも、みゃーちゃんにそっくりだったから、本当にビックリしたんだよ」
「そりゃー、俺が女装してんだから、似てるに決まってんだろ……」
「え? でもさ、僕、みゃーちゃんが来るだなんて夢にも思ってなかったから」
「……え」
「……え?」
「……今、なんつった?」
「みゃーちゃんに会えたなんて夢みたいだなぁーって」
「いや、そうじゃなくて……だって、お前、たろさんから俺が行くこと電話で聞いてたんだろ?」
「え? 聞いてないよ」
「……は?」
「僕のファンの子が来るとしか聞いてない」
……オイ太郎よ、おまえ超おしゃべりな癖して肝心なことは何にも言ってねぇええじゃねーーーーーかぁあああああッッ!!
いや、そこは言っとけよ……。
言っとけ……ください。
応援ありがとうございます!
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