24 / 48
第二章 間違いが、正解を教えてくれる。
やらかしの太郎(27歳)。
しおりを挟む
俺は、知らないと大嘘をついた。
なんなら、山田の電話番号が、俺のスマホの暗証番号だった。
「へぇ、そうなんだね」
意外そうな響きを含みながらも、何も知らないザギンの声はどこか、嬉しそうに聞こえる。
「……」
なにも、ザギンを喜ばしてやりたかったわけじゃない。……ただ、山田の連絡先を知っていたところで、そもそも俺から電話できるわけがないのだ。
ザギンの言う通り、本当に山田が俺に連絡を寄越していたとして、その山田の思惑が、俺にとって必ずしも良いものとは限らない。俺が山田にしたことを思えば、当たり前のことだ。
それにもし、山田が連絡をしていなかった場合に、俺から一方的に電話をすることは、山田にとって不愉快どころか、最悪のケースは恐怖を与えてしまいかねない。
俺は、山田に出るとこ出られて訴えられても、もしくは逮捕されたっておかしくないようなことをしてしまったんだ。
あのとき、山田はめちゃくちゃ興奮しているように見えたけど、それだって、単なる生理現象に過ぎないかもしれない。
山田に拒絶された以上、俺に歩み寄る術は何もないのだ。
もう、いっそ自首した方が良いんじゃないだろうか。入るとこに入って、物理的に山田絶ちをしたほうが、自分にとっても最善なことのように思えてきた。
まさに、俺と山田の関係は、このバグりまくったスマホみたいに、もうどうしようもない。
俺が、そんなことを考えているともしらずに、ザギンは、穏やかに微笑んでいる。
それが何だか無性に腹が立つが、悔しくてもここは頼らざるを得ない。
「……けど、まぁ……職場には連絡入れたいから、やっぱりスマホ貸してもらっていいか?」
「会社になら僕が電話しておいたよ」
「……え?」
「え?」
いや、おかしいおかしい!
「……どういう意味だよ」
「だから、みゃーちゃんの会社になら、僕から休む連絡入れといたよ」
「……うん……え? ちょい待て……俺、お前にどこで働いてるかなんて言ってねぇよな?」
「うん、太郎から聞いたよ」
……あんの、おしゃべりロン毛オナニーやろうめがぁああああああっっ!!
ハァハァ……ん?
「……なぁ……たろさんが、わざわざ俺の職場のことお前に伝えた意図が分からないんだが……」
終電逃した友人を泊めさせて欲しいだけなのに、フツー職場まで伝えるか? まぁ、伝えるかもか……いくら知り合いだからって素性が全く分からないヤツをいきなり泊めるわけにはいかないよな。
「よく太郎が、みゃーちゃんの話してくれるから、結構前から知ってたよ」
ハイ、ちょっと待ったぁああああッッ!!
「いや、なんでたろさんがお前に俺の話してるんだよ?」
……え? 待って、ちょっとガチで意味が分からないんですけど、え? たろさんがザギンに前々から俺のことを話してたってことか……? なにゆえ!?
「えっ……なん……え?」
「そんなの僕がみゃーちゃんのこと好きだからに決まってるでしょ」
「…………は?」
……え? つまり、たろさんは、ザギンが俺のことを好き(それも異常に)だって分かってて、俺に泊まるように仕向けたってこと!?
……あんのヤロー……まんまとハメやがったなぁあーーーーーッッ!?
さては、山田とどうにかなりたがってる俺のことを、体よく間引くチャンスだと踏んだな!?
人が人生最大に落ち込んでるのをいいことに……アイツめ……。
……って誰だよ、ソイツ。んなこと、たろさんがやるわきゃねーーーだろ。百歩……いや、千歩譲ってそうだったとしても、悪意があるわきゃねーーだろ。途方に暮れてる俺を、どうにか手助けしたかっただけに決まってるじゃねーか。
でも、コイツも、俺が来るって分かってて、待ち構えてたんだとすると……思い返すとめちゃめちゃ怖えな……。
そもそも最初ロビーで会った時、完全に初対面の体だったじゃねーか、コワッ!
たろさん……あなたの優しさが、思わぬ方向に力を発揮しちゃっています……。今の俺の状況を知ったら、さすがのあなたも一瞬で萎えるでしょう。
でも……たろさんを差し置いて、山田のビンビンのチ◯コを勝手に拝んじゃったんだもんな……このくらいの仕打ちを受けて、当然の身ですわ……。
まさか、こんな男に処女を捧げる羽目になるとは夢にも思わなかったけど……たろさん……あなたの思ってもみない形で、恋敵が強制退場させられそうです。
だって、たろさん……あなたの仲良しの恋敵は、好きでもない男の匂い嗅いだだけで、チ◯コが勃つようになっちゃったんですよ……。そんなん、ただの変態じゃないですか……。
こんな快楽堕ちした、ふしだらな身体で、山田に、好きだなんて言えるわけないよ……。
もう俺は、ダメです……何も、言う資格がありません……。
どうやら俺は、長かった片思いの戦場から離脱することになりそうです……。
「でもね、最初みゃーちゃんのことをクライアントの女の子かと勘違いしたとき、あんまりにも、みゃーちゃんにそっくりだったから、本当にビックリしたんだよ」
「そりゃー、俺が女装してんだから、似てるに決まってんだろ……」
「え? でもさ、僕、みゃーちゃんが来るだなんて夢にも思ってなかったから」
「……え」
「……え?」
「……今、なんつった?」
「みゃーちゃんに会えたなんて夢みたいだなぁーって」
「いや、そうじゃなくて……だって、お前、たろさんから俺が行くこと電話で聞いてたんだろ?」
「え? 聞いてないよ」
「……は?」
「僕のファンの子が来るとしか聞いてない」
……オイ太郎よ、おまえ超おしゃべりな癖して肝心なことは何にも言ってねぇええじゃねーーーーーかぁあああああッッ!!
いや、そこは言っとけよ……。
言っとけ……ください。
なんなら、山田の電話番号が、俺のスマホの暗証番号だった。
「へぇ、そうなんだね」
意外そうな響きを含みながらも、何も知らないザギンの声はどこか、嬉しそうに聞こえる。
「……」
なにも、ザギンを喜ばしてやりたかったわけじゃない。……ただ、山田の連絡先を知っていたところで、そもそも俺から電話できるわけがないのだ。
ザギンの言う通り、本当に山田が俺に連絡を寄越していたとして、その山田の思惑が、俺にとって必ずしも良いものとは限らない。俺が山田にしたことを思えば、当たり前のことだ。
それにもし、山田が連絡をしていなかった場合に、俺から一方的に電話をすることは、山田にとって不愉快どころか、最悪のケースは恐怖を与えてしまいかねない。
俺は、山田に出るとこ出られて訴えられても、もしくは逮捕されたっておかしくないようなことをしてしまったんだ。
あのとき、山田はめちゃくちゃ興奮しているように見えたけど、それだって、単なる生理現象に過ぎないかもしれない。
山田に拒絶された以上、俺に歩み寄る術は何もないのだ。
もう、いっそ自首した方が良いんじゃないだろうか。入るとこに入って、物理的に山田絶ちをしたほうが、自分にとっても最善なことのように思えてきた。
まさに、俺と山田の関係は、このバグりまくったスマホみたいに、もうどうしようもない。
俺が、そんなことを考えているともしらずに、ザギンは、穏やかに微笑んでいる。
それが何だか無性に腹が立つが、悔しくてもここは頼らざるを得ない。
「……けど、まぁ……職場には連絡入れたいから、やっぱりスマホ貸してもらっていいか?」
「会社になら僕が電話しておいたよ」
「……え?」
「え?」
いや、おかしいおかしい!
「……どういう意味だよ」
「だから、みゃーちゃんの会社になら、僕から休む連絡入れといたよ」
「……うん……え? ちょい待て……俺、お前にどこで働いてるかなんて言ってねぇよな?」
「うん、太郎から聞いたよ」
……あんの、おしゃべりロン毛オナニーやろうめがぁああああああっっ!!
ハァハァ……ん?
「……なぁ……たろさんが、わざわざ俺の職場のことお前に伝えた意図が分からないんだが……」
終電逃した友人を泊めさせて欲しいだけなのに、フツー職場まで伝えるか? まぁ、伝えるかもか……いくら知り合いだからって素性が全く分からないヤツをいきなり泊めるわけにはいかないよな。
「よく太郎が、みゃーちゃんの話してくれるから、結構前から知ってたよ」
ハイ、ちょっと待ったぁああああッッ!!
「いや、なんでたろさんがお前に俺の話してるんだよ?」
……え? 待って、ちょっとガチで意味が分からないんですけど、え? たろさんがザギンに前々から俺のことを話してたってことか……? なにゆえ!?
「えっ……なん……え?」
「そんなの僕がみゃーちゃんのこと好きだからに決まってるでしょ」
「…………は?」
……え? つまり、たろさんは、ザギンが俺のことを好き(それも異常に)だって分かってて、俺に泊まるように仕向けたってこと!?
……あんのヤロー……まんまとハメやがったなぁあーーーーーッッ!?
さては、山田とどうにかなりたがってる俺のことを、体よく間引くチャンスだと踏んだな!?
人が人生最大に落ち込んでるのをいいことに……アイツめ……。
……って誰だよ、ソイツ。んなこと、たろさんがやるわきゃねーーーだろ。百歩……いや、千歩譲ってそうだったとしても、悪意があるわきゃねーーだろ。途方に暮れてる俺を、どうにか手助けしたかっただけに決まってるじゃねーか。
でも、コイツも、俺が来るって分かってて、待ち構えてたんだとすると……思い返すとめちゃめちゃ怖えな……。
そもそも最初ロビーで会った時、完全に初対面の体だったじゃねーか、コワッ!
たろさん……あなたの優しさが、思わぬ方向に力を発揮しちゃっています……。今の俺の状況を知ったら、さすがのあなたも一瞬で萎えるでしょう。
でも……たろさんを差し置いて、山田のビンビンのチ◯コを勝手に拝んじゃったんだもんな……このくらいの仕打ちを受けて、当然の身ですわ……。
まさか、こんな男に処女を捧げる羽目になるとは夢にも思わなかったけど……たろさん……あなたの思ってもみない形で、恋敵が強制退場させられそうです。
だって、たろさん……あなたの仲良しの恋敵は、好きでもない男の匂い嗅いだだけで、チ◯コが勃つようになっちゃったんですよ……。そんなん、ただの変態じゃないですか……。
こんな快楽堕ちした、ふしだらな身体で、山田に、好きだなんて言えるわけないよ……。
もう俺は、ダメです……何も、言う資格がありません……。
どうやら俺は、長かった片思いの戦場から離脱することになりそうです……。
「でもね、最初みゃーちゃんのことをクライアントの女の子かと勘違いしたとき、あんまりにも、みゃーちゃんにそっくりだったから、本当にビックリしたんだよ」
「そりゃー、俺が女装してんだから、似てるに決まってんだろ……」
「え? でもさ、僕、みゃーちゃんが来るだなんて夢にも思ってなかったから」
「……え」
「……え?」
「……今、なんつった?」
「みゃーちゃんに会えたなんて夢みたいだなぁーって」
「いや、そうじゃなくて……だって、お前、たろさんから俺が行くこと電話で聞いてたんだろ?」
「え? 聞いてないよ」
「……は?」
「僕のファンの子が来るとしか聞いてない」
……オイ太郎よ、おまえ超おしゃべりな癖して肝心なことは何にも言ってねぇええじゃねーーーーーかぁあああああッッ!!
いや、そこは言っとけよ……。
言っとけ……ください。
10
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。


鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる