【完結】大好きなラノベ作家の正体が初めてを捧げたワンナイトラブの相手だったので今すぐに爆発します。

コウヨリモカ@新作ヒーヒー執筆中✏️💦

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第一章 別れの後に、出会いがある。

その男の名は、ナンバー2(仮)。

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 少しシャクではあったが、俺は、その男の店員がすすめて寄越したラノベ本を、読んでみることにしたのだった。


 ラノベという小説は、男の言う通り、確かに初心者にも読みやすいものだった。

 それまで、活字なんて教科書くらいでしか読んだことがなかったわけなんだけど、買った本は、そんな俺でも不思議なくらいスラスラと読むことができた。

 なにやら文体にその秘密があるようだったけれど、なんせ他の小説を知らないから、具体的に何がどう違うかなどはよく分からない。

 ただ、現代文の教科書に出てくるような難しい言い回しは一つも出てこなかった。

 確かに漫画では無いけれど、絵がない漫画を読んでる感じとでも言うんだろうか。

 とどのつまり俺は、すっかりラノベに夢中になってしまった。

 その俺が買った本こそが、まさに金太真琴先生が書いたラノベ本だったのである。

 そのときの俺は、まさか好きな男に話しかけるためのネタとして読んだだけの小説の、下心抜きで、大ファンになってしまうだなんて、夢にも思っていなかった。


 その日のうちに一冊読み切ってしまうと、次の日の学校帰りに、俺はまた本屋を訪れた。


 小説のラノベ売り場の棚まで直行すると、金太真琴先生の本は、なんと平積みされていた。次の2巻を探すも、見当たらないので、金太真琴先生の名前のプレートが差し込まれた棚の中を探すも、やはり俺が昨日買ったばかりの1巻しか見当たらない。

 あまりにも人気で売り切れ中なんだろうかと、ふと平積みに飾られている手書きポップに目をやると、そこには、

「金太真琴先生! 堂々のデビュー作!」

 と書いてあったので、ようやく納得した。


 俺が買った本は、先生のデビュー作だったのだ。


 金太真琴先生のセンセーショナルなデビュー作は、いわゆる学園モノだった。

 そのストーリーは、こんな感じだ。


 舞台は、とある町の中学3年生たちが繰り広げるファンタジー学園ラブコメだ。

 ある日、主人公の少年が、クラスで1番暗い女の子と隣の席になってしまう。

 その子は、いつもノートに何やら文章をひたすら書いてるのだけど、ある日ひょんなことから、そのノートを主人公は手にすることになる。

 出来心から、つい主人公がノートを開いてしまうと、なんと主人公はその場から消えていなくなってしまう。

 実は、そのノートには、女の子の自作小説が書かれていて、主人公は、その女の子の作った物語の世界に閉じ込められてしまったのだ。

 そして、その架空の世界の中で、主人公は、自身にとって、とても大切な人と出会うことになる……とまぁ、こんな話だ。



 その主人公の担任の先生が、俺の推しキャラクターなのだけれど、たろさんの友人である、この銀髪長身の男が、推しにとてもよく似ているのだ。


 この先生、「銀乃昇ぎんのしょう」という名前なのだけれど、それを「銀賞」と生徒たちにもじられて、「ナンバー2」というあだ名を付けられているんだけど、キャラクターデザインが、まさに銀髪なのだ。

 銀髪で長身、そしてトレードマークが青い瞳なのだけれど、なんと、目の前にいる男の目も異国の少年のように美しいブルーだったのだ。

 それで、俺は、警察への自首を促されながらも、思わずウットリと男を見つめるしかなかったというわけ。

 いや、だって、まさか、自分の推しキャラが、現実に存在するとか思わねーじゃん?

 コミケか、ここは。


 俺が成すすべもなくナンバー2(仮)を前にして立ちすくんでいると、男は、ふと何かを思い出したように、ハッとした顔をした。

 そして、顎に手を当て、しばらく考え込んでいたが、ゆっくり目を閉じた後で、もう一度俺に向き直った。

「こちらの勝手な都合ですが……」

 男は、まず、そう前置きをして言った。

「実は今日、土壇場で大変申し訳ないのですが、先ほどキャンセルのお電話を入れておりました……お電話が繋がらないので、留守番電話に一方的にご連絡させていただいています…………だが、しかし!」

 ……!?

 もちろん俺のスマホに男から電話はかかってきていないし、留守番電話だって入っていない。

 ……なんか、引っかかるぞ。


 俺が、自分の抱いた違和感を確認するべく、男に向かって口を開こうとした、その瞬間だった。

「……んあっ!?」

 何のつもりか、男は突然に俺の手をグイッと引っ張ると、元来たエレベーターの方に向かって、歩き出したのだ。

「……ここでは人目につくので、私の診察室で、少しだけお話しましょう」

 ……ん? 診察室って言ったか、今?

「……ん何のって……うわっ」

 男にエスコートされてエレベーターの中に入ると、全面ガラス張りのエレベーターは、みるみる上昇していった。


 そして、そこから見える景色は、東京の大中心地を独り占めするような素晴らしい夜景だった。

 手を差し伸べれば届きそうな場所に、東京タワーが赤く浮かび上がっていた。

 俺は思わず、自分の立場も忘れて、その美しい夜景に心を奪われてしまった。

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