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第一章 別れの後に、出会いがある。

まさかの警察沙汰!?

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 電話の男に言われた通りにマンションの入口を探すと、なるほど確かに自動ドアの入口が見つかった。

 自動ドアとはいえ、建物自体がバカでかすぎるせいで、隠し通路の入口みたいに思える。

 意外にもドアの大きさ自体は、俺の地元にあるような普通のマンションのそれと変わらないくらいだ。

 まあ、ドアのサイズにだって規格があるわけだし、そんなの当たり前っちゃー当たり前の話なんだが……。

 イメージ的には、東京ドームの入口くらいのドアが付いていてもおかしくないくらいのマンションではある。


 入ってすぐそこは、エントランスになっているようだった。

 そこまで広いとも思わないが、向かって右奥にコンシェルジュの受付があって、左手奥にはエレベーターがいくつも並んでいる。

 それ以外は、ほとんどただのスペース状態でガランとしていたが、入ってすぐの左手前に見るからに高そうなソファーと、バカでかいクリスマスツリーが飾ってあった。

 ツリーの足元には、インテリアとしてキラキラとしたプレゼントの箱がいくつも置いてあって、もちろんそういう演出なんだろうけれど、とにかくめちゃくちゃセンスがいい。

 俺の仕事でも、こういう空間デザインを扱うことも実はあるんだけど、素人目にも確実にプロの手が入っているのが一目見てよく分かった。

 でも、男の姿はどこにも見当たらない。

 俺は、まさかヨレヨレの女装姿でコンシェルジュに話しかけるわけにもいかず、ましてやソファーに腰掛けて男が来るのを優雅に待つこともできず、クリスマスツリーの近くまで行くと、ぼんやりと立ち尽くすより他なかった。

 仕方がないから、いかにも、ツリーがキレイだから、ちょっと見ているだけですよ、的な感じを強引に装うことにした。

 もちろん、午前3時過ぎにボロボロの格好でクリスマスツリーを見上げている女装をした、ただのヤバ過ぎる男でしかない。

 まだ誰も座らせたことのないような、お飾りみたいにピカピカな高級ソファーを横目に、俺とお前とどっちが虚しいんだろうな、なんてさげすみたくなる。


 しかし、こういう場違いなところに来ると、本当に自分のちいささを思い知らされるようで、しんどいもんなんだな……。

 ついさっきまで趣味の悪いラブホにいたせいで、余計にそんな惨めな気持ちがした。

 こんな時間に人が出入りするとも思えないけど、せめて、できるだけ人目につかないようにして待とう。

 ツリーの陰になっている辺りに身を隠そうとすると、スマートな機械音と共にエレベーターのドアが開いて、中からモデルのようにスラリとした長身の男が現れた。

 その見た目に、思わず俺は一瞬思考が停止してしまう。

 髪が銀色だったのだ。


「……アッ……!?」

 その姿を目にすると、俺は自分の状況は全て忘れ去ってしまって、挨拶さえもできずに、口を開きかけたまま、マジマジと男を凝視してしまった。

 長身の男は、エントランスまで来ると、キョロキョロと周囲を見回していたが、ほどなくして言葉を無くして立ち尽くしたまま、子供みたいな出来損ないの隠れんぼをしている俺の姿が目に止まったようだった。

 俺の女装姿のせいか、一瞬、足が止まったが、男は、思い直したように足早に俺の元へと近づいてきた。

「警察には?」

 そう、眼の前までやってきた男に、開口一番に言われた。


 へ?

 ケーサツ??


 思いもよらない言葉に、俺は自分に対して掛けられたという実感が湧かずに、しばらくぼんやりと頭の中でその言葉をはんすうしていた。

 今、ケーサツ……っつったよな。ケーサツって言えば、いわゆる、おまわりさんのこと?

 ケーサツには???

 えっと……つまり、俺はケーサツに、行けと?

 ……自首しろってこと!?

 そこで、ようやくサーッと頭のてっぺんから一気に血の気が引いていった。

 えっ……待って待って!

 ちょっ、え。

 なんの罪で??

 ……えっ、心当たりがありすぎて逆にどうしよう……。


「大丈夫?」


 しかし、パニック状態になっている俺に、男は意外なほど慈悲深い眼差しで、労りの言葉を投げかけてきたのだった。

 俺に優しく自首を促してくる、この銀髪の男。

 実は、俺の大好きなラノベ作品の推しキャラに激似だったのである。

 マジで……本当に、どうしよう!?

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