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第一章 別れの後に、出会いがある。
断じて俺は、女装男子ではない。
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誤解のないように言わせてもらうと、そもそも、俺が女装しているのは、山田を色仕掛けで落としにかかっていたからじゃない。
今日(もう昨日か)、自分の仕事の関係で、急きょCMのイメージ映像を撮ることになったんだけど、俺がそのプロジェクトのリーダーだってこともあり……あとは、まぁ、半ばイジられも入って、何故か俺が女のモデル役を担当する羽目になっちゃったのだ。
しかも、よりによって、そんな日に限って、山田を仕事とかこつけて、小料理屋に呼び出していて、なんと女も交えた食事会を夜に控えていた。
なのに俺はというと、女装させられた挙げ句、最悪なことに、その悪ノリが大ウケしてしまい、仕事終わりの予定時刻をとうに過ぎて、食事会の時間に盛大に遅刻してしまっていた。
その食事会には、山田の職場のキレイどころが何人も集まることになっていたから、俺は気が気じゃなく、やっとの思いで仕事を切り上げるなり、猛ダッシュで現場へと飛んだのだった。もちろん、女装姿のままで。
さて、現地に着いてみりゃ、不安的中、まさに山田のキャバクラデビュー状態で、女たちの動きから片時も目が離せないし、マジで仕事どころの騒ぎじゃない。
挙句の果てに、酔い潰れた山田が、隣に座っていた女に膝枕なんてされ始めてるもんだから、もうこっちは我慢の限界だったっつーわけよ。
あのなー、こう言っちゃなんだけど……あんな、ポッと出の美女に持ってかれるくらいなら、たろさんに奪われたほうがよっほどマシなんだわ。
俺は、たろさんに、今日の経緯を簡単に説明した。
もちろん、泥酔した山田を、こんな状態じゃ、一人でとても家まで帰れないだろうからと、都合よくラブホテルに連れ込んだことも正直に話した。
俺が女装していたこともあってか、ラブホテルに入ること自体には、ホテルや通りすがりの客からは何のお咎めもなかったのは幸いだった。
まあ、意識が無い状態の、大の男を、女が肩を貸して歩いてること以上におかしな事もないような気もするけども……。
どう考えても、不自然すぎるだろ。(笑)
じゃあ、なんでって? だって興味がないんだ。 ……そりゃあそうだ。こんな大都会で、わざわざ他人の誰かのアレやコレやに目をつけてみたところで、そんなの誰だって時間のムダに決まってる。それが、都会の冷たさであり……寛容さなのだ。
俺の話を一通り聞き終えたあとで、たろさんは「うーん……」と電話の向こうで、しばらく何かを熟考しているようだった。
こんな時間だ、無理もない。
「……あの、大丈夫です。悪いのは俺なんで、たろさんが悩むことなんかじゃないからね」
「……いや……そこから割と近くに住んでる知り合いがいるには、いるんだけど……」
「……はぁ」
たろさんは、何故だか珍しく歯切れが悪かった。
「ただ……そいつ、ちょっと難アリっていうか……なんつーか……特殊な仕事してるときあるからさ」
「……はぁ」
いや、この辺に、たろさんの知り合いが住んでるって……ここ、都内でも有数の高級立地だよな……?
え? ……たろさんに、そんな金持ちの知り合いがいるなんて、正直あんまし想像つかないけど……。
まさか、たろさんを囲ってる愛人とか……か?
俺が性癖全開の妄想を繰り広げだしたところで、たろさんは、ようやく心を決めたようだった。
「ちょっと、念のため、そいつに今確認してみるわ」
「えっ!?」
今!? 午前3時過ぎに!?
そんな、俺の不安が伝わったのかもしれない。
「あー、安心しろって! 元からそいつ、昼も夜もねえーようなヤツだからさ」
いや、逆に不安になるんすけど、それ……。
でも、俺がそんな自分のモヤモヤした感情を言葉にするよりも先に、電話は切れたのだった。
今日(もう昨日か)、自分の仕事の関係で、急きょCMのイメージ映像を撮ることになったんだけど、俺がそのプロジェクトのリーダーだってこともあり……あとは、まぁ、半ばイジられも入って、何故か俺が女のモデル役を担当する羽目になっちゃったのだ。
しかも、よりによって、そんな日に限って、山田を仕事とかこつけて、小料理屋に呼び出していて、なんと女も交えた食事会を夜に控えていた。
なのに俺はというと、女装させられた挙げ句、最悪なことに、その悪ノリが大ウケしてしまい、仕事終わりの予定時刻をとうに過ぎて、食事会の時間に盛大に遅刻してしまっていた。
その食事会には、山田の職場のキレイどころが何人も集まることになっていたから、俺は気が気じゃなく、やっとの思いで仕事を切り上げるなり、猛ダッシュで現場へと飛んだのだった。もちろん、女装姿のままで。
さて、現地に着いてみりゃ、不安的中、まさに山田のキャバクラデビュー状態で、女たちの動きから片時も目が離せないし、マジで仕事どころの騒ぎじゃない。
挙句の果てに、酔い潰れた山田が、隣に座っていた女に膝枕なんてされ始めてるもんだから、もうこっちは我慢の限界だったっつーわけよ。
あのなー、こう言っちゃなんだけど……あんな、ポッと出の美女に持ってかれるくらいなら、たろさんに奪われたほうがよっほどマシなんだわ。
俺は、たろさんに、今日の経緯を簡単に説明した。
もちろん、泥酔した山田を、こんな状態じゃ、一人でとても家まで帰れないだろうからと、都合よくラブホテルに連れ込んだことも正直に話した。
俺が女装していたこともあってか、ラブホテルに入ること自体には、ホテルや通りすがりの客からは何のお咎めもなかったのは幸いだった。
まあ、意識が無い状態の、大の男を、女が肩を貸して歩いてること以上におかしな事もないような気もするけども……。
どう考えても、不自然すぎるだろ。(笑)
じゃあ、なんでって? だって興味がないんだ。 ……そりゃあそうだ。こんな大都会で、わざわざ他人の誰かのアレやコレやに目をつけてみたところで、そんなの誰だって時間のムダに決まってる。それが、都会の冷たさであり……寛容さなのだ。
俺の話を一通り聞き終えたあとで、たろさんは「うーん……」と電話の向こうで、しばらく何かを熟考しているようだった。
こんな時間だ、無理もない。
「……あの、大丈夫です。悪いのは俺なんで、たろさんが悩むことなんかじゃないからね」
「……いや……そこから割と近くに住んでる知り合いがいるには、いるんだけど……」
「……はぁ」
たろさんは、何故だか珍しく歯切れが悪かった。
「ただ……そいつ、ちょっと難アリっていうか……なんつーか……特殊な仕事してるときあるからさ」
「……はぁ」
いや、この辺に、たろさんの知り合いが住んでるって……ここ、都内でも有数の高級立地だよな……?
え? ……たろさんに、そんな金持ちの知り合いがいるなんて、正直あんまし想像つかないけど……。
まさか、たろさんを囲ってる愛人とか……か?
俺が性癖全開の妄想を繰り広げだしたところで、たろさんは、ようやく心を決めたようだった。
「ちょっと、念のため、そいつに今確認してみるわ」
「えっ!?」
今!? 午前3時過ぎに!?
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「あー、安心しろって! 元からそいつ、昼も夜もねえーようなヤツだからさ」
いや、逆に不安になるんすけど、それ……。
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