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第二章(謎解きのおわり)
アップサイドダウン。
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いくら太郎さんが、腰まで長い髪だったとしたって、太郎さんの身長を考えれば、女性だと思うほうが不自然にも思える。
だって、太郎さんは、推定でも180センチ以上は、ゆうにあるからだ。
ならば、どうして僕は、そんな超高身長の男を女性と見間違えてしまったのか。
単純に一言でいうと、僕も背が高いからである。
正確な数字は自分でも、忘れちゃって分からないが、たぶん180後半くらいはあるんじゃないか?
日常で生活していて、自分より背の高い人間には滅多に出会ったことがない。
まあ、このインドア系の性格のせいもあるんだろうけど。
ちなみに、いくら背が高いとはいえ、ひょろひょろのため、体育会系の勧誘の類からは人生レベルで無縁です。
な、もんだから、自分より背の高い人間なら、遠目からでもすぐに気がつくが(そういうものなんです)、自分より少しでも低い人間に対しては察知能力はゼロに等しかった。
太郎さんが、本屋で恥をかいた相手だったことに気を取られているうちに、僕はいつの間にか部屋まで通されていた。
「……ハッ、あれ? 受付とかは?」
「あー、ナイナイ。あって無きようなもんだから」
「……あって無きようなもの!?」
「……こんなとこに、顔がっつり合わせる受付なんかあるほうがヤベーだろうが」
太郎さんは、苦々しげな口調で呆れたように言った。
「……なんだか……お詳しいんですね」
「……あー? なんだ、嫌味か?」
「……いえ、別に……」
「言っとくけどなあー……」
そう言いながら、太郎さんは、ドカッとベッドに腰かけた。
「俺も、こういうとこ来んの、実は初めてだ」
「……えっ、ラブホ来たことないんですか?」
「……ワリーかよ」
「……いやっ、そんなことは……」
……意外だ。
めちゃくちゃに意外である。
そして、何故だか心のどこかでホッとしている自分のことも……意外だった。
「えっと、どこがいいかなー」
太郎さんは、スマホを片手にキョロキョロとベッドの周りを確認していたが、
「やっぱ、ここかなあー」
そう言いながら、天井の黒い器具にパチンッとスマホを装着した。
「……え? なんですか、それ」
「フフンッ」
その含み笑いだけで、すでに何か良からぬことを考えていることが、僕には分かった。
だてにツイッターくんだりまでしての付き合いじゃない。
「ここがあー、マミリンの特等席ね」
「特等席!? っていうか、なんでスマホを天井にくっつけられるんですか!?」
「さあー、知らね。この部屋、AVの撮影にでも使われてたんじゃねえ?」
「……んエッ!?」
「ワハハ! お前って意外とリアクション芸人だよなー、ウケるー」
いや、なんっっにも面白くないですね。
ちょっと、待て。
こんな、裏寂れたラブホなんかに連れて来られて、そんで、間宮をベッドの上の天井に貼り付けられた状態で、さっきの本屋の話の続きをしようとでもいうのだろうか?
いやいやいやいやいやいや!
ナイナイナイナイナイナイ!!
僕は思わず耐えきれずにドアを開けようとした。
「逃げんな」
でも、その次の瞬間には、太郎さんに強く腕を引き寄せられて、気がついたときには、目の前に見えているのは天井だった。
……ナニガオキタ?
……いや、待って。この人めちゃくちゃ力強くない? ねえ、ほんとにこの人の仕事って、本屋のバイトなの?
まさか背が高い自分が、こんなにも、たやすく男にベッドに押し倒されてしまうとは、思ってもみなかった。
あれ? なんか、またデジャヴ……いや……そうそう、間宮との……いや、え?
そうだよ、天井のスマホから、間宮に全部見られているんだった。
だって、太郎さんは、推定でも180センチ以上は、ゆうにあるからだ。
ならば、どうして僕は、そんな超高身長の男を女性と見間違えてしまったのか。
単純に一言でいうと、僕も背が高いからである。
正確な数字は自分でも、忘れちゃって分からないが、たぶん180後半くらいはあるんじゃないか?
日常で生活していて、自分より背の高い人間には滅多に出会ったことがない。
まあ、このインドア系の性格のせいもあるんだろうけど。
ちなみに、いくら背が高いとはいえ、ひょろひょろのため、体育会系の勧誘の類からは人生レベルで無縁です。
な、もんだから、自分より背の高い人間なら、遠目からでもすぐに気がつくが(そういうものなんです)、自分より少しでも低い人間に対しては察知能力はゼロに等しかった。
太郎さんが、本屋で恥をかいた相手だったことに気を取られているうちに、僕はいつの間にか部屋まで通されていた。
「……ハッ、あれ? 受付とかは?」
「あー、ナイナイ。あって無きようなもんだから」
「……あって無きようなもの!?」
「……こんなとこに、顔がっつり合わせる受付なんかあるほうがヤベーだろうが」
太郎さんは、苦々しげな口調で呆れたように言った。
「……なんだか……お詳しいんですね」
「……あー? なんだ、嫌味か?」
「……いえ、別に……」
「言っとくけどなあー……」
そう言いながら、太郎さんは、ドカッとベッドに腰かけた。
「俺も、こういうとこ来んの、実は初めてだ」
「……えっ、ラブホ来たことないんですか?」
「……ワリーかよ」
「……いやっ、そんなことは……」
……意外だ。
めちゃくちゃに意外である。
そして、何故だか心のどこかでホッとしている自分のことも……意外だった。
「えっと、どこがいいかなー」
太郎さんは、スマホを片手にキョロキョロとベッドの周りを確認していたが、
「やっぱ、ここかなあー」
そう言いながら、天井の黒い器具にパチンッとスマホを装着した。
「……え? なんですか、それ」
「フフンッ」
その含み笑いだけで、すでに何か良からぬことを考えていることが、僕には分かった。
だてにツイッターくんだりまでしての付き合いじゃない。
「ここがあー、マミリンの特等席ね」
「特等席!? っていうか、なんでスマホを天井にくっつけられるんですか!?」
「さあー、知らね。この部屋、AVの撮影にでも使われてたんじゃねえ?」
「……んエッ!?」
「ワハハ! お前って意外とリアクション芸人だよなー、ウケるー」
いや、なんっっにも面白くないですね。
ちょっと、待て。
こんな、裏寂れたラブホなんかに連れて来られて、そんで、間宮をベッドの上の天井に貼り付けられた状態で、さっきの本屋の話の続きをしようとでもいうのだろうか?
いやいやいやいやいやいや!
ナイナイナイナイナイナイ!!
僕は思わず耐えきれずにドアを開けようとした。
「逃げんな」
でも、その次の瞬間には、太郎さんに強く腕を引き寄せられて、気がついたときには、目の前に見えているのは天井だった。
……ナニガオキタ?
……いや、待って。この人めちゃくちゃ力強くない? ねえ、ほんとにこの人の仕事って、本屋のバイトなの?
まさか背が高い自分が、こんなにも、たやすく男にベッドに押し倒されてしまうとは、思ってもみなかった。
あれ? なんか、またデジャヴ……いや……そうそう、間宮との……いや、え?
そうだよ、天井のスマホから、間宮に全部見られているんだった。
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