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第二章(謎解きのおわり)
たろちゃんの願掛け。
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僕は、目の前で、繰り広げられている「片想い」だとか「告白」だとかのワードより、本屋で営業時間中にプライベートな件で盛り上がっていることの方に意識がいってしまっていた。
よって、女の子たちと太郎さんのやりとりは、ほぼ聞き流していたといっていい。
そんな僕の様子に、我慢の限界突破でもしたのか、あかりちゃんは、レジの中へ入ると、おもむろに太郎さんの背中を押してレジの外まで引っ張り出してきた。
太郎さんは、何も言わずに、ただ目だけを少し泳がせている。
改めて、太郎さんのヘアスタイルを間近でみると、後ろで一つ結びにされた黒髪は、太郎さんの腰付近まで長かった。
思わず、そのロングヘアーをまじまじと見ていると、あかりちゃんが、そんな僕の目線に気がついた。
「……大体ねえ、たろちゃんが、こんな髪の毛伸ばすことになったのだって、あなたが原因なんですよ」
「……え?」
なぜ? 何故すぎる……。
「たろちゃんが、ここでバイト始めて間もなく、あなたに一目惚れをした日から、願掛けして髪を伸ばすことにしたんですから」
「あっ……いや、髪が長い方が目立つかなって思っただけだって……」
さすがに沈黙し続けることに耐えかねたのか、太郎さんが堪らんという感じで口を開いた。
いや……否定せんのかい!
……いや、違くて……そうじゃなくてさあー!
「……あのですね」
僕は、そっと小さいポーズで右手を挙げた。
「……なんですか」
ちっとも受け入れ態勢では無かったけれども、僕は続けた。
「一目惚れをしたのは、デジ……太郎さんの方では無くてですね」
「えっ!? あなたも太郎ちゃんに一目惚れをしていたの!?」
あかりちゃんだけではなく、女の子たち全員に一気に緊張感と期待の眼差しが向けられたので、僕はタジタジとなりながらも、答えた。
「僕はですね、太郎さんの描いたイラストに一目惚れをしたんです」
「……あー」
今度は一気に場が冷え込んでしまい、僕は、いよいよ冷や汗をかきはじめていた。
「確かに太郎ちゃんは、絵が上手いですよ。なんたって、人気小説家の挿絵も描いたことがあるんですから」
……え。
えええええええええええっっ!?
「……うわっ、ちょっと……大丈夫ですか?」
驚きのあまりに僕は、漫画みたいな尻もちをついてしまった。
「……で、デジャヴさん……あなたって、プロ絵師さんだったのですか……」
「……ん? ……ああ、オレか。いや、プロっていうか、友情出演?」
「友情出演!?」
「……あ、いやあ……なんてーか、小説書いてる知り合いがいて、そいつに表紙描いてくれって頼まれたんだよ」
「ええっ!? プロの小説家さんのお友達がいらっしゃるんですか!?」
この期に及んで、僕は思わず鼻息を荒くしてしまった。
「……あー、アレだぞ? プロっつっても、お前が期待してるような純文学じゃねーぞ、ラノベだラノベ」
「……」
僕は思わず息を飲んだ。驚いたというよりも、後ろめたかったせいで。
「……あっ、そーだ。せっかく本屋なんだし、この子に太郎ちゃんの描いた作品見せたらいーんじゃない?」
女の子たちからの、気の利いたような一言がきっかけとなって、あかりちゃんが「んじゃ! 探してきまーす!」と、嬉しそうにラノベの棚へと向かっていく。
どことなく、誇らしげにしてる彼女たちの気持ちをよそに、僕は、ただ一人、とてつもなく嫌な予感がしていた……。
よって、女の子たちと太郎さんのやりとりは、ほぼ聞き流していたといっていい。
そんな僕の様子に、我慢の限界突破でもしたのか、あかりちゃんは、レジの中へ入ると、おもむろに太郎さんの背中を押してレジの外まで引っ張り出してきた。
太郎さんは、何も言わずに、ただ目だけを少し泳がせている。
改めて、太郎さんのヘアスタイルを間近でみると、後ろで一つ結びにされた黒髪は、太郎さんの腰付近まで長かった。
思わず、そのロングヘアーをまじまじと見ていると、あかりちゃんが、そんな僕の目線に気がついた。
「……大体ねえ、たろちゃんが、こんな髪の毛伸ばすことになったのだって、あなたが原因なんですよ」
「……え?」
なぜ? 何故すぎる……。
「たろちゃんが、ここでバイト始めて間もなく、あなたに一目惚れをした日から、願掛けして髪を伸ばすことにしたんですから」
「あっ……いや、髪が長い方が目立つかなって思っただけだって……」
さすがに沈黙し続けることに耐えかねたのか、太郎さんが堪らんという感じで口を開いた。
いや……否定せんのかい!
……いや、違くて……そうじゃなくてさあー!
「……あのですね」
僕は、そっと小さいポーズで右手を挙げた。
「……なんですか」
ちっとも受け入れ態勢では無かったけれども、僕は続けた。
「一目惚れをしたのは、デジ……太郎さんの方では無くてですね」
「えっ!? あなたも太郎ちゃんに一目惚れをしていたの!?」
あかりちゃんだけではなく、女の子たち全員に一気に緊張感と期待の眼差しが向けられたので、僕はタジタジとなりながらも、答えた。
「僕はですね、太郎さんの描いたイラストに一目惚れをしたんです」
「……あー」
今度は一気に場が冷え込んでしまい、僕は、いよいよ冷や汗をかきはじめていた。
「確かに太郎ちゃんは、絵が上手いですよ。なんたって、人気小説家の挿絵も描いたことがあるんですから」
……え。
えええええええええええっっ!?
「……うわっ、ちょっと……大丈夫ですか?」
驚きのあまりに僕は、漫画みたいな尻もちをついてしまった。
「……で、デジャヴさん……あなたって、プロ絵師さんだったのですか……」
「……ん? ……ああ、オレか。いや、プロっていうか、友情出演?」
「友情出演!?」
「……あ、いやあ……なんてーか、小説書いてる知り合いがいて、そいつに表紙描いてくれって頼まれたんだよ」
「ええっ!? プロの小説家さんのお友達がいらっしゃるんですか!?」
この期に及んで、僕は思わず鼻息を荒くしてしまった。
「……あー、アレだぞ? プロっつっても、お前が期待してるような純文学じゃねーぞ、ラノベだラノベ」
「……」
僕は思わず息を飲んだ。驚いたというよりも、後ろめたかったせいで。
「……あっ、そーだ。せっかく本屋なんだし、この子に太郎ちゃんの描いた作品見せたらいーんじゃない?」
女の子たちからの、気の利いたような一言がきっかけとなって、あかりちゃんが「んじゃ! 探してきまーす!」と、嬉しそうにラノベの棚へと向かっていく。
どことなく、誇らしげにしてる彼女たちの気持ちをよそに、僕は、ただ一人、とてつもなく嫌な予感がしていた……。
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