ことこと煮込んだら

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「………アタリ」

様子がおかしいアタリに、ゆっくりと近づこうとすると、ノラさんがフーッ!と威嚇して腕から飛び出す

顔色が悪く、真っ青なアタリが心配で駆け寄ると、アタリに物凄い力でかき抱かれた

腕の力が強すぎて呻いても、アタリは黙ったまま首に唇を当てたまま何も言わない

いつの間にか、外の嵐から雨が止んだようだった

ふー、ふー、と息も荒く、ただ抱きしめてきているアタリになんとなく頭を撫でる

そのまま抱き上げられて、出て行こうとするので慌ててアタリのシャツを引っ張る

「あ!アタリ、猫!ノラさん!俺のペット!猫!飼っていいでしょう?」

「……うん、うん。いいよ。もう何もダメって言わない…夜須がしたいこと、していい……だから、帰ろう?」

力無いアタリの声に内心、ギョッとしながらアタリの腕から抜け出してノラさんを抱き上げる

ノラさんはアタリを警戒しているみたいだけど、さっきみたいな威嚇はしなかった

アタリから差し出された温かな手を握る

「帰ろう」

俺の言葉に泣きそうな表情を浮かべたアタリと手を繋いで帰るのを、花子が呆然と見送っていた

「ねえ、夜須、僕と一緒になってもいい?」


帰り道にアタリがポツリと聞いてきたので首を傾げる

「僕みたいな化け物みたいになってもいい?」

不安そうに揺れる瞳でアタリに聞かれて、少し考える

「アタリと一緒なら、ずっと一緒にいられるってこと?」

「うん。海にも一緒に行けるし、その…寿命も少し…かなり長くなる」

「アタリは俺に、そうなって欲しい?」

聞くと、アタリは唇を噛む。そうなって欲しいんだろう

「寂しかったの?」

「夜須がいなくて、寂しかった…もう会えないかとも思った。まだ早いかとも思うけど、もう耐えられない」

腕を引かれて、抱き寄せられる

「当たり前だよね。婚約者が現れても、見捨てずに、ずっと好きで…アタリが何をしても、俺だけは味方になってあげるね」

アタリの頬を撫でると、アタリは笑いながら俺の手を頬に当てる

「僕たちにも色々あってね、決まりで種の温存で仕方なかったんだよ。でも、夜須が受け入れてくれるなら、話は違う」

ん?と思っていると、ノラさんごと抱き上げられて、アタリが爽やかに笑う

「夜須、今日は嫌がっても何をしてもやめてあげられないけれど…受け入れてくれてありがとう」

「ん?は?え?ちょっと待って、なんかやらしい話?なんかやらしい話な気がする、これ」

笑いながら車に連れ込まれ、アタリの部屋の方に引き摺られるようにして連れて行かれる

「待って!待って!ノラさんいるから!ノラさんの環境整えてからじゃなきゃ何もしないから!」

叫ぶと、アタリの動きが止まる

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