38 / 52
間話2
しおりを挟むずっと夜須が大きくなるまでは、海の中から見守ろうと思っていたのに僕には誤算があった
島中に大々的に夜須を花嫁だと知らせるには、白花を立てなければならず、白花を立てられると花嫁は自動的に捧げられることになる
それは大いにいいのだが、まだ精通もしていない幼い夜須でも、やっと現れた番なのだ
我慢できる自信がなかった
匂いだけでも頭がくらくらするし、唇に吸い付いて体を暴きたくなる
触れるだけで昂るし、頭も熱で浮かされたように、ぼんやりしてしまう
化け物は、番に弱いのだ。番が絡むと正常な判断すら失う
我慢で気が狂いそうだった
そして、僕を煽るもう一つの誤算は、雅だった
夜須が懐いていて気を許している目障りな存在
夜須に触れ、抱きしめ、目を愛おしさで細めている、奴は危険だ
それで、あの夜、ベタベタといつまでも夜須に触る雅に我慢できなくなって砂浜で遊んでいる夜須達の前に姿を現してしまった
近くで見る夜須は可愛くて、いい匂いで、素直で優しい子だった
一生懸命、鯨を見に来たのだと、キラキラとした目で説明する姿に口元が緩む
番の願いは出来る限り叶えてあげたい
大きな鯨を見せてあげると、どちらかといえば大人しいたちの夜須は今までに見たことがないくらい喜んでいた
抱きつかれて、身体中がのぼせあがり歓喜したあの瞬間を忘れないだろう
そして、それを邪魔をしたのも雅だった
どこまでも邪魔な男
人間は男同士は禁忌だと聞いていたのに、雅の目は、はっきりと夜須が好きだと物語っていた
忌々しさを感じながらも、当たり前だが夜須には全く気がなさそうなので、暫く様子を見ることにした
こっぴどく振られるがいいとまで思っていた
今思えば、この段階で邪魔者は消しておくべきだったのだ
まさか、夜須が雅にあれほど懐き頼るとは思わなかった
逃げ場をなくせば、頼る人がいなければ、あれほどまでに夜須が頑なになることもなかっただろうに
そして、もう一つの誤算は僕にも一応、人としての身分がある。夜須が大きくなるまでは、僕の血を分け与えず、血を与えると不老不死に近い形になるが、歳を取らなくなってしまうので、まだ子供の夜須には与えられなかった
なので、人である間人としての生活が必要だと思い、享の時代から土地や財産を取得していた所にある
外から来た同族の娘
桃名 紗南を嫁にしろと押しかけられた所にある
種の保存の為の婚姻は、断れば夜須を害するとまで伝えてきた
特に婚姻において本当に産卵の時にだけ用事を済ませてくれれば良いという条件だけだったのだ
それなのに、毎週日曜日に買い物に付き合えと、呼び出されていた
それも夜須に血を与えるまでの我慢、そう思っていた
夜須の身を案じたのもあるが、これは本当に断るべきだった
それが、あんなに夜須を傷つけることになるなんて
143
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説


転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。


「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる