ことこと煮込んだら

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間話2

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ずっと夜須が大きくなるまでは、海の中から見守ろうと思っていたのに僕には誤算があった

島中に大々的に夜須を花嫁だと知らせるには、白花を立てなければならず、白花を立てられると花嫁は自動的に捧げられることになる

それは大いにいいのだが、まだ精通もしていない幼い夜須でも、やっと現れた番なのだ

我慢できる自信がなかった

匂いだけでも頭がくらくらするし、唇に吸い付いて体を暴きたくなる

触れるだけで昂るし、頭も熱で浮かされたように、ぼんやりしてしまう

化け物は、番に弱いのだ。番が絡むと正常な判断すら失う

我慢で気が狂いそうだった

そして、僕を煽るもう一つの誤算は、雅だった

夜須が懐いていて気を許している目障りな存在

夜須に触れ、抱きしめ、目を愛おしさで細めている、奴は危険だ

それで、あの夜、ベタベタといつまでも夜須に触る雅に我慢できなくなって砂浜で遊んでいる夜須達の前に姿を現してしまった

近くで見る夜須は可愛くて、いい匂いで、素直で優しい子だった

一生懸命、鯨を見に来たのだと、キラキラとした目で説明する姿に口元が緩む

番の願いは出来る限り叶えてあげたい

大きな鯨を見せてあげると、どちらかといえば大人しいたちの夜須は今までに見たことがないくらい喜んでいた

抱きつかれて、身体中がのぼせあがり歓喜したあの瞬間を忘れないだろう

そして、それを邪魔をしたのも雅だった

どこまでも邪魔な男

人間は男同士は禁忌だと聞いていたのに、雅の目は、はっきりと夜須が好きだと物語っていた

忌々しさを感じながらも、当たり前だが夜須には全く気がなさそうなので、暫く様子を見ることにした

こっぴどく振られるがいいとまで思っていた

今思えば、この段階で邪魔者は消しておくべきだったのだ

まさか、夜須が雅にあれほど懐き頼るとは思わなかった

逃げ場をなくせば、頼る人がいなければ、あれほどまでに夜須が頑なになることもなかっただろうに

そして、もう一つの誤算は僕にも一応、人としての身分がある。夜須が大きくなるまでは、僕の血を分け与えず、血を与えると不老不死に近い形になるが、歳を取らなくなってしまうので、まだ子供の夜須には与えられなかった

なので、人である間人としての生活が必要だと思い、享の時代から土地や財産を取得していた所にある

外から来た同族の娘

桃名 紗南を嫁にしろと押しかけられた所にある

種の保存の為の婚姻は、断れば夜須を害するとまで伝えてきた

特に婚姻において本当に産卵の時にだけ用事を済ませてくれれば良いという条件だけだったのだ

それなのに、毎週日曜日に買い物に付き合えと、呼び出されていた

それも夜須に血を与えるまでの我慢、そう思っていた

夜須の身を案じたのもあるが、これは本当に断るべきだった

それが、あんなに夜須を傷つけることになるなんて







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