30 / 52
30
しおりを挟む「そのままの意味で、気に入られるって事だよ。でも……」
爺が遠い目で言うが、俺の気持ちはモヤモヤしだした。
それって、アタリがお父さんを好きだったってこと?めちゃくちゃ嫌なんですけど
「享の時は、白花は立てられなかったな。成人しても白花は立たなかった。夜須は、すぐに立っただろ?だから、何をもって魅入られたのかわからない」
お茶を啜りながら言う爺は複雑な表情を浮かべていたが、窓にぽつぽつ雨が降り出したので、慌てて礼を言って美鈴さんのところに戻る
雨が強くなってきたのでタクシーに乗り込んでホテルに戻ると、ロビーにアタリがいた
黒い髪を後ろに撫で付けて、あれから身長がめきめき伸びているアタリは大人と変わりない
元々、大人っぽくはあったけれど、イケメンなので周りの人が遠巻きに見ているのがわかる
「アタリ、来たんだ!」
嬉しくなって駆け寄ると、肩を抱かれて部屋に戻ろうと言われ、美鈴さんを何回か振り返りながらアタリと部屋に戻る
当たり前だけれど美鈴さんは違う部屋だそうだ
そして、驚いたことに美鈴さんの荷物はアタリのものだったらしい
「最初から一緒に来れば良かったのに」
「ちょっと用事があったから。小百合は元気だった?」
「いや…あんまり喋れなかった…」
何となく言い辛くて言葉を濁すと、アタリが両腕を広げたので、黙ってハグすると、ぎゅうと手に力がこもった
「夜須、大丈夫だからね?大丈夫、大丈夫」
とんとんと背中を軽く叩かれて、一気に涙腺が緩んで、アタリにしがみついてわんわん泣いてしまった
アタリのシャツがぐちゃぐちゃになってしまったが、アタリは変わらず優しく頭を撫でてくれたり、たまに頭のてっぺんに唇を付けたりしてくる
「夜須、小百合は大丈夫だから」
ぐずぐず泣きながら、アタリの言葉に頷く
肝心な事は何一つ聞けないまま、寝入ってしまっで夜中に起きたらアタリと目があって慌てて飛び起きた
ずっと見てたんだろうか?なんか恥ずかしい
「ご、ごめん。寝ちゃってたみたい」
しかも涎まで垂らしてた。口を拭きながら起き上がるとアタリは慈愛の様な笑顔を浮かべて頬をさらりと撫でる
「うん。まだ眠い?目が覚めた?お腹すいてない?」
なんか世話を焼く親鳥のように聞いてこられて、お腹が空いたと言うとルームサービスを頼んでくれた
「待ってる間、シャワー浴びてきたら?」
爽やかに言われて、浴室に行くとガラス張りで外からも丸見えだった
アタリが手を振ってるのに答えながら、この中入るの?と思いながらシャツに手をかけるとアタリがガン見してる
126
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説


転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。


「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる