ことこと煮込んだら

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「そのままの意味で、気に入られるって事だよ。でも……」

爺が遠い目で言うが、俺の気持ちはモヤモヤしだした。

それって、アタリがお父さんを好きだったってこと?めちゃくちゃ嫌なんですけど

「享の時は、白花は立てられなかったな。成人しても白花は立たなかった。夜須は、すぐに立っただろ?だから、何をもって魅入られたのかわからない」

お茶を啜りながら言う爺は複雑な表情を浮かべていたが、窓にぽつぽつ雨が降り出したので、慌てて礼を言って美鈴さんのところに戻る

雨が強くなってきたのでタクシーに乗り込んでホテルに戻ると、ロビーにアタリがいた

黒い髪を後ろに撫で付けて、あれから身長がめきめき伸びているアタリは大人と変わりない

元々、大人っぽくはあったけれど、イケメンなので周りの人が遠巻きに見ているのがわかる

「アタリ、来たんだ!」

嬉しくなって駆け寄ると、肩を抱かれて部屋に戻ろうと言われ、美鈴さんを何回か振り返りながらアタリと部屋に戻る

当たり前だけれど美鈴さんは違う部屋だそうだ

そして、驚いたことに美鈴さんの荷物はアタリのものだったらしい

「最初から一緒に来れば良かったのに」

「ちょっと用事があったから。小百合は元気だった?」

「いや…あんまり喋れなかった…」

何となく言い辛くて言葉を濁すと、アタリが両腕を広げたので、黙ってハグすると、ぎゅうと手に力がこもった

「夜須、大丈夫だからね?大丈夫、大丈夫」

とんとんと背中を軽く叩かれて、一気に涙腺が緩んで、アタリにしがみついてわんわん泣いてしまった

アタリのシャツがぐちゃぐちゃになってしまったが、アタリは変わらず優しく頭を撫でてくれたり、たまに頭のてっぺんに唇を付けたりしてくる

「夜須、小百合は大丈夫だから」

ぐずぐず泣きながら、アタリの言葉に頷く

肝心な事は何一つ聞けないまま、寝入ってしまっで夜中に起きたらアタリと目があって慌てて飛び起きた

ずっと見てたんだろうか?なんか恥ずかしい

「ご、ごめん。寝ちゃってたみたい」

しかも涎まで垂らしてた。口を拭きながら起き上がるとアタリは慈愛の様な笑顔を浮かべて頬をさらりと撫でる

「うん。まだ眠い?目が覚めた?お腹すいてない?」

なんか世話を焼く親鳥のように聞いてこられて、お腹が空いたと言うとルームサービスを頼んでくれた

「待ってる間、シャワー浴びてきたら?」

爽やかに言われて、浴室に行くとガラス張りで外からも丸見えだった

アタリが手を振ってるのに答えながら、この中入るの?と思いながらシャツに手をかけるとアタリがガン見してる

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