ことこと煮込んだら

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「は?好きな人がいるの…?夜須?」

両腕をまとめて押さえつけられて、泣きながら目を逸らす

好きな人がいるのは、アタリじゃないかと。なんで俺にこんなことするんだと怒鳴ったやりたい気持ちになったが、アタリの顔が辛そうに歪むのを見て何も言えなくなった

なんで、そんな傷ついた顔をするのか。傷ついたのは俺の方だ

汗ばんでいく肌から汗がひいて寒くなってきた気がする

押さえつけられて、のしかかられているのでアタリが着ているシャツの感触で変な感じだ

唇を噛んで黙って泣いていると、ゆらりとアタリが体を起こして、凄むような目で見ているのがわかる

ぐいっと顎を持たれて顔を上げさせられたら、口がアタリの唇で塞がれる

腕を動かそうとしても力が強すぎてびくともしなくて、柔らかい唇が角度を変えて何度も啄み、ぬるりとした舌が口内に侵入してくる

舐めとるように舌を刺激され唸り声しか出ず、息が苦しいまま舌を絡めて喉を舌で突かれる

「ゔっ、ゔゔっ、あっ、やめで、ぐっ」

丁寧に唇を舐め取り、手淫で下半身を刺激され、腰を逃がそうとするけれど脚で押さえられ乳首を指で刺激されながら、他人からの予測できない刺激に泣きながら何度も達する

「ふっ、うう…うっ、ぐっ…うう…」

ずっと長い時間、唇が腫れるくらいアタリはキスをやめずに縋るような顔で両頬を撫でられる

「自由にさせすぎた…」

後悔が滲むような声で言われて、アタリの抑える力が弱くなったので服をかき集める。シャツを着ながら泣く俺をアタリは呆然としたように、それを眺めていた

震える手でボタンを止めて、近くにあったハンドタオルで汚してしまった腹や下半身を拭くと、アタリが立ち上がった

「………どのみち白花は立てる。諦めろ。夜須、準備があるから、今日は帰るけど逃げないように。逃げたら、次は小百合が酷い目にあうよ?」

ばっと振り返るとアタリは物凄い美貌だからか無表情突っ立っていて怖い

無言のまま、ふいっと出ていくアタリに、残された俺は泣くことしかできなかった

その日のうちに玄関の門に白い花が立てられて、島中、大騒ぎになった

史実で探しても、白花が立てられた家はないので島一番の長老でも文献をひっくり返して、言い伝え通りの手順で儀式をしようということになった

ただ、白花がたったのが尾前家だったのだが、俺ではないだろうと、親類の中の女の子が湖底で身を清めて花嫁衣装を着て崖壁で儀式を行うことになった

厳かに岸壁に向かう一行の松明の火を眺め見送りながら、ばあちゃんと会いたいと思った

アタリが何で、あんなことしたのかが解らない。あれは恋人同士がすることじゃないんだろうか?








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