16 / 52
16
しおりを挟む雅からもらった食事も尽きようとする頃、俺のお腹が鳴った
外は相変わらず嵐で、雨と風が凄い
一応、庭には自生していたネギやトマト、インゲンなんかがあるが、俺は肉が食べたかった
魚も捕まえに行けばあるかもしれないが、今はまだ嵐だ
しかしどうやら俺の村八分は島全域のようで、本当に何も売ってもらえないし、食事処にも拒否されるという徹底ぷりだった
学校、学校に行けば給食があるから、肉が食べれるかもしれない
ごきゅりと息を呑む
ふらふらとシャツを着て、スラックスを履く
いくら何でも学校でも、この状態ということはないだろう
傘をさして学校に行くと、皆んなが俺を見ている気がする
しかし振り向くと、顔を逸らすのだ。何なんだこの異様な空気は
挨拶をしても誰も返してくれず、居心地が悪いまま教室に入るも同じだった
「あ、呉崎おはよう」
呉崎を見つけて声をかけると短い悲鳴をあげて足早に山城を引っ張って去っていく
しかも、俺の机と椅子も無くなっていた
「せ、先生、俺の机がないんですけど」
「えっ……ああ、うん」
担任は歯切れの悪い返事をしてから、普通に授業を始める
異様な空気と、まるで俺がいないかのような振る舞いに体が強張る
何も出来ずに、ただ突っ立っていると後ろからくすくす笑われる声まで聞こえてきた
助けを求めるようにアタリを見ると、アタリはニコニコしながら俺を見つめていた
ぞっとするような目の笑顔に目を逸らす
こんな状況、アタリが仕組んだわけじゃないよな?
いつの間にか雨が止んでいて、陽も射してきたのに寒気で鳥肌が止まらない
何で皆んな俺がいないかのように振る舞うの?存在がないみたいに
居た堪れなくて、教室から飛び出して祖母の家に戻る
心臓が抉られるように痛い
こんな事、可能なのか?俺は何をしてしまったのだろう
これはもう島全体から拒否されている
呆然として縁側に座っていたら、玄関から怒鳴り声が聞こえてくる
恐々と出てみると、喪服を着た雅のおじさんとおばさんが来ていた
2人とも顔を真っ赤にして恐ろしい顔で、雅のよく使っていたヘルメットを投げつけてきた
腕に当たって、じんじんと痛む腕を押さえる
「お前の!お前のせいだ!!雅を返して!雅を返してよぉ!!」
おじさんに押さえられながら、おばさんが髪を振り乱して泣き喚く
「雅にいちゃんに何かあったの?」
ヘルメットがぶつかった腕を押さえながら聞くと、おばさんは怨嗟のこもったドロリとした目で睨みつけてくる
「お前がああああああ!!!お前が死ねばよかったんだあ!!雅が!雅がどうして!!」
「夜須君、雅は君に良くしてあげてただろう?どうして巻き込むような真似をしたんだ?どうして雅を巻き込んだんだ!!」
おじさんはおばさんはしばらく喚いて、泣きながら崩れたおばさんをおじさんが庇うようにして帰っていったが、信じられなくて玄関に座り込んだ
雅にいちゃんが死んだ?なんで?なにが起こってるの?
『あと6日、嵐が続くだけで雅に二度と会えなくなるよ。夜須、優しく言ってるうちに言うことをきけ。まだ幼いから大目に見てるんだぞ?』
何故かアタリの言葉が蘇ってくる。そういえば、海が荒れて今日で1週間じゃなかっただろうか
島の掟で、7日以上嵐が続いたらなんかするみたいな掟があった気がする
嵐がいつの間にかやんでいて、晴天の中、不安と焦燥感から雅にいちゃんのアパートに向かう
凪いだ海はキラキラ水面が光っていて海岸通りの雅のアパートは喪服を着た人たちと制服を着た生徒でいっぱいになっていた
ちょうどお葬式の最中なのか呆然と遠くから見ていると、全員がこちらを睨んでいる気がして逃げ出すように家に走り戻る
息を切らして縁側に崩れ落ちて嗚咽を漏らす
本当に雅にいちゃん、いなくなってしまったんだ
どうしてと聞く相手もいない
ひとしきり泣いて起き上がると、もう夕方になっていた
もう食料もないし、学校も、もう怖くて行けない
どうしてこんな事になったんだろう
102
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説


転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。


「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる