ことこと煮込んだら

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「いいよ。つか、ばあちゃん良くならないの?」

「お見舞い行きたいんだけど、隣の爺が駄目だって…お盆とお正月だけは帰ってくるから一緒に過ごせるんだけど、隣でお世話になってるから、あんまり…」

「そうなんだ」

「……帰りたくないなぁ」

畳でゴロゴロしながら呟く。まあ着替えとかもないし、どのみち帰らなきゃいけないんだけどアタリと顔を合わせるのが気まずい

「俺んち泊まる?」

雅の言葉にぴたりと止まる。お言葉に甘えてもいいんだろうか?

今思えばアタリの家に、お世話になってから他の家に泊まったことがない。祖母の家ですら

今日は日曜日でアタリも帰って来ないことも多いから、いいだろうか?

「み、美鈴さんに連絡してみる。晩御飯もいらないって言っておかないと」

アタリに持たされているスマホでメールだけ入れておく。そのままなんとなく干渉されたくなくて電源を切った

連絡なくても悲しすぎだけど

なんか時間を置きたいというか、心の整理をする時間が欲しい

今まで正直アタリしかみてなかったし、優しすぎるし、見た目もかっこよすぎてモデルかなんかみたいに見える美形にお世話されまくって正直、依存していたし神とまで崇めているアタリが恋人じゃないという衝撃

俺の人生はアタリ一色だったのだ

アタリの事が好きすぎて、顔を見たら詰ってしまいそうだし、あの女なんなんだよと不満でいっぱいだ

雅の狭いアパートで一緒にゲームをしながらもじわりと涙が浮かんでくる

「うわ、なんで泣いてんの?夜須、なんか辛い事あるなら、ずっといていいんだからな」

「んー…、ばあちゃんちで自立できる方向で考える」

雅は優しいが、人の優しさだけに甘えていてもいけない。今まで甘えまくってなんだけども

この依存する感じが嫌になったんだろうか?そもそも、そんな関係じゃなかったぽいけど

いつまでも、うじうじしている俺を、雅は根気よく話をきいてくれる

アタリと恋人のつもりだったというところは引いていたけれど、勘違いで、これからの人生どうしたらいいかわからない、人生単位でわからないという話を聞いてくれた

「自分軸で生きてみたらどうだ?今までの夜須ってアタリ中心だっただろ?自分のしたいこととか、まあその恋愛だけが人生でもないわけだし、中坊の恋愛なんてすぐ別れたりなんだりってもんじゃん?」

雅は経験者なのか、わかったふうだ。まあ雅にいちゃんモテてたからな

でも、自分のしたい事ってなんだろう?アタリの家では何でもできて、望めばすぐに何でも揃う生活だった

その代わり、常に監視されているようで、たまに息苦しさも感じた。常に行儀良くなるべく静かにアタリに逆らわない事を求められているのは肌で感じた

「やりたい事ねえ…」

「明日とりあえず銛持って海でも潜ろうぜ。魚焼きながら、なんとなく浮かんでくるんじゃないか?」

「明日、学校あるじゃん」

「休め、休め、嫌だろ?」

ニヤっと笑った雅に嬉しくなって頷く

笑われるから言えないけど、俺のやりたい事は、アタリのお嫁さんになることだった

あの女の子みたいに当たり前にそばにいて、お似合いだって言われながら買い物も一緒についていって、アタリに優しく微笑まれながらエスコートされることだ

でも、それは無理な望みなんだろう

アタリが知ったら、笑って子供の時のことを?と笑い飛ばされるのだろうか

「おめえ、深夜にめそめそぐすぐす泣くな。夜須、一緒に寝てやるから、泣きやめ」

頭をぐしゃぐしゃに撫でられて雅が手を繋いでくれたので、いつの間にか眠っていた










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